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たとえどんな世界でも  作者: 進藤 真道
第2章 付き合う為に剣を振れって!?……俺の努力は正しいの?
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第12話 剣の特訓?

 –内海 昴–


 俺が被験者になって、数日間の時が経った。


「エエや♪エーエや♪エーエ♪エーエや♪」


 俺は今、最上川舟歌を歌いながら木剣を振っている……


「スバル!いいぞ!ノリノリだ!ヨーエサノマッガーショ♪エンヤコラマーガセ♪」

「エえヤ♪エーえヤ♪エーエ♪エーえヤ♪」


 中吉がノリノリな俺の最上川舟歌を褒める。

 俺は更にノリノリで木剣を振りながら歌う。


 研究所から帰った次の日から、中吉は俺に戦いのイロハを教えてくれている。

 俺の武器が剣であり、初日は中吉も俺に合わせた武器で模擬戦をしてくれた。中吉の近接武器はモップや箒だ。字面だけ見ると剣の方が強く見えるのだが、結果はボロ負けだった。

 “りんグ„を使えば中吉の動きは見えた。俺の身体も中吉と同等程度のスピードで動いていたと思う。

 しかし中吉のフェイントや連撃に、俺は対応する事が出来なかった。


「スバル……お前には小細工の才能はないかも知れん」


 模擬戦のあと中吉が俺に言った言葉だ。

 どうやら俺は中吉の全てのフェイントに引っかかっていたらしい……俺には戦いの才能は無いようだ。


 それにしても中吉のモップや箒は凄い。

 中吉はモップや箒を剣に見立てて戦っている。

 因みに雑巾は受け流し用の盾、固形洗剤は飛び道具だ。

 それらは清掃力を高めて使う事で、ただの剣や盾、飛び道具なんかを超える存在になる。


 中吉のアドバイスにより、数日で俺の特訓方針は決まった。

 苦手もカバーして弱点を無くしていくような地道な特訓はダメだ。

 いつまでこの世界に居られるかもわからない。一ヶ月や二ヶ月も続けて、ようやく少し平均的にまともになるくらいの戦いの基礎を身につけた。そんなんじゃ遅いかもしれないんだ。

 それでは何が起こるかわからない俺の身では、突発的な脅威には立ち向かうことが出来ない。

 だから、付け焼き刃でも強くなる方法を俺は中吉に教えてもらうことにしたんだ。


 その特訓内容は……逃げる事と全力の一撃を入れる事。

 その二つだけだ!

 逃げる訓練は、突然中吉が俺の体制を崩すところから始まる。

 俺は体制の崩れた状態で、中吉の次の攻撃から全力で逃げるのだ。

 攻撃の訓練は、剣を思いっきり頭上高く振りかぶって振り下ろす。それを中吉が作った丸太人形に当てる。それを何度も繰り返して行う。

 身体の動かし方を身体に染み付かせるのだそうだ。

 攻撃の訓練は、最初はそれだけだった。それだけだったんだ。


 中吉は手っ取り早く強くなりたいならと、今日から攻撃の特訓にあるものを追加した。

 それが、最上川舟歌だった。

 いや、正確にはちょっと違うんだけど今の結果は、最上川舟歌だ!

 中吉が異世界に行った時、中吉が一時期所属していた軍での体験談により、今の俺の特訓がある。

 人々が技術が上がらなずとも強くなる時、それは士気が向上した時。

 そのため彼らは特訓の際に、家族のためだ、故郷のためだ、といいながら歌を歌い士気をあげていたのだとか。

 ようは、付け焼き刃の技術にプラスして精神論で強くなれってことらしい。

 精神論を馬鹿にしちゃいけない。

 特訓の始まりにその説明を受け、俺は好きな歌を聞かれて、舟歌にしたのだ。今の俺はとても気持ち良く特訓が出来ている。身体に動きを染み付かせるように、歌に動きを染み付かせているんだ。

 剣を振る時に歌うと確かに黙々とやるより楽しいし、元気が出る!

 これは力が出ているってことだ!


「……うーん、確かにスバルには、こっちの方が良いかぁ……剣に思いを乗せるなら絶対にヨイトマケなんだけどなぁ」


 中吉のオススメはヨイトマケの唄だったのだが、あんな直接的な唄だと、思春期な俺はちょっと恥ずかしいじゃ無いか。


 それから……中吉は俺の特訓のためだと、泣く泣く毎日の家の掃除を、俺に任せている。

 掃除にこそ、全ての武術の基礎がある!

