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たとえどんな世界でも  作者: 進藤 真道
第2章 付き合う為に剣を振れって!?……俺の努力は正しいの?
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第19話 研究の成果

 あの日研究所に来た彼の話は、スバルくんと同じで強くなりたいというものだった。

 オレは清掃力については専門外だと答えた。それに対し彼は「死んでも強くならないといけないんだ」と、その気迫をあらわにした。

 冗談には思えなかった。本当に死ぬまで頑張る気がした。とても危うく見えた。

 そして、さっきの言葉だ。


「俺、死のうと思ってた時期があったんです。それも、つい最近まで」


 それは今も思っているのでは、と思わせるほど切羽詰まっている様子で、そこから彼の身の上話が始まった。

 彼と異世界人のスバルくんが、なぜこんなにも親しいのか。スバルくんの世界はこの世界の住人と同じ人間がたくさんいるのに、なぜこの世界にはこの世界のスバルくんがいないのか。

 スバルくんが初めて研究所を訪れた日に話されなかった事を、オレは彼から聞いた。


「——中学生の時、俺はこの世界のスバルを救えませんでした。そこから俺はただただ悲しんでたんだと思います。そして高校生になった時、俺は自分が生きている事が許せなくなりました」


 オレは、彼の話を黙って聞いていた。


「スバルを殺した俺がのうのうと進学したんですよ……。俺は入学して早々に自殺を決意しました。でも出来なかった。決意をしたその日に、俺は異世界転移をしました。そこでは理不尽な巨悪に苦しむ人達でいっぱいで。俺にはそれを救う力があると言われました。頼られました。まだ生きてやることがある。俺が出来る限りの事をして……なすべき事を為して、そして生き切ってこそ俺の死があると考えたんです」


 彼は、異世界で自分の存在意義を見出したんだ。この世界に帰って来てから死んでないことが、彼がその生き様を今も貫いている証明になる。なら、なんで……。

 オレは耐え切れなくなり、そこで声を出した。


「君は生き様を見つけたんじゃないか!それなら、今にも死ぬ気なその顔は——」

「——死ぬ覚悟が人よりあるだけです。俺はそこの世界を救いました。でも、この世界に帰還した後に俺はやりきったと、これで死ねると思いました。でも、身辺整理に家を綺麗にしてたら近所の人や商店街の人達が、また俺を頼ってきたんです。異世界の時と同じです。俺は、この世界の現状を知りました。また死ねませんでした。でも、それが良かった。また俺は、スバルに会えました」


 ここに来て彼は初めて笑顔を見せた。

 ……そうか。異世界の住人であるスバルくんは、この世界の清掃の勇者の心を救ったんだ。

 しかし、救われたはずの彼の話は続く。


「あのスバルが、俺の知ってるスバルじゃ無いのは分かってます。でも、あのスバルは、間違い無くスバルだってわかったんです。今は最高に楽しい。あいつと生きたい……。でも、あいつの力になりたい。……今のスバルには敵がいます」

「ドラゴン……だね」

「ええ。スバルの敵なら俺の敵です。あのドラゴンは今の俺じゃ太刀打ち出来ません。清掃力が博士の研究外の力だと言うことも分かってます。でも、スバルがあのドラゴンと戦うって言うなら、俺は死んでもあいつを守りたいんです……。()()()()、絶対にスバルは殺させない。そのために死ねるなら、俺は本望なんですよ」


 今度こそ、か。

 オレは清掃の勇者くんに協力する事にした。

 彼に協力するならば、オレが清掃力をわからねば彼を強くすることなど出来ない。

 まず異世界の奇跡の力、清掃力について詳しい話を聞いた。次に“愛„と同じく、機械で清掃力の感知が出来ないかを試していった。そして、清掃力を感知できた時にオレは気付いた。

 異世界で彼は底無しの清掃力を宿していたらしい。

 だから彼は気付かなかったんだ。

 彼の持つ掃除用具にも僅かに清掃力が宿っている。そして、それを自身の力へと変えることが出来ると。

 ならば、彼の強化は可能だ。

 きっと彼が何度も清掃力を通して使用していたために、用具も清掃力が宿る様になっていったんだ。このことから、彼の身体に宿せる清掃力と用具に限界まで貯めた清掃力を同時に引き出すことで、この世界で彼が使える清掃力の最大値を増やせるとオレは考えた。


 その日から彼には清掃力を高めて過ごしてもらう様にした。そして、彼は自身の持つ用具類に余剰な清掃力を溜めていった。


 これを続け用具一つ一つに限界まで力を溜めていけば、それらを全て引き出すことができれば、彼はその清掃力を使い切るまで他の勇者を圧倒するほどの力を使えるはずだ。

 でもそれを引き出し切るには、彼の感情が一気に高ぶる必要がある。この世界では彼の清掃力には底がある。彼は通常の感情でもそれらを最大限に引き出し切ってしまう。同じ感覚で用具類の力を引き出しても、それらが小出しになる様な事になれば彼の大幅な強化にはなり得ない。

 それに一度使ってしまえば、彼は再度清掃力を用具に注ぐまでその力をまた引き出す事は出来ない。

 条件付きな上、時間制限まで付いている欠点だらけの強化だった。


 でも彼はこの理論を聞き、満足そうな顔をしていた。「これでスバルを守る事ができる可能性が増えた」と。


 ◇


 清掃の勇者くんが、ドラゴンに殺された。でもスバルくんはまだ生きている……。

 彼は()()()()()()()()()()()()()()()んだ。

 きっと、君の想いはスバルくんに伝わるよ……。今度はオレの番だ。

 オレは、蘭さんにオレの覚悟を示す。


「……蘭さん、オレ行かなきゃ」


 オレの言葉を聞き、蘭さんは悲しげにその顔を歪める。


「そう言うと思ったんだ……」


 蘭さんにはこの研究が始まってからずっと心配をかけっぱなしだ。

 今回も、それは変わらない。

 蘭さんには本当に感謝している。

 オレは全ての思いを一言に込める。


「うん。ありがと」


 スバルくんの友達を思う力は凄い。

 清掃の勇者くんはその思いに恥じない友達だっただろう。

 今からオレが行こうとしている商店街は、勇者も逃げる戦地だ。

 オレが行ってもスバルくんに改良型を渡す事もできず、死ぬかもしれない。でも、オレもスバルくんの友達だ。

 スバルくんは友達を愛する想いだけで勇者ほどの力を出せる。

 清掃の勇者くんなら、友達のためなら自分の命だって賭けられる。

 スバルくんの友達なら、オレだって頑張らなきゃ。


 行こう。スバルくんの元へ。

 オレは廊下を飛び出してスバルくんのいるはずの商店街を目指す。

 改良型“りんグ„は出来たんだ。オレはスバルを強くできるんだ。

 ……絶対に間に合わせる——。

荒岩中吉は生き切った

丸井有子は覚悟を決めた

しかし一人でドラゴンと戦う内海昴は狂う事となる


次回『たとえどんな世界でも』

第2章 20話

“愛„を“力„へ


“愛„の力が知りたければ次話も読め

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