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後編:46 minutes bloodbath(1)

後編:46 minutes bloodbath(1)



 それは午後二時過ぎ、午後の授業もあとひと息で終わるかもというとき。

 校内にサイレンの音が響き渡った。授業の開始や終了を告げる優しげなチャイムの音ではない。それは不吉な、警告音。

 それが意味するものは、全国共通。ミユも何度か聞いている。何度も。そう、あの日も。

「第四地区内に不死兵出現。民間即応部隊は、ただちに出撃してください。繰り返します。第四地区内に、不死兵出現」

 筆箱にシャープペンシルをしまってミユが立ち上がる。教師に一礼して教室を出ると、目の前を大きな影が横切るのが見えた。

 もうブレザーを脱いでいる。白いブラウスに、青いリボンが揺れている。階段をひと息に飛び降りたしなやかな足、揺らめくスカート。

「行くよ!」

 ナオが着地する足音が、まるで陸上競技のスターターピストルの音のよう。

 誰もいない学校の廊下を、走る。目の前で揺れていたはずのポニーテールは、もう遠い。追いかける。

 校舎の角を曲がる。ちかっ、ちかっと短い閃光。突き当たりのドアを開ける大きな背中。

 続いてセンサーに手を叩きつけるようにする、小さいがしっかりした背中。短い金髪。

 ナオに追い越されて少し速度を落とす小さい背中。振り向きざまにこちらを見た茶髪の中の瞳が、満足げに揺らめいた。

 黄色い枠線を飛び越える。着地と同時に、センサーに手を添える。ちかっ。

「イダテン、リーコンパックCを装備!ゲートオープン、プラムL10、出撃する!」

 ガレージの扉が開くのも待ちきれないとばかりに、人馬一体の影が扉をくぐっていくのが見えた。

 背後から、軽やかな足音。細身の体にまとった白衣が翻る。

 最後に少し遅れて、少し重い足音。もう腕章やパッドをつけているので、一目散にロッカーに向かう。

「敵出現地点は、JR馬潟駅構内、および西口周辺!ポータルが最低二つはあるということだ」

 ハルタカの装備をチェックしながらケンジロウが言う。

「JR武装駅員からの連絡はない。真っ先に襲撃されたらしい。未確認だが、エス線検出前に被害が出ている。いつものやり方じゃない……何が起こるかわからないぞ!」

 ハルタカのチェックを終えると、コノミの装備をチェック。その間に、ハルタカがケンジロウの装備をチェックする。

「情報が錯綜しているが、複数のMGが持ち込まれていることは確かなようだ。駅ビルの避難経路を確保することが、さしあたっての任務だ。急げ!」

 ミユが装備を装着すると、ナオがチェックする。バンドやストラップを少しきつめに、しかしきつすぎないよう締め上げる。

 今度はミユがナオの装備をチェック……プレートキャリアでなく、軽量なチェストリグ。その分持ち運ぶ予備弾倉の数も少ない。

 ベルトの後ろはダンプポーチの上に、ぶ厚く刀身の長い山刀をくくりつけている。

