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鏡合わせのミロワール  作者: 知己
第3章 黒髪の侠女

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第16話 リンファの過去

 神州(シンシュウ)の武術家であるリンファの口から語られた過去を一通り聞いたジャンは頭の中を整理するようにウンウンうなった後、ようやく口を開いた。

 

「————要するに話をまとめると……つーか、ネエちゃん、アンタ名前なんつーの?」

「……リンファ」

「リンファちゃんね。俺はジャン・ノロってんだ。そんで、あっちの樹の上でアンタを警戒してんのがハヤブサのシュウ。あと、こっちが————」

「————俺の名はタスク・クサカベ。扶桑(フソウ)の者だ」

 

 ジャンの紹介に先んじてタスクが答えると、リンファはポツリとつぶやく。

 

「……タスク……」

「自己紹介も終わったし、話を戻すか。えーと、つまり、リンファちゃんは神州の山奥で姉妹(きょうだい)弟子たちと一緒に武術の腕を競って暮らしていた」

「…………」

 

 リンファがコクリとうなずき、ジャンが続ける。

 

「それがある時、アンタと仲が良かった姉弟子が突然豹変して仲間を皆殺しにした後、姿をくらませちまった。それで唯一生き残ったアンタは復讐を誓って『ウラジーア大陸(こっち)』にやって来たと————ん? なんかこの話って……」

 

 ジャンはここまで話すと、腕組みをしながら聞いているタスクに視線を向けた。

 

「……仇を追ってこの大陸に渡って来た貴女(あなた)が、何故この街で『晄石狩り(ハンター)』の真似事を?」

 

 タスクに問い掛けられたリンファはうつむいて答える。

 

「……この街で同じ神州の人たちと出会っタ。あの人たチ、ここに来てすぐの何も分からないワタシをヤサシクしてくれタ。だかラ、スコシでもあの人たちのチカラになりたいと思っタ……」

「…………そうか。強いな、貴女は……」

「強イ? でもワタシ、タスクに負けタ」

「いや、そういう意味ではなく……」

「? ワタシ、よく分からなイ」

 

 キョトンとした表情で首をひねるリンファに、口下手なタスクが困っている様子を見たジャンはパンと手を叩いた。

 

「————ま、ともかくリンファちゃんはタスクのアニキの姉ちゃんじゃなかったってワケでこれ以上揉める理由はねえし、お互い手打ちってコトでいいよな?」

「ああ」

「うン……」

 

 タスクとリンファが同時にうなずくと、ジャンは話を続ける。

 

「それでリンファちゃん。アンタ、この辺りでフソウ国の人間の情報を聞いたことはねえかい?」

「扶桑国の人……。聞いたコトなイ」

「そっかー……」

「ワタシからも訊ク。神州から来た女、見てないカ? 年は今、三十くらイ」

「いや、悪いけど心当たりねえなあ……」

 

 ジャンがチラリと視線を送るが、タスクも無言で首を横に振った。

 

「そうカ……。ワタシ、とても残念……」

 

 シュンとうつむくリンファにタスクは姿勢を正して一礼した。

 

「貴女のような一流の武人と手を交えられたのは良い経験となった。感謝する。願わくば、貴女が見事本懐を遂げられ再び故郷の土を踏めることを祈っている。それでは————」

「————待テ‼︎」

 

 タスクとジャンが立ち去ろうと背を向けたが、リンファが大声で呼び止めた。

 

「……まだ何か?」

「ワタシ、ついていク」

「————は?」

 

 リンファの突然の申し出に理解が追いつかないタスクは眉を寄せて訊き返した。

 

「ワタシ、タスクに負けタ。だからワタシ、タスクのもノ……」

 

 ポッと頬に紅を散らせながらうつむくリンファの様子にタスクはますます額のシワを深くした。

 

「……言っている意味が分からないのだが」

「ワタシの門派、女だケ。男に負けるト、その男に嫁に行く決まリ……」

「…………何だ、そのふざけた掟は……」

「————ブハッ!」

 

 ここまで黙って成り行きを見守っていたジャンが堪え切れないといった様子で吹き出した。

 

「ギャハハハハ! 良かったなあ、アニキ! 異国の地でこんなカワイイ嫁ちゃんが見つかってよ!」

「やめろ……!」

無問題(モウマンタイ)。ワタシ、こう見えて尽くす女……」

 

 そう言ってリンファはタスクの胸にしなだれかかった。先ほどの戦闘時よりも大量の冷や汗を浮かべたタスクはジャンに助けを求める視線を送る。

 

「諦めて責任取りなよ! アンタがリンファちゃんをキズものにしちまったんだからよ!」

「お前、後で覚えておけよ……!」

我的愛人(ウォーダアイレン)……。子供、何人欲しイ……?」

「…………『紫電一閃(シデンイッセン)』」

 

 

 ————バチッ

 

 

              ◇

 

 

 エティエンヌの街の街道を一台のサイドカーが南下しており、追従するようにその上空を一羽のハヤブサが風に乗っていた。

 

「————ヒッデー奴だな、アンタ。告白してきた女の子を感電させて逃げるなんてよ。それがサムライのやるコトか?」

「……うるさい、黙れ」

 

 側車に乗ったタスクが低く答えると、からかいの笑みを浮かべていたジャンは真顔に戻って口を開く。

 

「……ま、しゃあねえか。あの子にはあの子の、アンタにはアンタのやるべきコトがあるもんな」

「…………」

 

 ジャンの言葉にタスクが無言でうなずくと、上空のシュウが仕切り直しだと言わんばかりに一際高く鳴き声を響かせた。

 

 

  ———— 第4章に続く ————

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