ゆかりんの夢の中 笑
八雲 紫の回想というか、過去の記憶ですね。
一人の少年…の姿をした妖怪がこちらを俯きがちに見つめている。150cmくらいの背丈に、現代世界で言う制服を纏っている。此れだけならばはっきり少年と言い切れたであろう。だが、彼を人外とするには十分すぎる特徴を彼は持っていた。
彼の右眼だ。私は何とか驚きを隠して彼を観察する。
朱かった。何処ぞの幼い吸血鬼の魔槍にも引けを取らないほどに、けれど赤でも、紅でもない。紛れもなく
“朱”だった。
どんな能力なのだろうかと警戒しつつ、このままでは埒があかないので話を始めることにした。
「貴方は…」
「っ!!」
私が話し始めようとすると、何かが彼の後ろに隠れた。再び黙り、彼の後ろにいる何かを観察した。
それは、少女だった。こちらの子は恐らく人間だろう。黒髪、黒目、何より彼女は霊力を“纏って”いる。
……え?霊力を…纏って…っ!?
「…分かって、頂けたようですね。私のお願いを聞いてもらえるでしょうか?」
彼は俯きつつもしっかりとこちらを見ながら言う。その時も彼の右眼は朱く輝いていた。
私は動揺していた。まさか、霊力を可視化できるほど持った人間が居るなんて前代未聞だろう、と頭が事実を受け入れられなかった。
それにこの後述べられる要件が想像に難くなかったが、それを果たして“為すことができる”のかというのも考えなければなかった。
しかも、私は彼に《許されざること》をしたのに。
「えぇ、聞くことはできるけれど…何故私に頼むのかしら?私は貴方を……」
「だからこそ、です。貴方なら必ず受けてくれると思ったので、「一度犯した過ち」は貴方は二度と繰り返さない。つまり、経験則ですよ」
「経験則…?」
思わず聞き返すと、彼はかすかに笑みを浮かべた。その笑みには全く悪意がなく、無邪気な見た目通りの子供のようにさえ見えた。
「貴女が今、何事にもほぼ動じないのは過去の自分がそれをすでに行っており、解決策を知っているから。そして、“今は” 解決する力を持っているからです。だからこそ、僕は貴女にお願いするのですよ」
今は、という言葉に違和感を覚えたが、それよりも彼が自分を信じきっていることに不安を感じた。
彼の隣にいる少女はこちらに来たら博麗の名を冠することができるレベルの霊力量を持つ。しかもまだ10歳にも満たないような子がだ。こんな前例は無い。上手くいけば妖怪と人間の均衡を保てるかもしれないが、失敗すれば成長した彼女によって今辛うじて残る均衡を崩されるかもしれない。
だが私は彼に負い目がある。たとえ危険を背負うことになっても、悪いのは自分なのだから…
決めた。
そこまで言うのなら。
「分かったわよ。やってやろうじゃないの。で、用件は?」
それを聞いた彼は…篠宮 裕は笑みを深めて、
「彼女を……
霊夢を引き取ってください」
この時私はあることを決意した。
短い上に投稿遅いですが、何卒…何卒っ!