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たとえどんな世界でも  作者: 進藤 真道
第2章 付き合う為に剣を振れって!?……俺の努力は正しいの?
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第17話 修羅院博士の研究を継ぐ者

 ドラゴンが商店街の真ん中で立っている。近くで見るとやはりそのサイズはおかしい。こんなのビルだ。

 巨大怪獣……普通コレと戦うのは光の巨人と合体ロボットだって……。


「スバル。もう逃げられねぇ。“りんグ„だけは、起動しとけ」

「わ、わかった。友愛」


 俺は中吉に言われてはじめて“りんグ„を起動し、ア・モーレを手に取った。ほうけている俺は、癖で友愛を起動キーにしているのだが、そんな事にはまるで気が付かなかった。

 俺の心はまだドラゴンに囚われている。自分の身体が浮いているような感覚だ。

 ドラゴンを見て動けなくなっている俺なんて、すぐに死んでしまってもおかしくない状況。しかしドラゴンがこちらを襲ってくる気配はない。

 そしてドラゴンは今まで咆哮しかあげなかったその口から、言葉を発した。


「お前たち、この間の子供じゃないか。あの時は逃げられたが、今度はちゃんと殺せそうだ」


 ドラゴンの口から出たその声は、辺りを重低音で震わせることもなかった。おおよそその巨体には似つかわしくない働き盛りの成人男性の様な声だ。

 でも、さっきの声には力強さがあった。ドラゴンの表情なんか俺にはわからない。それに、ドラゴンの顔は特に動いた様にも見えなかった。

 でも確かに感じた。俺達を殺したくてたまらないという、胸糞悪い力強さを……。


「お、俺達が何したっていうんだよ!お前は一体なんなんだ!」


 俺はその気持ち悪さから逃げる様に思いを吐き出す。ドラゴンの巨体から出る威圧感だけで自分を見失う程の恐怖なのだ。そこに未知の殺意が当てられた事が、俺には耐えられなかった。


「私は修羅院の研究を継ぐ者だ。何、君らくらいの年の子が気に入らないだけだよ。だから、死んでくれ——」

「——スバル、来るぞ!」

「ぇ……」


 ドラゴンが喋り終わるやいなや中吉が俺の身体を掴み、瞬時に商店街の巨木を駆け上がる。

 中吉に引っ張られ俺も巨木をかけているのだが、ドラゴンから目が離せない。俺達の視線はドラゴンの顔と同じ高さまで来た。ドラゴンは身体をひるがえし、その巨体に相応しい太さと長さを持つ尻尾を振り回していた。


 眼下に広がる商店街を、先程地獄だと思った。その地獄の中心にいるドラゴンが振るった尻尾は、激しい音を上げ建物を次々と瓦礫の山へと変えて行く。

 みんなが復興して復活したという商店街は、再度モンスターの手によって破壊された。


 尻尾を一薙しただけだぞ……。


 商店街の建物群によりスピードこそ落ちているが、尻尾は止まらず進んでくる。俺たちの避難したドラゴンの背ほどある巨木は、ドラゴンの尻尾によって簡単に根本からへし折られた。


 中吉はすでに回避行動に移り出している。根本からへし折れ倒れて行くその巨木の上を、俺を引きずりながら走る。

 身体を一回転し終わったドラゴンの目は、こちらが倒れて行く木の上を走っている姿を捉えた。

 俺達の走る木は、ドラゴンの手の高さ程まで下がっている。ドラゴンはその手に備わっている鋭い爪を振るう。

 中吉も気付く。そして中吉は俺を自身の後方へと下がらせ、その爪の攻撃を構えたモップで受けた。


 中吉は俺を下がらせたが、横に振るわれた爪を中吉は受け止めきれない。当然だ。体重が違う。モップでどうにかなるものじゃない。

 モップが弾け折れ、中吉は短くうめき声を上げながら俺を巻き込んで吹き飛ばされる。

 空へと放り出された俺と中吉はしばし空を飛び、地面へとたどり着く。受け身なんて取れない。全身が地面に叩きつけられ、身体が擦れる。


 たった一撃で、いやドラゴンから直接攻撃を食らったわけですらない。たった一撃の余波で、俺の全身に痛みが走る。中吉は役に立たない。ドラゴンの攻撃を防ぐことも出来ていなかった。

 さいわい今の攻撃で、ドラゴンと俺達の間には距離が産まれた。商店街の端の端まで飛ばされた今、中吉を囮にすれば俺はどこかに隠れることが出来るかもしれない。俺が倒れたまま脳裏に保身を浮かべる中、中吉は立ち上がり俺に声をかける。


