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たとえどんな世界でも  作者: 進藤 真道
第1章 努力するとは決めたんだけど、一体何すりゃいいんだろ?
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第8話 協力者 荒岩中吉

 コンビニの裏手で倒れたまま隣にしゃがみ込む丸井さんとひとしきり笑いあった後、再び丸井さんに心配されることとなる。

 俺がずっと横になっているから、立てるかどうか心配してくれているらしい。


「立てる?手伝う?家まで送る?」


 ここまで意地だけでカッコつけたのだ。

 最後までカッコつけたいと思い、立てる事をアピールするつもりで強がりを言う。


「大丈夫、へーきへーき」


 そう言って立ち上がろうとしたのだが、うまく脚に力が入らなかった。入らなかったが、時間をかける事でなんとか立ち上がれた。

 更に一歩歩いてみるが、丸井さんを安心させることは出来なかった。

 むしろ、逆効果だったみたいだ。

 プルプルと足が震えていたし、その姿は産まれたての子鹿のように見えただろう。

 そこから一歩歩きでもしたら、母鹿が子として育ててあげようと深く母性を感じるであろう程に頼りがなかっただろう。

 大丈夫だと言っているのが明らかに嘘だとわかる、ふらふらと歩く状態を見て誰が大丈夫だと思うのか。

 丸井さんは慌てて身体を支えに来てくれる。そして、やっぱり手伝うと言ってくれた。

 それじゃカッコ悪いと言って更にカッコつけたのだが、丸井さんは有無を言わさず腕の間に身体を潜り込ませ、しっかりと身体を支えくれた。


 コンビニの裏から通りに出ようとすると、コンビニの袋を持ってこちらを覗き込んでいる中吉と目があった。


「昴じゃんか!なんかこっちの方が騒がしいなと思って見に来たら……って、お前どうした、怪我か!?大丈夫かよ!」

「中吉……」


 そう言えばここ、中吉の家の近くだったな。

 中吉は丸井さんに担いでもらって立っている俺を見て驚いているみたいだ。


「えっと、丸井さん。どういう状況かはわかんないけど、昴は担がなきゃ歩けないんだよね……救急車呼んだ方が良いのか?」


 中吉の言葉に丸井さんはハッとする。


「……救急車!全然気がつかなかった!そうじゃん、内海くん!病院行こ!」


 本当にこの子は……。


 丸井さんは天才と周りに言われる程頭が良いのに、抜けている。


 救急車か……そんな大ごとにしてほしくないな。そうだな、救急車なんて呼ばなくても大丈夫なはずだ。


「全身痛いし凄い疲れてるんだけど、動かないところは無いし、取り敢えず、家に帰りたい」

「えぇ!?病院行かなくて良いの。家、家かぁ、オレわかんねぇよ!」

「……わかった、家だな。丸井さん、俺が案内するよ。昴、俺も手伝うからな」

「ありがとな。助かる」


 こんな感じで、丸井さんと中吉に左右を支えてもらいながら、なんとか歩いて家に帰った。


 はぁ……さっきまでは俺かっこ良かったかも!?と思ってたけど……締まらないなぁ。


 ◇


「着いたな。部屋までは送るぜ」

「ありがとな中吉。丸井さん、ここまでくればもう大丈夫!ありがと。部屋は……ちょっと汚いから……」


 無事家まで送ってもらえたが、ここでちょっとした問題が発生した。

 部屋に丸井さんを入れたく無いのだ。

 部屋が汚いからなんて嘘だ。

 部屋を女の子に見られるのが恥ずかしかったと言うのが一つ。


 それから、瀬戸のことを大々的に好きだと公言している丸井さんを部屋に入れる勇気がなかったと言うか……あーそうだよ、瀬戸蒼!

 野球部のキャプテンで女子にキャーキャー言われてるやつ……丸井さんは熱狂的な瀬戸ファンなんだ。

 何で最近瀬戸のこと思い出せなかったんだろう?


 そんな事を考えていると、俺の思いを汲み取った中吉が頼りになる笑顔で言う。


「丸井さん、後は俺がちゃんと部屋まで送ってくから任せといて!」

「そっか、じゃあ中吉くん!内海くんは任せた!」

「おう、任された!じゃあなー」


 中吉、ナイスアシスト!

 中吉の言葉に安心した丸井さんとは、家の前で別れた。

 中吉はそのまま俺の家の中まで運んでもらえた。


「おばさーん、中吉でーす。お邪魔しまーす」


 中吉は俺の母ちゃんに挨拶をして中に入るが、誰の返事もない。

 母ちゃんは家に居なかった。


「母ちゃん、買い物かな。居ないみたいだな」


 中吉が部屋まで送ってくれた。部屋に着くと、すぐ寝かせてもらった。

 寝転がると全てが終わったと実感する。

 なんか、凄い一日だったなぁ……。

 学校では水原の事を、中吉も覚えて無いって言ってて、絶望して、でも水原が学校に来て、告白するって決めて、水原探して昭和ヤンキーと喧嘩して、水原への思いを丸井さんに伝えて、その想いは丸井さんにしっかりと伝わって……。

 はじめての喧嘩にテンションが高まり過ぎてたな……。


 ————————

 ——————

 ——……。


 色々頭で考えた事で、段々と冷静になってくる。


 水原への想いは、丸井さんにしっかりと伝わっても意味ないよ!?

