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シーン6

 水の中から見る月。

 今日は三日月だ。

 ほとんどぼやけてしまって、形はわかりづらいが、やはり満月とは全然違う。

 生きているときには、こんな景色見ることはできなかっただろう。いや、見ようと思えば見れたけど、わざわざこんな夜中に川まで来て、水の中から空を見上げるなんてしようとも思わなかったというのが正しいのかな。

 それに、生きている間は息継ぎが必要で、こんな風に水の中に沈んでのんびり考え事なんてできなかった。

 最近は、毎日のように月野がこの川までやってきたおかげで、昼間はすごく楽しい日々を送っている。だからこそ、夜こうして考える時間が必要だと思う。

 俺がこうしてここに居るには、時間制限があるのだから。

 幽霊になってから結構な時間が経ってしまったし、まだ俺の未練は見つからない。それを見つけるために憑りつける人も見つからない。

 ないない尽くしのこの現状で、俺はあとどれくらい正気を保っていられるのだろうか。

 あと、何回月野と会えるだろうか。

 いっそのこと月野の言う通り、奴隷にでもなってしまえばずっと月野の傍にいられるんだよな。

 それは、とてもいい考えに思えてしまうが、だからこそ俺はその考えを首を振って消し去る。

 別に月野の思うつぼになるのが嫌なわけじゃない。むしろ最初に出会った頃には酷いことを言う女だとちょっとばかし想ったけど、こう毎日のように俺に会いに来てくれるようになった今、彼女自身の目的もあるにせよ、俺にとって彼女はある種の救いになっているのだ。

 なってみて初めてわかったことだが、やはり幽霊は孤独だ。

 誰もその存在に気づかれないなんて、ある種の拷問みたいなものだ。実際にそういういじめがあるしな。

 そんな中で、唯一俺のことに気づいてくれる。話をしてくれる月野に、俺は救われている。

 たぶん、月野はやろうと思えば最初にあった時にもう俺のことを奴隷にすることができたのだろう。

 でもそうしていない。

 それは、俺に未練を晴らして、満足して成仏する機会を与えてくれているんだって、勝手に俺は考えていたりする。

 だから、月野に頼んで奴隷にしてもらう……って自分で言ってて変態っぽいな。とにかく、そうしてもらうのは本当の最終手段にするんだ。

 まずは未練を見つけないことにはしょうがない。

 水面に隔てられてぼやけた月を見上げる。

 最後に見た月と同じように、その光は俺を照らしていた。

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