第2話 モップと箒と雑巾と
倒壊した校舎が見える、森から出たのにまだ景色は暗かった、どうやら今の時間は夜みたいだな。
よく見ると校舎周りの地形もだいぶ変わっている。きっと化け物との交戦でボロボロになったんだろう。
中吉は自分の家で今夜は語り明かそうと、明るく話しながら俺の前を歩いてくれている。
中吉の家に着くまでの間、何度か化け物に襲われた。
バッタ以外にも、ヘビ、ミミズ、フクロウ、人型の奴なんかもいた。
それらとの戦いは中吉の圧勝だった。
化け物が動かなくなった時、どの戦いでも中吉には焦りの表情なんかなく呼吸は整っていた。
片手に持って歩いているモップやウェストポーチに入っている雑巾、固形洗剤なんかも構えてたな。
きっと、そいつらを使って倒していたのだろう。
きっとなんて曖昧な表現を使うのは、目の前で戦いが起きていたのに化け物と中吉の動きが早すぎて、俺の目では何が起きているのかあまりわからなかったのだ。テレビでフェンシングの剣先を追ってる気分だった。どっちの剣先が、どっちの方が先にどこに当てたかなんてわからない。数十秒間、人の体と化け物の体がそんな状態になってるんだ。中吉の攻撃はどうやってどこに当たったとか中吉がどこかに攻撃をくらっただとかわかるわけがない、きっととしか言いようが無いんだ。
しばらく歩いていると壊れたコンビニを見つける。
屋根や壁なんかは中途半端にしか残っていない、瓦礫で埋まっている店内は瓦礫から一部陳列棚が見えているところもある。
昨日は俺、ここで同級生のためにヤンキーに殴られたんだぜ。
ヤンキーに殴られるだけで泣く程怖いし、痛い。でも、その後には丸井さんとちゃんと笑えて……。
俺が勇気を出した、今後中吉の家に行く時なんかたまに見たら少し誇らしい気持ちになれるような、そんな良い思い出の場所になるかもしれなかった……そんな場所だろっ!
それが……なんでこんなことになってんだよっ!
俺の目から涙が出てくる。
とめどなく溢れる涙、俺の口からは無意識に嗚咽が漏れる。
先を歩いていた中吉が俺の異変に気付き、後ろを向く。
「スバル……酷え顔じゃねぇか。俺にはよくわかんねぇけど今日はパーティーなんて気分じゃなさそうだな。よし、家に着いたら一旦休もうか!スバル、お前今どこに住んでんだ」
「どこに、住んでる、か。この世界に俺の家は無いよ」
「なら俺ん家に泊まってけ!いいな、帰るぞスバル。って、元々俺の家に向かってたんだけどな」
中吉は気を使ってくれたのだろう。
更に歩くと中吉の家が見えてきた。中吉の家を境に、そこから見える家はどの家も新築の様に綺麗だ。
中吉の家は、外観は俺の知っているものだったが、中吉の部屋に入ると内装が俺の知っている物と少し違っている。
中学生の部屋の様な少しだけ年不相応な内装に俺が目を取られていると中吉が俺を自分のベッドに寝かせてくれた。
中吉は親の部屋で寝ると言った。両親はまだ異世界から帰ってきていないのか、帰っては来ているが会えていないだけなのか……。
家には戻って来ていないらしい。
ここは、両親の安否もそんな風に表現する世界なんだな。
中吉が部屋から居なくなると、俺は緊張の糸が切れたのかすぐ寝てしまった。
荒岩中吉の戦いは内海昴にとってまさに別次元の戦いだった
見えているのに見えない戦い
内海昴の心は荒んでいく
見えているのに見えないものはそれだけじゃないぞ内海昴
次回『たとえどんな世界でも』
第2章 3話
次元を超えた親友
見えてるのに見えないものが知りたければキャベツ社長の出る漫画も読め