「スバル……アイツは桁違いだ。このままじゃ二人とも死ぬ。だから、俺が囮になる。お前は逃げろ」


 俺と中吉の意見は一致したようだ。俺が立ち上がろうとすると、ドラゴンが俺達の目の前に立っていた。

 そうだった。コイツにはいくら距離があったって……。

 ドラゴンは動かない俺たちをいたぶるかの様に、ゆっくりとその足を上げ……俺たちを踏み潰しにくる。

 コンクリートが割れ、地面のへこむ音がする……。


「……スバル、大丈夫か……」


 死んだかと思った。潰されたかと思った。でも死んでなかった。

 中吉の持つ箒やウエストポーチから白いオーラが溢れてきている。

 そして中吉は、足をコンクリートの地面に僅かにめり込ませながら、ドラゴンの足を受け止めていた。


「清掃力ってのはな……掃除が好きだ、掃除がしたいって時に強くなる力なんだぜ……。こんな瓦礫の山を見させられて、こんな絶望を感じさせて……町を、みんなの心を、綺麗にしたいって俺がおもわねぇ訳がねぇだろうがっ!」


 そう中吉が叫ぶと、中吉はドラゴンの足を押し返した。


「スバル!俺は多分勝てない!お前は逃げろよ!」


 中吉は俺にそう呼びかけながら、片足を浮かされたドラゴンのもう片足に向かって行く。

 そこで俺は気付いた。中吉の家を掃除する特訓、あれはもしかしてお前の清掃力を高める特訓か。と。


 俺がそんな無駄な気付きで時間を消費している間も中吉の戦いは続いている。

 中吉は火事場のクソ力の様な力でドラゴンの後方へと周り、ドラゴンの足を箒のフルスイングで払うことに成功した。

 ドラゴンの巨体が倒れる。そう思ったのだが、ドラゴンは翼を羽ばたかせる。ドラゴンの羽ばたきは、中吉をその場に縫い付けるかの様に風を起こす。背中を地面につけることなく身体を横にしたドラゴンは、そのままの体勢で空で一回転しながら中吉を蹴り飛ばそうとする。

 蹴りは中吉に当たるかどうかの所で、中吉の手によって軌道を僅かにずらされる。

 ドラゴンの攻撃は終わらない。蹴りの後ろから尻尾も中吉に襲いかかる。

 中吉はそれもかわした。


 凄い戦いだ。互角に渡り合えてるじゃないか。そう思ったのも束の間、ドラゴンの回転は止まらなかった。足がきて尻尾がきて、勢いのついたその身体から次は拳が飛んでくる。

 ドラゴンの拳は、中吉に直撃した。


 中吉が俺の側へと吹き飛ばされてくる。あの一撃をもろに食らったはずなのに、中吉はすぐに立ち上がる。これは、異世界の奇跡の力だという自己治癒能力のお陰だろうか……でも、中吉の用具から見えていた白いオーラが、さっき見た時より明らかに弱々しくなっている。

 立ち上がった中吉は側にいる俺を見つけ、顔を歪めた。その時、白いオーラが消えた。


「なんで……なんで逃げてないんだよスバル!俺は無茶をしてる。この力は長くは持たない、時間がないんだ!お前には幸せに生きて欲しいんだよ!好きな子のために生きて欲しいんだ!だから——」


 中吉は最後まで言い切ることなく、ドラゴンに再度踏み潰された。

 骨が折れるような鈍い音がする。

 中吉は俺に気を取られすぎてドラゴンがこちらに攻撃してきていることに気がついていなかった……。


 俺の目の前にはドラゴンの足だけが見える。俺はギリギリの所で足には踏み潰されていなかった。

 ドラゴンが足をあげると、中吉が地面に身体をめり込ませうつ伏せに倒れているのが見えた。

 中吉は、動かない。


「転ばされた時は驚いたが……この程度か」


 俺の遥か頭上から声が聞こえる。

 俺は動けない。


「まだ生きているな。また回復されては厄介かもしれん」


 そうドラゴンの声がすると、ドラゴンの大きな爪が器用に中吉の顔を摘み上げる。


 俺の視線は中吉の身体を追いかける。

 愛の力で強化された俺の眼は、ビルの様な高さにあるドラゴンの顔まではっきりと捉えてしまった。

 はっきりと見えた。


 中吉の身体は、ドラゴンの顔の位置にまで持ち上げられる間に修復していったのか、中吉がもがく姿が見える。

 摘み上げられた中吉はドラゴンの爪から逃れる事はできず、下半身をドラゴンに食われた。

 この距離でも中吉の悲鳴が聞こえる。ドラゴンはゴミだと言わんばかりに中吉の残った上半身を俺の近くへと落とす。

 中吉は、息をしていない。

友愛での“りんグ„起動などしなければ

内海昴は保身のみを考える事など無かったはずだ

しかし後悔はしても立ち止まる事は許されない

そしてその頃丸井有子は

あと、修羅院とはモンスターを作り出したとんでもない博士の名前だぞ


次回『たとえどんな世界でも』

第2章18話

研究の結果


“愛„の力が知りたければ次話も読め

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