 銃はM16カービン。これも、リイサがミユに用意した銃同様、おそらく最新の装いに仕上げられているようだ。

「先自転車乗ってて。パンツ見えないようにね」

 プラムL、1、4、5、出撃する。スクーターに取り付けられた回転灯が光り、サイレンが鳴る。

 次の瞬間には、昨日見たのとはまるで違うスピードでスクーターが走り出した。

 あれに自転車で追いつけというのか。サドルを調整してもらって、乗りやすくはなったが。

 ミユの自転車の前に、ナオのスクーターが滑り込んだ。「今回は特別だよ。つかまって」

 ナオが腰のベルトにロープを巻きつけ、ロープをミユに投げてよこす。

「スピードは簡単に出るけど止まるのが難しいからね。ブレーキのタイミングだけ、しっかり見て」

 プラムL、2、6、……3、7、出撃する。サチやタカヒロに比べても、ゆっくりした速度でナオは発進した。

 ナオが回転灯とサイレンをつけると、そのスピードはどんどん上がってくる。

 ハンドルをまっすぐ握るだけでいいはずなのに、とてつもなく腕力と集中力がいるように思える。

 先の信号は赤になっている。緊急車両に指定されているから止まらなくてもいい、が、サチとタカヒロは速度を緩めて様子を見つつ渡ろうとしている。

 いくよ。

 ヘルメットの下の表情は見えない。しかしナオはきっと笑っている。そう思うだけで、手にかける力がぐっと強くなるのをミユは感じた。

 サチとタカヒロの脇を一気にすり抜け、ナオに引っ張られたミユは交差点を通り抜けた。

 悪い事をしている。危険な事をしている。タイミングを間違えればナオに追突したり、ナオを引き倒してしまう。

 だけど、

 ナオは合わせてくれる。自分はナオに合わせられる。そんな根拠のない自信が湧き上がってくる。

 ナオが手を引いてくれれば、どこへだって行ける。きっと死んだナオの親友もそう思っていたに違いない……それも不思議と、根拠はないが間違いないと思えた。



 大通りの群衆を避けて東口駅前ロータリーにたどり着くと、昼下がりとは思えない静かさであった。

 時折散発的な銃声が聞こえてくる。遠くでは、激しい銃撃戦を行っているのが聞こえた……それに混じって、悲鳴や泣き声が聞こえてくる。

「ドローンと監視カメラの映像から判断すると」本部からの無線を聞きつつケンジロウが話した。

「奴らは駅のホームにネストを作って守りを固めている。ネストへの攻撃は許可されなかった……危険すぎる」

 直線距離なら五十メートルもない。助けを求める悲鳴は止むことがない……駅ビルの端から顔を出せば、見えるのだ。しかし。

 不用意に顔を出した区役所の武装職員がMGで撃たれて安全な所で手当てを受けていた。

 また大通りの一部もMGの射線に入っていて、避難中に撃たれた人を区役所武装職員が救助にあたっていた。

「駅ビル二階は複数のMGがいるが敵の数自体は多くない。東館も、火力の割に数は少ない。駅ビル二階東側を制圧し、東館を攻撃している敵を排除、避難経路を確保するのがとりあえずの目標だ」

