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たとえどんな世界でも  作者: 進藤 真道
第2章 付き合う為に剣を振れって!?……俺の努力は正しいの?
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閑話 神様のサポート〜瀬戸くんの場合〜その3

 いよいよ俺は、サッカー部として全国大会会場のグラウンドに立った。

 全国大会の開会式でだ。


 各県の激戦を勝ち上がってきたチームがグラウンドに揃う開会式、凄い人数だ。

 俺が辺りを見渡していると、あるものを見つけた。

 [ライバル!!こいつの所属してるチームを倒したらこの世界から出られます]

 そんな文字が頭の上に“表示„されてる馬鹿げたやつをだ。

 なんとこのサッカー全国大会に、俺のバットが当たった事で野球が出来なくなりハラコウから転校していった猿渡がいた。

 間違いなくアイツのサッカー歴も短いはずだ。なのに猿渡は他校へ行ってもスポーツを続け、このサッカー全国大会に出て来ている。

 アイツは間違いなく、スポーツマンだ。確かにライバルなのかもしれない。俺はやつの姿に身の引き締まる思いを感じた。


 ハラコウでは、各部活の全国大会には運動神経が悪く全然スポーツが出来ない生徒が応援に駆り出されている。

 この世界で弱者である彼等は卑屈な性格をしていて、その応援など必要ないと俺は感じていた。

 間違い無くそう感じていたのだが……その中に彼女はいた。

 丸井有子まるいありす

 彼女はスポーツが出来ない奴らの中では異端だった。

 その性格は屈託無く、卑屈な態度など取らず、俺への好意を隠そうともしない。そのくせ俺のことがどう好きかというと、行き過ぎたスポーツ馬鹿なところだとか、真剣になると熱血過ぎて近づくと火傷しそうなくらいに傍目はためでも入れ過ぎてる気合いがわかるところだとか、一言多い褒め言葉で俺への好意を伝えてくるのだ……。

 まぁ、正直悪い気はしなかった。


 俺はまだこの世界ではサッカーが上手い方ではない。

 言うなればこの世界の強者でも弱者でも無い中途半端な存在だった。

 そんな俺を、この世界では全くモテることなど無かったこの俺を、コイツは馬鹿みたいに褒めるのだ。

 コイツはきっと技術的な事なんて一つも理解していないだろう。

 しかし、俺の努力は間違い無く理解してくれているんだ。


 俺は丸井有子まるいありすの事が気になり、休日も丸井と過ごすようになり……アリスと付き合う事になった。

 アリスと過ごす事で、俺は本当の愛を知ったのだ。

 俺は練習に更に身が入り、全国大会の決勝戦でとうとうスターティングメンバーに選ばれる事になった。俺のポジションはフォワードだ。


 ハラコウサッカー部は全国の舞台でも快進撃を続け、決勝戦に進出した。

 決勝の相手は猿渡のいる高校だ。

 猿渡は俺と同じく、決勝戦からスタメン入りを果たしたようだ。サッカー歴が1年にも満たない奴が二人、全国大会の決勝に初のスタメン入り、そして、ポジションはディフェンダーとフォワード、互いにぶつかり合う事になる。

 そんな異例の試合となった事により、観客席からの期待が俺と猿渡の二人に注がれているのがわかる。

 猿渡の頭の上には相変わらず[ライバル!!こいつの所属してるチームを倒したらこの世界から出られます]の文字が“表示„されている。

 俺が猿渡の頭の上を見ていると、猿渡がどんどん俺に近づいてくる。


「よう、下手くそ。なんでテメェがこんなところにいるのかはわかんねえけどよ。同じサッカーを選んで、同じような期間でこの場に立ってんだ。俺はテメェを認める。いい試合にしようぜ」

