プロローグ 水原 左凪
「よう、来てくれたんだな水原……。実は俺、お前のことが前から好きだったんだ。俺と付き合ってください!」
◇
–水原 左凪–
9月1日
学校に着くと下駄箱に校舎裏に来てくれと手紙が入っていた。
校舎裏に着くと、そこにいた男の子は突然こんなことを言ってきた。
彼とは中学が同じ学校だった。
中学生の彼はあまり目立つような人じゃなかった。けど、高校に入ってから彼は野球部で部活動に打ち込み、周りの女子達はこの頃から彼をカッコいいと話すようになっていった。
彼は今年の夏の全国大会で学校初の甲子園出場を果たしたチームのキャプテンとして、今学校中の注目を集めている。
まさに時の人だ。
そんな彼が告白をしてきたんだ。
予期していなかったら、すんなりとは返事が出なかっただろう。
しかし、私はその告白に対する答えの準備ができていた。
「ごめんなさい。今すぐに、その、付き合うとかは考えられません。私、あなたのことよく知らないし……」
正直下駄箱に手紙が入っていた時には告白かなと思った。
でも、自分が告白されるなど信じられなかった。
私は自分の外見も内面も好きではない。
思った事をすぐ喋ってしまい、あとで後悔することなんて良くある。
性格が悪いんだと思う。
お洒落しているクラスの可愛い子たちを見ると、私も化粧をした方がいいかなとも思う。
でも自分には似合わないと思い、結局いつもすっぴんだ。髪だって染めたこともない。
身長も低いし、それに目が小さく細いので、キツそうだとか言われることもあるし……。
こんな私にラブレターなんて送られてくるかな、それに今の時代にそんな古風な事をするかな。
なにか、別の用事があるのかもしれないとも考えた。
でも、呼び出された場所が校舎裏だったから……。
だから、一応返事を考えておいたのだ。
◇
原色高校には珍しく七不思議が残っている。
その中でも一番珍しく「七不思議にこんなものが入っているのか」と、初めて聞いた人には驚かれるものがある。
それは、校舎裏の樹の下で告白をした男女は告白をした相手からヒドイ振られ方をする、と言うものだ。
ちなみにそんな噂があるのにもかかわらず、この学校では告白に樹の下を使う生徒は少なくない。
こんな七不思議があるのになぜ、と思うだろう。
それは、この七不思議の続きに秘密がある。
成功率はとっっっても低いのだけど、もしもこの樹の下で告白が成功すると、その男女は生涯のパートナーになれると言うのだ。
なぜかこの樹の下で告白に成功した人達は、みんな揃ってこの樹のお陰だと話すらしい。そのためヒドイ振られ方をするというこの樹の下は、大人気な告白スポットなのだ。
ちなみに告白の成功率は本当に低い。
ほかの七不思議はあまり覚えていないが、確か異色の三不思議なんてものがあったはずだ。
◇
「そっか、ふられたかぁ……。でも七不思議もあてにならないよな。ここではふられる時は、本当はこっぴどくふられるらしいぜ。きっと、まだ俺にもチャンスはあるんじゃないかな。俺は諦めたくない。これから君にもっと知ってもらえる様に仲良くなりたい、だから——」
————————
——————
——……。
——突如、私は不思議な感覚を味わった。
なぜか、彼に激しい嫌悪感を感じる。
なぜなのかはわからないが、この気持ちには凄い説得力がある。気がする。
この嫌悪感の正体がわからないまま、彼が続きの言葉を言う前にはっきりと感情を言葉にして吐き出した。
「私が貴方のことを好きになることは今後一生無いと思います。友達からも遠慮させて下さい。さようなら瀬戸君」
もうこの場で彼と話す事は何も無いだろう。
なーんか瀬戸くんって、すっごい嫌な人だったなぁー。あっ、そう言えば今日は始業式の日だ。この場を去って早く自分のクラスに行こう。
「み、水原。待てよ、水原左凪。俺だって……お前に告白なんて、気の迷いだったわーい!〇△×!」
瀬戸くんに背を向け、校舎の中へと入っていく。
後ろからは私の名を何度も叫ぶ瀬戸くんの声が聞こえてくるが、距離は段々と遠くなり最後にはその声も聴こえなくなっていた。
振り返ることなくクラスに向かった。
もっとやんわりと断るつもりだったのに……。
ま、いっか。
私は夏休み明けの初日、学校のスター瀬戸蒼くんを振ってしまったのだ。
はー、すごくスッキリした!
学園のスターを振った水原左凪
彼女は学園の七不思議をその身で体感した
メインヒロインが不思議体験をしたんだ
次は君の番だぞ内海昴
次回『たとえどんな世界でも』
第1話 9月1日/消えた水原
《原色高等学校幻の八不思議》
次回を読まない生徒は、幸せになれない