 これは中吉の言葉だ。

 中吉は転移先の世界で様々な命の危機を掃除の動きで回避してきたらしい……言っている意味がわからない。

 しかし、この特訓だけは外せないと、中吉は俺に窓、床、棚、机の上、トイレと家中を毎日掃除させている……その後に中吉もしっかりと家の掃除をしていた……毎日じゃなくても良くないかこれ!?

……俺はこれを特訓とは認めていない。


 もう一度言う!

 俺の特訓内容は、逃げる事と全力の一撃を入れる事。その二つだけだぁ!


 ◇


 歌が俺の特訓に加わってから更に数日が経ち、今は家の掃除の最中だ。


「スバル。窓拭きの手首のスナップ、だいぶ決まって来てるじゃないか!雑巾のスナップは相手の攻撃をいなす動きだ!掃除機の腰の落とし方も良くなってきてたしな。腰の落とし方は、一撃の威力を高めるぞ。よし、そろそろスバルもモンスターと戦ってみるか!」


 窓拭きをしている俺に、中吉はそんな言葉をかける……この掃除狂め。

 その言葉は剣を振ってる時に言ってくれよ……。


 中吉の家は、結界の範囲ギリギリの所にある。それ故にモンスターと戦いに行くなら、家からちょっと歩けばいい。

 これが俺の初モンスター戦となる。


「友愛」


 中吉の家を出た俺は“りんグ„の力を解放し、瓦礫だらけの町へと進み出す。

 中吉は家の掃除を俺がするようになってから、掃除の時間には毎日この近隣のモンスターを倒して回っていたらしい。しかし、それでもモンスターの数は全然減らないようだ。


 中吉の家を出てちょっと歩いただけなのに、俺の目の前には身体の太さが直径で2メートルはありそうな、巨大な蛇のモンスターが姿を現わす。

 心音が煩い、額からは汗が噴き出す、俺の足は震えていた。


「スバル!相手の周りを周りながら隙が出来るのを待つんだ!」


 中吉がうるさく叫んだ。

 ——そうだビビるな、ビビるな俺!


「ビビるなぁ!——中吉、わかった!」


 俺は自身の頬を強く叩き、自分を鼓舞する様に吠える。

 足は——震えていない!


 俺は、蛇の周りを走り周りながら隙を伺う。

 蛇はその尻尾を横に薙ぎ、顔で噛みつき、俺に攻撃をしてくる。

 避けれてる!戦える!モンスターと戦える!


「スバル!上だ、下がれぇぇぇ!」


 俺は中吉の声で上を見上げる。蛇が空から降ってきて、その尻尾が俺に向かって振り下ろされている——2匹目の蛇だ。いつのまにか現れた2匹目の蛇の攻撃により、俺は体制を大きく崩しながらも横方向へと飛び退いた。

 体制を崩した俺に、1匹目の蛇は容赦なく飛びかかり噛み付いてくる。

 俺は転がりながらそれを避け、立ち上がる。

 1匹目の蛇は俺の後方にあった瓦礫の中に頭から突っ込んでしまった様だ。まだ顔を出せていない。

 今俺は、2匹目の蛇からは1匹目の蛇の胴体により死角になっている。

 今しかない!


「エエヤァぁぁ゛」


 俺はア・モーレを上段に構え、渾身の一撃を1匹目の蛇の胴体に振り下ろす。

 ア・モーレは蛇の身体の太さより長くなんか無い。しかし俺の放った一撃は、蛇の身体を真っ二つにしていた。

 切れた!……いや、油断するな!まだもう1匹いる!

