色、停車
陽は昇る。窓越しに一面の海。光を含み、水面が揺れる。
子供たちの歓喜。見守るタクト、思いに、感無量と、吹き込ませる。
「みんないいかな?もうすぐこの海に一番近い所に列車 を停めるけど、さっきの僕との約束はどうだったかな」
一人で遠くにいかない!
困った事があったら、お兄ちゃん達を呼ぶ。
“力”を人に向けて使ってはいけません。
頬が緩み、目尻は下がる。
バースさんだったら、たぶん、真っ先にはしゃぎだしていたはすだ。休暇の度に僕を海だ、山だ、と連れて行ってくれてた事を思い出す。
父親との外出の思い出は?と、ふと、思う。
記憶は断然、バース。気がつけばいつもバースを追って、ついていく。
今、思えば、父親、兄のような存在。
小型通信機から、マシュの声に、我に返る 。
徐行する列車。
降りて、目の前に雑木林。
吹き込む潮風。
海の匂い、美味しいですよ、バースさん。
頬に風を注ぎ入れ、バースの姿を浮かばせる。
下車する子供たちは、満面の笑みを讃えながら、歓喜する。
海岸へと、砂浜を踏みしめる。
砂は舞い上がり、そして、静かに下りる。
「束の間の永遠。その輝きを私も、この胸に刻ませよう」
アルマの澄みきる言葉。
感情が揺れる。
想いは、空想。と、タクトは潮風にその思考を乗せるように、息を吹き込ませていった。