プロローグ 恋愛の神様製作所
–内海 昴–
真っ白な空間から真っ暗な空間へと移動した。
気が付くと何か座り心地の良い椅子に座っている。
椅子の感触が大変気持ち良く、その感触をしばらく楽しんでいると、目の前が少しずつ明るくなってきた。
目の前には巨大なスクリーン、ここは、映画館みたいだな。この映画館には俺の座っている超豪華な椅子が一つあるだけで他には何も無い少し不気味だ。
そんなことを考えていると、スクリーンに明かりが灯る。
お、なんか始まるぞ。
壮大なBGMとともに会社ロゴのようなモノがスクリーンに映し出される。
《恋愛の神様製作所》
今から始まるの、神様製の映画すか!?
その突拍子もなさに驚いている間にロゴの表示は終わったようだ。
これから本編が始まる。一体何が始まるのかと、ドキドキしながらスクリーンを見つめる。
20XX年!
世界では、突然人が消える現象が社会問題にまで発展していた。
ありとあらゆる人の前で起こるその超常現象。減る世界総人口。
各国の政府はこの危機に対し、総人口数の把握、管理に動き出す。
人口管理腕時計!
腕に生体感知システムを搭載したその腕時計は、伸縮抜群なのに腕から離れない。超高性能、ハイテクノロジー!
しかし、総人口を管理するだけでは超常現象による総人口の減少に根本からの解決を図る事は出来なかった。
超常現象により減り行く人口、その数が元の総人口比90%減となった時……一人の男が立ち上がった。
マッドサイエンティスト《無惨剣・修羅院》博士
彼は繁殖機能の付いた、人型人口生命体の研究をしていた。
世が世なら、その研究は悪魔の研究であると非難されただろう……しかし、世界は悪魔に魂を売るほどの危機に瀕していた。
彼が世界に対し自分の研究の援助を申し出た事で、事態は急速に進行していく。
現代の通信速度は、世界を一瞬で繋げる。各国に残った超常現象で消えなかった人々は超世界会議と言われる、世界最大の過ちを決定してしまうその会議を開始した。
三日にも及ぶ会議の末、地球に残っている人類の総意で、彼の研究の援助が始まった……始まってしまったのだ!
会議の最中消えて行った人々を目の当たりにした会議の出席者達は、このままでは地球の人類文明は死滅してしまうと、その危機を深く感じ取ったのだ。
この超常現象に、もう、傍観しているだけではいられない、と……。
かくして修羅院博士の悪魔の研究は潤沢な資金を得て始まった。
世界の総人口比が95%を超えた時に、彼の研究は確実な成果を出した。
繁殖機能の付いた人型人口生命体はすでに産まれていた、しかし、確実な成果とはそこではない、その人型人口生命体が、自身の持っている繁殖機能を使い、見事に子を成したのである!
そう、修羅院博士の研究は成功した。
人型人口生命体の繁殖能力は凄まじく、世界中に彼等は増えて行った。
人型人口生命体、そう、あくまで人型である。人ではない。
彼等は増えていく中で人類史、類を見ないスピードでの進化を果たしていく。
化け物
かつて世界が平和であった頃に、創作物の中で存在していた異形の生物。
修羅院博士が産み出した人型人口生命体は、その創作物の中に存在していた、異形の怪物の様な進化を遂げていったのである……博士が作り出した生物は、最初こそ人型ではあったが、姿・形・生体を変え、世界中で様々な進化を遂げる。
海には鯨の様な大きさのモンスター!
陸には虫の様な莫大な数のモンスター!
空には鳥の様な外敵を寄せ付けないモンスター!
人類の住処はそれらのモンスターに侵食されていく……生きている、超常現象の魔の手にかからなかった人々は、己の軽薄さを呪った。悪魔に魂を売った末路を呪った。もう地球は自分達が愛した世界ではない。
勇者など居ないこの世界で、化け物から世界を取り戻すことができるであろうか。
それらに勇敢に立ち向かう存在もいた、しかし、いくら戦いを続けても繁殖機能を持つ彼等が居なくなることはない。
チマチマと討伐していった所で、彼等はいくらでも増えていくのだから。
超常現象での人口減少が続く中、化け物達にも加速的に減らされる総人口!その数字が98%減を示した時、その数字に異変が起こった。
97……96……90……70……!
爆発的減少傾向にあった総人口が、増えていくのだ。
世界で最後まで生き延びていた、たった2%の人々は混乱する。
かつての家族、恋人、知り合い達が、帰ってきた。
彼等はどこからともなく現れた。まるで、この世界から突如消えていったあの時の様に、突如この世界に現れる。
彼等は、各々異世界への転移をして、その世界にいる魔王と呼ばれる存在を倒してきたという。
世界滅亡を覚悟したその超常現象は異世界転移によるものだったのだ!
異世界転移から帰還してきた彼等は、異世界で、奇跡としか思えぬ力を身につけていた。
彼等は何もない空間から火を出し、水を出し、風や光を操る。並々ならぬ剣技を、弓技を見せる。
本人達は何故か十全に力が引き出せないと嘆いているが……この世界には魔王がいるわけではないのだ!
化け物を倒すにはその力は十分過ぎるものだった!
その様々な力により人類は化け物達から住処を取り戻し、次々と異世界から帰還してくる人々により世界はまた人類の繁栄を祝福した……かに思えた。
彼等の中にも悪しき心を持つ者達が多くいたのだ!
彼等は化け物も倒さず同じ勇者と戦う。異世界へ行けなかった人々を虐殺する。
異世界から帰ってきた勇者達も、皆ボランティアで命をかけられるわけではない。化け物の討伐に力を入れてくれる勇者などごく僅かな存在だった。
波乱の時代!
今世界はまさに、総人口の80%以上が勇者!
超勇者時代の幕開けである!!
そこで映像は途切れ、スクリーンに幕が降りる。
おぉー。なんか勢いがあって、カッコいい話だったな。
でも、これで終わりなのか。話は途中だったと思うんだけど、続編はー?
映画は堪能したがなぜこんなものを観させられたのかはよくわからない。
そんな疑問もすぐ解決することとなった。頭の中に、神様の神々しい様な軽い様な声が響く。
「これが、いまから君の行く世界だよ。楽しんできてねー」
人口のほとんどが過去に異世界を救った帰還勇者の世界
そんな世界にも無能力な人間達は住んでいる
無能力者達はそんな世界で何を考えるのか
次回『たとえどんな世界でも』
第2章 プロローグ
博士と研究員
《原色高等学校幻の八不思議》
次回を読まない生徒は、幸せになれない