 駅ビルの一階は封鎖されていないが、二階は、不死兵が駅ビルに侵入するのに穴を開けた部分を除き封鎖されている。駅への階段には、不死兵が待ち構えている。

「北側階段は、区役所職員と警官が陽動してくれる。南側階段から、プラムL4が侵入。7はバックアップについてくれ。残りは駅階段を攻撃する」


 駅階段は、左側にエスカレータが設置されており、中央にエレベーターがあった。

 階段にMGが一挺、上り下りのエスカレータにStgが各一人。その後ろに五人か六人の不死兵。

「状況は今のところ変わらないね……タイプCドローン、7から12号機、スタンバイ……コネクト。ユーハブコントロール。1から6号機を回収する」

 発進した小型ドローンを見送り近くに着地したものを拾い集めると、ユウコはバイクの後ろに積んだコンテナにしまった。

「わたしはちょっくら西口の偵察に行ってくる。がんばってルーキー」

 そう言うとユウコとそのバイク、イダテンは駅階段の下にからかうように飛び込み、すぐ飛び跳ねるように去っていった。

 遅れて聞こえる、MGの銃声。「なんとかなるね」サチのスクーターから回転灯とサイレンの配線を外しながらナオが言った。

 警官から借りた重量級の盾を持って、ミユがスクーターの荷台に腰掛ける。

 MGの固め打ちには耐えられないが、Stgの連射にはある程度耐えられるらしい。

「プラムL4、7、配置についた」ハルタカが無線で短く言う。

「プラムL1、了解した。プラムL1より本部、これより突入する。EMPを使用する」

 ケンジロウの合図で、サチのスクーターが発進した。リミッター解除スイッチと連動したサイレンが外されているため、音もなく。

 サチにしがみついて、盾を落とさないように。そう思っていてもあまりの急加速に振り落とされそうになる。

 サチの体は不安になりそうなほど柔らかく感じたが、力を入れるとゴムの塊のようなしなやかさと硬さを持っているのがわかる。

 次の瞬間にはもう急ブレーキ。止まりきらずに壁にぶつかる……グレネードベスト越しに感じるサチの柔らかさ。

 ばん、ばん。背後から聞こえる銃声。スクーターと並んで走ったナオは、エレベーター前で止まって牽制の銃撃を始めていた。

 スクーターを飛び降り、盾をサチの横に立てかける。

 背負ったカービンとサチのグレネードランチャーを降ろし、グレネードランチャーをサチのそばに置く。

 カービンを構える。薬室には電解弾、弾倉には通常弾。安全装置、オフ。カットオフレバー、オン。

 カービンも電解弾も、実戦で使うのは始めてだ。だが不思議と、不安を感じない。

 階段の下にへばり付くように伏せたナオを、MGが撃とうとしている。銃口を下げるために、伸び上がって。

 距離は二十メートルもない。スコープの倍率が等倍でも、ヘルメットに覆われた不死兵の顔の、額に十字線を合わせるのは一瞬だ。

 引き金を引く。反動。スコープから不死兵の顔が消える。しかし目ではとらえていた……不死兵の頭の奥で閃光が走り、スイッチでも切るように表情が消え失せるのを。

 不死兵を倒した……一発で。

 ばん、ばん。ナオの銃声で我に返る。MGの両脇に不死兵が一人ずつ。ナオが交互に銃弾を浴びせるが、Stgを持った不死兵が、ほとんど怯まずに銃を構えようとしている。

 ボルトハンドルを引き、プレートキャリアに取り付けられた小さなポーチに手を伸ばす。一つのポーチに、電解弾が二十発。

 怯まない不死兵に、ナオは集中して攻撃している。もう一人に……電解弾を薬室に放り込み、照準を合わせつつボルトを閉じる。

 不死兵がナオの方を向いて銃を構える。急いで引き金を引く……青い閃光。ヘルメットに、弾かれた。

 弾かれたら、倒せていない。カットオフレバーをオフにしてボルトハンドルを操作……

 ミユがスコープにとらえる前に、不死兵の頭に鋭い衝撃が二つ入り、崩れ落ちる。

 ナオがとどめを刺したなら、こっちを……不死兵の背後に、ナオに撃たれた血しぶきが舞っている。

 ボルトハンドルを閉じて、照準を合わせる。体勢を立て直す前に、

 ばしっ。着弾の衝撃で、不死兵の目玉が眼窩から飛び出すのが見えた。頭を吹き飛ばした、ようにも見える。

 これでもまだ、あの不死兵は死んでいない、一分足らずで起き上がってくるというのが、何度も見た光景のはずなのに、不思議に思えてくる。

「ナイスアシスト!」弾倉を交換しながらナオが言う。

「集中しすぎてるよ。もっと周りを見て!まだ階段は登らないで。フォローよろしく!」

 ナオは階段を数歩上がると後ろを向いて銃を構えた。そのまま銃を撃つと、小さなガラスの破片が降ってくる。

 階段の背後、二階か中二階の通路が、階段を見渡せるショーウィンドウになっているのだ。

 ドローンでは不死兵を確認できなかったが、ナオの銃撃に反応して不死兵が撃ち返してきた。

 カットオフレバーをオンにして、薬室に電解弾を装填する。階段の上を警戒する……

 ずばぁん。大きな銃声とともにエスカレーター上の不死兵が倒れる。

「急いでミユちゃん!手榴弾を落とされる!」ケンジロウの援護を受けたサチが飛び出してきた。

 SF映画に出てきそうな巨大な銃を、おっとりした雰囲気からは信じられないような速さでサチは構えて、階段の上に二発撃ち込んだ。

 発射音自体は拍子抜けするような音だが、雷が落ちたような閃光と衝撃。次の瞬間には周囲の照明が一斉に消える……

 EMPグレネードの有効範囲は五メートルほどだが、それ以上に広い範囲の電子機器に影響を与える。

 状況が目まぐるしく変わっていく。今までと全然違う早さだ。

 背後の窓!ナオが応戦している!手榴弾!?近すぎる!どうすれば!