「あぁ、猿渡。多分このピッチの上で、お前の努力に一番共感できるのは俺だ。でも、手は抜かねえぞ」


 俺達は宣戦布告をした。


 試合は、1対1で前半戦を終える。

 1点を入れたのは、俺だ。

 後半が始まるとすぐに猿渡のチームが1点リードをとるが、またすぐにチャンスが回ってきた。

 ハラコウのコーナーキックでセンタリングが上がる。

 猿渡とのポジションどりに俺は勝ち、そのセンタリングにヘディングを合わせに行く——。

 そんな時だ。俺の目の前には猿渡の頭の上の文字が目の前にチラつく。歓声の中からは、一際大きな声でアリスの声が聞こえた。


「ソウくーん!いけー!負けんなぁ!」


 こいつの所属しているチームを倒したら、この世界から出なきゃいけないのか……。


 ……俺は、ヘディングを外した。


 ◇


「瀬戸、てめぇ!何が手は抜かねぇだよ、ふざけんな。後半からのてめぇは、間違い無く抜いてただろうが!……お前の力は、努力は……そんなもんじゃねえはずだろうが!」


 試合はハラコウが3対1で、負けた。

 試合が終わると猿渡は俺の胸ぐらを掴み、わめき散らした。


「……すまない」


 俺は、猿渡に謝る事しか出来なかった。

 俺が悪いのだ。スポーツでは手を抜いちゃいけない。どんな相手でも全力で戦う事が、相手への最大の礼儀なんだ。俺は、その礼儀を欠いた。


 スポーツを愛する気持ちに泥を塗ることよりも、全てのスポーツマン達への礼儀を欠くよりも、試合の結果よりも……勝てばアリスと別れるかも知れない事が、怖かった。


 今の俺は酷い顔をしていたのだろうか。猿渡は舌打ちをして俺の元を去っていった。


 学校に帰った俺は、サッカー部を辞めた。


 アリスは俺の変化に気付き俺を鼓舞する様に励ましてくれたが、俺はスポーツをやっていればここを去る事になるかも知れないなんて、アリスにだけは言えなかった。

 大会の後にはいつまで続くかわからないこの異世界生活の全てをアリスに捧げようと過ごした。

 身体はどんどんなまっていく、もう自分のことをスポーツマンとは言えない。もう、俺が運動することなんて無い。それで良かった。


 アリスは俺と過ごしている時には笑っていたが、ぎこちないその笑みは、俺が間違っていると責められているようだった。俺は自信の塊である自分を自覚していたがその自信はもう無く、アリスに幸せにしてやるとも、愛しているとも伝える事は出来なかった……。


 ◇


 そしてこの異世界に来てから1年の時が経とうとした時、学生寮の中で、俺の頭の中にはもう一人の俺の声が響いた。


「瀬戸蒼、そろそろタイムリミットだ。現実世界で丸一日が経っちゃう。あ、このルールは説明しなかったんだっけ。ま、そういうことだから、この世界ともお別れだよー。じゃあ転移させるね」

(この世界と……お別れ?)


 俺は反射的に天を仰ぎ、叫んでいた。


「ちょっと待て深層心理の俺!その言葉、お前が言うんだから間違い無いんだろう!だが、少しだけ、もう少しだけ待ってくれ!俺は、まだ言い残した事があるんだ!」

「えー……うん。そうだね。こっちの1時間程度なら、元の世界に行ってもそんなに変わらないし……しょうがない!君の熱意に免じて、あと1時間だけ、時間をあげる」

「……感謝する」


 俺は携帯を取り出し、アリスへと連絡を送る。

 大切な事を伝えたい。今から家に行くから待っててくれ、と。よし、これでいい。


 俺はそう送信すると、携帯をしまう。時間は無い。アリスの家までは学生寮からちょうど1時間ほどだ。


(走れば40分もかからん!)