 告白成功したくらいの達成感を感じてたよ!

 今、今日の事色々思い出してる時、頭の中でエンドロールが流れてくるくらい気持ちよくなってたわぁ!


 今日という日はまだ終わっていないのに、充実感で一杯になりすぎていたようだ。

 そんな中で今日はまだ終わっていないと伝えるかのように中吉は俺に質問をする。


「でだ、昴。お前何があったんだよ」


 声聞くまで、中吉を忘れてた。

 どんだけ何もかもを終わらせようとしてるんだよ俺!

 そういや中吉は心配して部屋まで来てくれたんだよな。俺、そんな親友の存在を忘れちゃあいけないだろ。


 心の中で反省して、中吉にキチンと向き直り、この怪我について簡潔に説明する。


「この怪我の事だよな。丸井さんがヤンキーに絡まれてたから首突っ込んだら殴られたのさ」


 説明は全然足りてなかったろうに、話を聞いていた中吉は目を輝かせた。言葉は少なかったが十分に状況は伝わったようだ。


「なにそれかっけぇ!お前最近おかしいと思ってたけど。いつの間にそんな、漢の高みに行ってたんだよ!」


 中吉に褒められて嬉しい。ヤンキーに絡まれてる女の子を助けるのは漢の夢でもあるのだ。どんどん気分が良くなり、楽しくなってくる。


「ふん、そうじゃろそうじゃろ。ま、俺も何にでも首突っ込むような程の正義には目覚めてねぇよ。水原だと勘違いしてさー」

「水原?お前水原さんと何かあんの」

「朝話したろ」


 そう言えば今朝、中吉は水原を知らないと言っていた。

 その直後に登校した水原を見て、知らないなんて言ってなかったかのように水原を知っていると言った。

 朝だったし寝ぼけてたのか……。

 今の中吉には、水原の事を知らないなんて素振りはまるで無い。俺がクラスメイトに何かあるのかが気になって質問をしているだけに見える。

 そうか、朝の話を忘れてるとなると、水原を好きだと、もう一度中吉に教えることになる。

 ……ちょっと恥ずかしい。

 母ちゃん家に居ないんだったよな、って事は今の家にはこいつと俺しか居ない。

 今のうちにもう一回話してしまおう!

 今なら誰に聞かれることもないだろ。


「俺、夏休みの間に水原の事好きになったんだよ!」

「朝……んー、そうだっけか。すまんすまん。適当に聴いてたのかな。そうか、好きな女の為に動いたわけか。やるじゃん——ってそういや水原さんならコンビニの中であったな。レジで俺の前に並んでたぜ」


 えっ、水原あのコンビニに居たの?

 放課後一番欲しかったもの、水原と出会うこと、を中吉は手に入れていたらしい。こっちは水原に会うために中吉との下校を断り、全力疾走して水原がいもしない場所を巡っていたと言うのに……。

 なんだよ、その偶然の出会い。羨ましいぞ!


「俺もニアピンじゃねぇか!あ、放課後先に帰っててって言ったの。あれ放課後に水原探して声かけたいなと思ってたからなんだよ……ちくしょう!俺が会いたかった。……まぁいい、そんなわけだからさ、中吉にはなんかあった時は協力頼むぜ!」

「あー。放課後のはそう言うことか。わかった!つっても何したらいいのかわかんねえな。んー、二人きりになれそうな環境だったら二人きりになれるようになんとかしたりとかか」

「協力してくれって言ったけど俺も何してもらいたいかはよくわかってない!でも、お前が手伝ってくれるなら百人力だ」

「おう。コンビニで見かけた時は心配したけどよ、元気みたいで安心した。俺はもう帰るな。水原さんの件だけどさ、自然な感じで協力出来そうなタイミングがあったら動いてみるわ。頑張れよ」


 またなと言い合い中吉は部屋から出ていった。

 本当に中吉は頼りになる。

 普段は適当な友達だが、頼ると当たり前にそれを受け止めてくれる。こう言うやつが友達にいる俺は幸せなんだろう。

 中吉がいなくなると、緊張の糸は切れ気絶するように眠った。

満身創痍で家に帰った内海昴

荒岩中吉から水原左凪とニアピンで出会えていなかった事を告げられた

ヤンキーとの戦いは水原へ、あらぬ誤解をいだかせることになる


次回『たとえどんな世界でも』

第9話 9月3日/家族と友と想い人


《原色高等学校幻の八不思議》

次回を読まない生徒は、幸せになれない

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