 カービンから手を離す。階段を数歩駆け上がり、振り返る。拳銃を抜く……“周りを見て“。

 ショーウィンドウと通路を隔てるパネルが取り外されている。マネキンとは見間違えようのない、血まみれの軍服を着た大柄な人影。

 不死兵は二人。一人がMPを撃ち降ろしてナオを釘付けにして、もう一人が手榴弾の安全ピンを抜くところだった。

 手榴弾を阻止……しかし体は直感的に、MPの不死兵に撃ち込んでいた。ナオが体勢を立て直す。もう一人の不死兵が焦って手榴弾のピンを抜く。

 不死兵が手榴弾を振りかぶる。狙いをつけずに、不死兵に拳銃を向けて銃弾を撃ち込んでいく……弾は胸に当たっているようだ。

 不死兵の顔つきが変わる。胸への銃撃に慣れてしまったのか、強引に手を振り抜いて手榴弾を投げようとしている。

 引き金から指を離す。落ち着いて、狙いを、不死兵の顔に合わせる。

 二発。不死兵の体が糸の切れた操り人形のようにその場で崩れ落ちる。大きく振りかぶって投げようとした手榴弾は、不死兵の背後に落ちた。

「手榴弾!」不死兵の真下を避けて、ミユは階段を少し降りて座り込んだ。ナオとサチは……見えるところにはいないようだ。

 耳栓をした上で耳を塞いでいても、強烈な爆発が体を揺さぶる。地面に叩きつけられたような衝撃に頭が、内蔵が揺さぶられる。

 そのまま気を失いそう……体のバランスが失われるような感じの中、背中にばしんと、何かの一撃を感じた。

 撃たれた訳ではないようだ。その一撃はそのまま背中を押し、階段から転げ落ちる逆の方向にミユを動かす。

 頭に何かがぶつかる。何か、いや、誰か。サチの大きくて柔らかい感じではない。だが何か覚えがある。

 肩を抱いて、頭をぶつけるように近くで、大きな声で。

「でかしたルーキー!」

 ぼやけて混乱していたミユの意識を、その一言がすっと洗い流した。

 小さい体でミユを支えていたそのひとが、ミユから手を離すと階段を駆け上がった。不良みたいな茶髪。機関銃手なのに、銃を持っていない。

「クイックドロウ」「ステディエイム」「スカベンジャー」

 パークバッジの人口音声。

 コノミは一気に階段を駆け上がると、拳銃を抜いて不死兵への銃撃を始めた。乱射しているようにしか聞こえない、速い銃撃。

 少し遅れてナオが階段を駆け上がり、上がりきる手前でしゃがんで奥の不死兵に攻撃する。

 こうしちゃ……いられない。

 コノミがしてくれたように、動かない足を手で叩いて気合いを入れる。昼休みにもらったスリングで、ミユのカービンは胸元で揺れている。

 拳銃は何発撃ったか覚えていないがホルスターにしまう。階段を登る。ナオの後ろへ。

 階段を登り切った少し先に、不死兵が数人。まだ倒れていないが、苦しんでいるようだ。

 サチのEMPグレネードで、不死兵の体内にあるイッテンバッハ体の回復機能が働いていないのだ。

 コノミは不死兵のMPを拾って、階段正面のみどりの窓口に撃ち込んでいる。

 ナオの攻撃している方向……EMPグレネードの効果があった不死兵は、もう撃ち倒されている。残りがナオの銃弾にも怯まず前に進んでいる。

 ナオに撃たれてよろけた不死兵の顔に十字線を合わせる。

 頭の中に閃光。そのまま倒れる不死兵。「ローディン!」ナオが叫んで階段に隠れる。カットオフレバー、オフ。

 階段を登り、MGに隠れつつ身を乗り出す。走っている不死兵の胴体を狙って引き金を引く。死んではいないが、不死兵が倒れる。

 ボルトハンドルを操作する間に、目が不死兵を探す。どこにいるのか、優先的に攻撃するべきなのは。

