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たとえどんな世界でも  作者: 進藤 真道
第2章 付き合う為に剣を振れって!?……俺の努力は正しいの?
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第13話 恋愛

 アレが、中ボスって……。

 俺はドラゴンがいなくなってから中吉の家で困惑していた。

 中吉は結界を壊す恐れのあるモンスターが出た事を、結界を管理しているこの町の役場に報告しに行っている。


 一人になると俺の中のネガティブな思考が顔を出す。

 絶望的だ。勝てる気が全くしなかった。今の俺じゃダメなんだ。中ボスでアレってことは、ボスのおっさんはもしかして更に強いのかよ。

 何か手段があるのか。いや、何があれば俺はアレに勝てるようになるってんだよ……。


 そんな絶望の中、俺の頭に一筋の光明が差した。

 神様が、絶対に勝てないような相手をボスに指名することがあるだろうか。

 そう思えば、アレに絶対勝てない、なんて事は無いような気がする。

 何か、何かがあれば、俺はアレと戦えるようになるのかもしれない。


 俺はその何かを探すため、研究所へと向かった。

 俺の力は研究所から貰ったものだ。“りんグ„は未完成だと言っていた。この力には、まだまだ先があるはずなんだ。


「失礼します。内海昴です」

「おお、スバルくん!どした?」


 研究所に着き、インターホンを押すと丸井さんの声が出迎えてくれた。


「俺が倒さなきゃいけない相手の事が少しわかったので、その報告に来ました」

「そっか、おっけー。開けるから入って、オレ今、部屋じゃなくてみんなと一緒に研究所にいるからそこに来て」


 丸井さんは自分の部屋を研究室、入り口の廊下の下にすぐ見える施設を研究所と呼び分けている。

 俺は丸井さんのもとへと向かった。


 ◇


「結界を壊せるほどの力を持ったドラゴンか」

「ええ。ですから、俺は今以上の力が必要です。これ以上の強さを手に入れるには、俺はどうしたらいいんでしょうか……教えて下さい!」


 俺がドラゴンについて報告すると、丸井さんは黙ってしまった。

 俺には、これ以上の力は望めないのだろうか。厳しいのだろうか。

 俺は、やはりアレに勝つことなど……。

 一筋の光明が差したと期待して来た研究所で、俺は再び悲観的な思考に囚われようとしていた。

 その時、黙っていた丸井さんがその重い口を開いた。


「……“りんグ„を改良する案は出てるんだよ。でも、それはまだ試作機すら出来てないんだよ、スバルくん」


 俺は明日にもあのドラゴンと戦うかもしれないのだ。改良型の“りんグ„その構想はあるが、まだ着手出来てない。

 そんないつ出来上がるかわからないもの、待つ事は出来ない。


「いや、彼をすぐに強くする方法ならありますよ、博士。起動キーを変えればいいんです。恋愛に」


 助言は意外なところから出てきた。ゴリ曽我部だ。しかし、その助言は丸井さんによってすぐ否定されてしまう。


「恋愛……。何を言ってるんだよゴリ曽我部さん!恋愛は、ゴリ山さんが使っていた起動キーだよ!スバルくんになにか副作用でもあったら——」

「——恋愛の力は無限大、友愛よりも強い力が産まれることでしょう。これは、私が現代文の研究の中から導き出した。現代の愛情の真理です」


 そうか、起動キーの変更……。

 俺は最初に使った起動キーが友愛だったことから“りんグ„を友愛で起動させることが当たり前になっていた。だが、この“りんグ„に着いている赤い石は愛情の種類を限定するだけのもので、友愛のみに起動キーを縛っているわけじゃないんだ。

 愛の強さが力の強さなら、俺の水原への想いを力にすれば——。


「スバルくんは、友愛でも勇者並みの力があるんだ!友達のことを、そこまで思える凄い人なんだ!そんなカッコいい心があるんだ!そんな危険、犯す必要ないんだ!!」


 丸井さんは何か言っているが、俺は話を聞かず、恋愛で“りんグ„起動した。


「恋愛」


 俺の身体には、友愛での起動以上の力がみなぎってくる。

 確かにこれは、凄い。

 だが、なんなんだろう。この気持ち悪さは……。

 間違いなく俺はちゃんと立っているのに、足元が安定しない。身体から一本芯が無くなったような気持ち悪さだ。


「——スバルくん!」


 丸井さんが心配そうな声で俺の名を呼ぶが、こんな感覚に俺は対抗できない。

 俺はその場で膝をつく。


 俺は、何のためにこんな訳の分からない世界にいるんだ?


「スバルくん!大丈夫!」


 ア・モーレを掴まなかったからだろうか“りんグ„の力は自然と解除され、俺の胸は軽くなった。


 足場は……ちゃんとある。

 さっきまでの気持ち悪さが一瞬で引いていく感覚に、俺は安堵あんどする。

 何だったのかはわからないが、あの感覚はダメだ。

 胸にポッカリと穴が空くようなあの感覚の中で、人が戦える訳が無い。

 丸井さんは俺の隣で……怯えている?


「丸井さん、俺は大丈夫だよ」

「スバルくん!……良かった、良かった!」


 丸井さんを心配させてしまった。

 俺は、この力以外で強くならなくちゃならないのかもしれない。でも力は確かに友愛以上に感じたのだ。何か糸口が見つかれば……せめて、なぜこんな感覚になるかがわかれば……。

 いつか、絶対に使いこなせるようになってやる。


「……心配かけちゃったみたいだね。この力は使えると確信しないと使わないことにするよ……でも、いつか絶対に使えるようになってみせる」

「うん、うん……オレも研究がんばるよ。スバルくんを危険な目に合わせないように、がんばるよ……」


 丸井さんは安心したようで、よりいっそう研究に力を入れてくれると約束してくれた。


 ゴリ曽我部は安易なことを言って俺を危険な目に合わせたと、丸井さんに減給を言い渡されそうだったのだが……俺の行動こそが安易だったと減給は勘弁してもらった。

 丸井さんとの間にたった俺を、ゴリ曽我部はキラキラした目で見ていた。


 やめろ。そんな目で見るな!

新たな力は危険すぎる力だった

焦りが拭えない内海昴

彼は特訓に打ち込み続ける

そんな彼を見て出口蘭はある提案を持ちかける


次回『たとえどんな世界でも』

第2章 14話

出口先生と内海くん


“愛„の力が知りたければ次話も読め

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