 切り裂いた蛇の身体の間から、2匹目の蛇が見える。蛇はこちらに向かい這って来ている。

 俺はその姿を確認すると、今切り裂いた1匹目胴体に身を隠し走り、切れた胴体の上へと飛び上がり、その胴体の上へと登った。

 2匹目は俺の姿を見失っている。俺は切れた胴体の上から更に飛び上がって、這って動いている2匹目の蛇の頭上付近まで落ちていく。


「お前もくらえぇぇぇぇ!エエッヤァ゛」


 俺は落ちながら剣を蛇の頭に叩きつけるつもりで思いっきり振った。

 2匹目の蛇は頭と身体が綺麗に別れた。


「スバル!やったな!」


 中吉が興奮した様子で俺の元へと駆けつけてくる。

 ……こいつ、もっと手伝えよ。


「どうだスバル、今日は初めての実戦だ。このまま続けるか?それとも、もうやめ——おい、何だよあれ……」


 中吉は話している途中に、興奮していた顔を途端に青ざめさせ、空を見上げている。

 俺はまだ身体に疲労は感じていない。今日はもう少しやれそうだ。そう答えようと思ったのだが、中吉が空を見上げたので、つられて俺も上を向いた。

 そこには、遥か高く遠くには、豆粒の様な大きさのものが見えた。飛行機の様なものが飛んでいるな。

 いや、あれは飛行機なんかじゃ無い……ドラゴンだ……。

 俺たちの頭上には、翼の生えた真っ赤なドラゴンが飛んでいた。


「この距離であのデカさで見えてんだ……あのデカさはヤバい」


 その時、ドラゴンの咆哮が辺りに響き渡った。

 そのドラゴンは、こちらに向かって来だしている様に見える。そして、そのドラゴンの頭上には、何か文字が“表示„されていないか!?


「クソっ、アイツ間違いなくこっちに向かって来てる。スバル!アイツ、こっちに来るつもりだ!結界の中まで逃げるぞ!」


 中吉が焦ってる?

 たしかに俺が見てもわかる。アイツには勝てない気がする。

 でも、まだあんなに遠くに見えるのに、ここは中吉の家のすぐそばで、結界もすぐそばにあるんだぞ?


 そんな事を思いドラゴンを眺めていると、ドラゴンの姿は確実にこちらに近づいて来ていた。

 そのスピードは、今の俺たちの全力より、遥かに早い。

 マジかよ!

 俺は逃げる気になった。中吉の家の方へと身体の向きを変え、結界と自分との距離を確認する。

 中吉の家からここはそんなに遠くなかったはずなのに、そのちょっとの距離が遠く感じる。

 俺は中吉の家を目指して全力で逃げる。がむしゃらに走った。

 俺たちは一瞬で結界に入れた。

 結界に入った時、俺は無様にコケた。

 短距離を走っただけなのに汗が止まらない、息は荒い。


「ここの中なら大丈夫なはずだ。この結界は、数百人の勇者がバイトをして作られてるんだ。モンスターは、この中には入れない」


 中吉の言葉で、おれは落ち着きを取り戻す。

 身体を起こしながらゆっくりと後ろを振り返ると、ドラゴンは既に結界の前まで来ていた……。

 あんだけ距離がある中で逃げ始めたのに、ギリギリだったのか。

 近くで見るとよくわかる。本当にデカい。目の前に見えるのは二本足で立っている、その足だけだ。

 俺はゆっくりと顔を上げていき、その足から胴体、腕の部分へと目を向けていく。

 おいおい……マジかよ。

 ドラゴンは、その腕を振りかぶりこちらを殴りに来ていた。

 その攻撃は、結界によって止まった。

 ドラゴンの手が宙で止まり、周りの空間が激しく歪んでいるのが見える。


「嘘だろ……結界が揺れてやがる」

「どうしたんだよ中吉、何焦ってる。アイツの攻撃は止まったじゃ無いか」

「スバル……空間が歪んで見えてるだろ……結界が、ダメージを食らってるんだ……このままアイツが攻撃を続ければ、結界が壊れるかもしれないんだよ!数百人の勇者の力で出来ているこの結界が、たった1匹のモンスターに壊されるかもしれないんだよ!」


 中吉がそう叫ぶと、ようやく俺にもこの危険さが理解できた。

 俺はその場を動く事が出来ず、ドラゴンの顔を見上げた。

 ドラゴンは……後ろを振り向いている?

 俺たちを諦め、ドラゴンは空へと飛んで行った。


「……は、ハハ……助かった」


 ドラゴンが姿を消した事で、中吉が俺の隣で安堵している。

 俺はまだ、ドラゴンが去っていったところから目を動かせずにいる。

 ちょっと待てよ……どういう事だよ……あんなの、どうすりゃいいんだよ!

 俺がドラゴンの頭を見た時、先程遠目に見た時には読めなかった、ドラゴンの頭上ある“表示„された文字が読めた。


 [中BOSS!!こいつも倒してください]

今のままではドラゴンには勝てない

内海昴は新たな力を求める

求める先にいたのは……

ゴリ曽我部だった!


次回『たとえどんな世界でも』

第2章 13話

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