死にたがりの空は
日が沈む直前、まだ紅く、哀愁が漂う空。
まるで、私の心を映し出しているかのようだった。
_________つい先程。
一瞬。ほんの一瞬の出来事だった。
校舎の屋上から投げ出された親友の体は、みるみるうちにグラウンドへ吸い込まれていき、ぐんぐん、姿が見えなくなっていった。
急いで階段を駆け降り、親友が吸い込まれていったであろう場所へと走った。
が、あったのは頭が潰れた親友だったものの姿だけ。その姿が動くことはなかった。
「ねぇ、なんで◯んじゃったの‥‥‥‥。何を考えていたの‥‥‥?」
当たり前だが返事が返ってくることはない。
親友は‥‥‥‥華は何を考えていたのだろう。
どんな景色を見たんだろう。
家族への恨み、助けることのできなかった私への復讐、はたまた今日食べた給食。
きっとどれも違う。
______同じ立場になれば、少しは分かるのかな。
私は、再び屋上へ向かった。
あぁ、清々しい。
私は一人、部活終わりに屋上へ来ていた。
風が私の体を吹きつける。凍てついた、冷たく重たい空気だった。
屋上のフェンスをよじ登り、バランスが崩れないようしっかりと立つ。
____ふと、屋上の扉が開く音がした。
「何‥‥‥してるの。」
そこには、おそらく走ってきたのであろう、疲れ切った親友の姿があった。
「やっほ、愛美。」
「何してるのって聞いてるんだけど。」
「それは‥‥‥‥言えないかな。」
私は精一杯笑ってみせた。だが、きっとうまく笑えてはいなかっただろう。
だから、親友が安心できるような言葉をかける。
「愛美のせいじゃないんだ。私が疲れただけ。」
親友は何か言いたそうだったが、遮るように私は言った。
「____ごめんね。バイバイ。」
今度こそちゃんと笑えていただろう。
早く終わらせなきゃ、飛べなくなってしまいそうだ。
私は体をぐんと傾け、フェンスから飛び降りた。
ふわりと宙に投げ出された体は、グラウンドに向かって一気に急降下していった。
「_____ッッ!!!!!」
直後、親友の叫ぶ声が聞こえたが、ゴォッと響く風の音に遮られ何を言っているかまでは聞き取ることは出来なかった。
今までの沢山の思い出が蘇ってくる。
これが走馬灯というやつか。なかなか面白い。
楽しいことはあまりあるわけではなかったが、まぁ私の人生だ。
少し寂しいような悔しいような気持ちが、じわじわと込み上げてくる。
___ふと空を見る。
あまりの綺麗さに息を呑んだ。
「今までで一番綺麗な空だ。」
どんっと鈍い音がしてから、私は深い眠りについた。
屋上。
風が吹きつける屋上。
親友の血をめいいっぱいに吸い込んだ、真っ赤な屋上。
下を見ると、おそらく騒ぎに駆けつけてきたのだろう。
人が沢山集まってきているのが分かった。
そこには、華の先生だった人や私の友達だった人もいる。
___私は今から飛び降りる。
親友のもとへ。
親友の見た空を見るために。親友のことを知るために。
この世に心残りなんてものはなかった。
私は親友と同じようにグラウンドに身を投げ出した。
早く親友のもとへ行かなくてはと、身をよじり手を伸ばす。
地面にぶつかる直前、体は大きく回転し、落ちていく私に最後の空を見せた。
_____あぁ、やっと見れた。
親友の考えていたことが、最後の最後で分かった気がした。