 ショットガンの銃声。駅ビルとの連絡口にいた不死兵が突き飛ばされたように倒れる……それ以外の目についた不死兵に、ミユは照準を合わせた。


「持ってきたぞ」

 遅れて階段を登ってきたケンジロウが、コノミにマシンガンを渡す。

 サチが階段に設置されていたMGを三脚ごと引きずって、改札口周辺を見渡せる場所に設置した。

 改札口周辺は静まり返っていた。西口駅ビルから不死兵は攻めてきていない。西口階段を守っていたMGは、銃を三脚から外して西口一階に逃げ出した。

 駅のホームからも、不死兵は攻めてこない……コノミ、ナオ、ミユの三人で駅構内を警戒するがもう不死兵はいないようだ。

「ねえ、あれって……」ホームへの階段の近く、看板に隠れているものをコノミは指さした。

 背景の書かれた板に穴が開いているかのように、その場所にぽっかり穴のようなものが開いていた。

 不思議な色と光が中で渦巻き、きらめいている。CGで合成したような光景だが、生身の目で見ている。

 ミユは見たことがある。不死兵のネストという地獄絵図の中心に浮かぶ、地獄の門。

「間違いありません。あれが……ポータルです」

 ポータルから転げ落ちるように不死兵が出てきた。まだ動きが鈍い……不死兵であってもポータルを通り抜けるのは、大きなダメージを伴うと言われている。

 ミユが不死兵の頭に電解弾を撃ち込む。ヘルメットに弾かれたが、ナオがとどめを刺した。

「こんな目に見えるところにあるのを見るのは初めてだよ。奴らはポータルを中心にネストを作るけど、今回は別みたいだね」

 ホームにあるネストからの悲鳴は聞こえない。ポータルを押さえられたので、ポータルから出現した不死兵に餌をやる必要がなくなったのだ。

「……了解しました。プラムL4、7、そちらのタイミングで始めていい」

 本部からの無線連絡を聞きながら、ケンジロウがバックパックからサチの予備弾倉を取り出す。

「改札の向こうには行くなと本部からの指示だ。防衛チームはここを確保する……他のチームは軒並みMGに足止めを食らっている。自衛隊が来るまで、援軍は来ない」

 サチがグレネードランチャーの弾倉に弾を込めている間に、ケンジロウはタブレット端末を取り出して鹵獲したMGを撮影した。

「製造番号と刻印を、本部に問い合わせた……たぶん間違いない。MPは確認されていたが」

 ナオに予備弾倉を渡し、使用済みの弾倉を受け取る。ミユとコノミの拳銃も。ミユの拳銃は、弾がほとんどなかった。

「六郷、合格点ではないが及第点だ。よくついてこれたな……詰めは甘いがいい判断力だ」

 ポーチに使った分だけ電解弾を補充し、通常弾を弾帯に刺す。弾倉には、もう補充した。

「プラムL2、6は東急線改札側から駅ビル西側に侵入し、敵のMGを排除せよとのことだ。駅ビルの守備チームが押されている。四階から五階へ退却中だ」

 ケンジロウは駅ビルのパンフレットを取り出して、フロアガイドを指さした。

「東急駅ビルの避難は順調に進んでいる。こっちの駅ビルともつながっていて避難は行われているが、連絡通路が狭くてうまくいってない。もう四階の通路は使えない。五階を押さえられたら逃げ場はない。急いでくれ」

 ナオとミユが周囲を警戒しながら東急線改札への連絡口に向かった。

「……で、何が間違いないって?」コノミが聞くと、ケンジロウは無線の連絡を苦々しい顔で聞いてから答えた。

「悪い予感が当たった」忌々しげにMGを叩く。

「あのポータルの向こう、奴らの工場で、MGの生産が始まった」



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