 俺はこの世界で鍛えてきたその足で、この世界で最期のダッシュを始めた。


 走り始めて気付く。俺の足は想像以上に重い。思う通りに動かない。このままでは間に合わない。

 そんな事は関係無い。思う通りに動かせ。絶対に間に合わせろ。アリスが待ってる。アリスにもう一度逢いたい——。


 ————————

 ——————

 ——……。


 アリスの家の前まで着くと、俺は呼吸を整えるため、大きく深呼吸をした。


 ……あれから58分。残された時間はわずか2分。

 もう時間がないのか……。

 息を整える時間なんて勿体ないと、深呼吸をやめアリスの家のインターホンを鳴らす。

 スポーツマンとしてはなんとも情けない、息切れをしたままで、足はプルプルと痙攣している状態だ。


「瀬戸だ!……アリス……出て来てくれるか!」

「え、ソウくん!?どうしたのその声!走って来たの!?待ってて、すぐ行く!」


 外で待っていても、家の中の風景が見えるようだ。アイツは、いつだって全力なところが良いところだ。


 アリスは本当に全力で俺の元へと出て来てくれた。

 勢いよく開かれた玄関のドアがその事を俺に伝えてくれる。


「なぁアリス……俺お前に言ってなかったことがあるんだ」

「うん、どしたのソウくん。今日のソウくん、なんか、サッカーやってた時みたいだね」


 アリスは俺の顔を見てそう言った。


(そうか、俺はスポーツと同じくらい……いや、違うな。それ以上にアリスを好きになれたんだな……)

「なぁアリス、俺はこの世界の人間じゃ無い。それから、後1分もしないうちに、たぶんこの世界から消える」

「……ぇ……嘘じゃないんだね。わかった。なら、これはソウくんの最後の言葉だ、オレちゃんと聞くよ」


 アリスは驚いているようだが、なぜかこんな無茶苦茶な事を言っている俺の言葉を信じてくれた。

 この想いだけは、ちゃんと伝えなきゃいけないんだ。


「アリス今まで言い忘れてた。いや、自分に自信が持てなくて言えなかった……でも、最後だから、言わせてくれ。俺はお前を愛してる」

「ぇ、それ?いつも言ってたじゃん」

「……ぇ」


 今度は俺が驚く番だ。


「ソウくんはバカで、カッコつけで、人前だとええかっこしいだけど、本心なんていつもバレバレなんだから!……ソウくんは全身で、いつもオレにその言葉を言ってくれてたよ……でも、最後に、その言葉をくれて……ありが——」


 アリスの言葉を最後まで聞くことなく俺の視界は暗転する。

 俺は、この世界から消えた。


 ◇

 —水原左凪—


「ねぇ、神様……私、8時間も何見させられたんですか?」

「えっと……純愛?あ、水原左凪も現実世界に帰すからね!お疲れ様ー」

(なんだったんだこれ……瀬戸くん……告白相手間違えたんじゃない?)


 私はこうして、七不思議の樹の下で瀬戸くんに告白され、瀬戸くんの1年異世界生活を、丸井さんとの恋愛模様を体感時間8時間も観させられ、もとの世界へと戻った。


「なんか予想外の展開だったけど、瀬戸蒼は、もとの世界でも丸井有子の気持ちに気づけばいいんだよ!本当の愛なら、惹かれ合えるなら、必ず幸せになれる。たとえどんな世界でも二人は……そうだ!瀬戸蒼が、丸井有子にここで告白するんだったら、とびっきり甘く手伝ってあげよ!……アレは間違い無く、相性抜群でしょ……」


 —瀬戸蒼—


「私が貴方のことを好きになることは、今後一生無いと思います。友達からも遠慮させて下さい。さようなら瀬戸くん」


 ……俺が、水原左凪如きに、振られた。

 待て待て!そんな事俺のプライドが許さんぞ!


「み、水原。待てよ、水原左凪みずはらさなぎ。俺だって……お前に告白なんて、気の迷いだったわーい!〇△×!」


 さっき告白をしたはずなのに、なぜか今は水原の事を少しでも良いと思う気持ちが全く無くなっていた。


 いいさ、俺には野球がある!プロからも声がかかるかもしれないし、俺を欲しがる大学だってきっとあるはずだ!みんなが受験勉強をしている間、野球も出来ないし。彼女でも作れたらいいなと思っただけさ。全然悔しくなんてない!ないったらない!


 あー、なんか無性にサッカーしたくなってきた。

本当に忘れないで欲しい

瀬戸蒼は主人公では無い

この物語の主人公は内海昴なのだ

あと、舟歌とヨイトマケがわからない君は1度調べて聴いてみてくれ

私のオススメだ


次回『たとえどんな世界でも』

第2章 16話

剣の特訓


“愛„の力が知りたければ次話も読め

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