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きらきらひかる

掲載日:2026/01/20

妹のあずさはちょっとバカなんだとおもう。

やめてといってもニコニコわらいながら、ぼくのいやがることをしてくる。


「あずちゃん、ぼくのコップだよ!かえして!」

今日はぼくのお気に入りのコップをおままごとに使っている。


()()()ちゃんつかってるの!」


こうなると絶対ぼくの言うことをきいてくれない。


ぼくはプンプンしながら、絵本を読んで

あずさのおままごとが終わるのを待った。


しばらくすると

「さとるくんおにいちゃん…これ…」


あずさが、ぼくのコップを気まずそうに差し出してきた。


コップには大きなひびが入っている。


水族館のおみやげにいとこのお姉さんがくれた、

たいせつなコップ

ふしぎなコップ


水とイルカと魔法の砂が入ってる

コップをかたむけると

砂がサラサラ

光がゆらゆら

イルカがプカプカ


なかをのぞくと海の中にいるみたいだった。


おきにいりだったのに

ひびからじわじわ水がもれ、

イルカはもう泳げなくなっていた。



顔がぽっぽっとあつくなった。

「あずさのばか!」

あずさの肩をおもいっきりおした。

ころんじゃえ!とおもった。


どしんとしりもちをついたあずさは、

一瞬ぽかんと口をあけてから、

大きく息を吸い込み「わぁっ」と泣いた。


あずさの泣き声を聞いて、

「コラ!乱暴するな!!」

ママがきた。


ぼくは腹がたって、悲しくて、

寝室にかけこむと、毛布をあたまからかぶった。


赤ちゃんの頃からのあんしん毛布に包まれてみたけど、

それでも目にはじわじわとなみだがにじんでくる。


ごしごしと目をこすると、床にぼんやりと光るものを見つけた。


手に取るとそれは小さな白いビー玉のようなものだった。


ママが前耳につけていたのを思い出す。

『おばあちゃんがママにくれた大切なものなのよ。真珠といって海の宝石なの。』


「きれい…」

指でつまむ。手のひらにのせて、そっと転がすとその白い玉はピンクやみどり、黄色にも見えた。


「あら、ママのイヤリング片方知らない?」

リビングからママの声が聞こえた。


どきんと胸の奥がとびあがった。


起きたばかりのパパは「しらないなぁ」と寝ぼけた声で返事する。


「やだ、せっかくつけていこうと思ったのに。もうでなきゃ遅刻しちゃう」

パタパタとあわただしいママの足音が聞こえる。


(ママにかえさなきゃ。ぼくもってるよって言わなきゃ)


なのに、くちびるとくちびるがくっついてはなれない。


ママはいつもあずさの味方をする。

まだ小さいから、わからないことがたくさんあるから、教えてあげなきゃって言う。


ぼくには優しく言いなさいとか、乱暴にしちゃダメとか口うるさく言うのに。


きれいにお化粧をしたママが寝室をのぞきこんできた。

とっさにポッケにイヤリングをいれると、あわててあんしん毛布をかぶった。


「…ママもう行くから。パパの言うことよく聞いて。あずちゃんと仲良くお留守番してね」


さっきよりずっとやさしい声だった。

なのに、ぼくはさっきよりもっと泣きたくなってしまった。


「いってきます」とママの声がして、玄関の扉がガチャンと閉まった。


リビングでは「パパ、つまんないよお。あそんでよお」とあずさがしつこくパパに言っている。

あずさはすぐ泣くし、すぐケロッとする。


パパがのっそりのっそり歩いてきて、「さとるも一緒にベランダでシャボン玉でもするかい?」と声をかけてきた。


***


ベランダはぽかぽかいい気持ち。

でもぼくはまだ怒っている。


あずさが吹き棒をくわえ、ふーーーっと強く息を吹く。

シャボン玉はひとつもできない。


いい気味だと思った。


あずさに見せつけるように、ぼくはしんちょうにそっと息を吹き込む。

大きいシャボン玉がぷかり、ぷかりと浮いていく。


「さとるくんおにいちゃんは()()だねぇ!」


うれしそうにあずさは手をたたく。


「ねこ?」


ほらとゆびさすほうには2このシャボン玉が。


「…ねこじゃないよ。にこだよ」


あずさはまだ「に」と「ね」がまざっちゃう。


あかちゃんみたいな話し方だ。


「しゃぼん()()きれいねぇ」


あずさの目は夢中でシャボン玉を追いかける。


透明に青、黄、ピンク、パチン


水色、紫、橙色、パチン


ゆらゆら色を変えて、最後ははじけてきえる。


シャボン玉がきえるたび、

あずさが「おー!!」とか「いひひ!!!」と笑うから、

しかたがないから、ぼくはずっとシャボン玉を吹いた。


あずさの白いほっぺは、ほんのりピンクで、笑うとさらにふっくらツヤツヤする。


「真珠みたい」


そっとあずさのほっぺをさわるとすべすべで、

ポケットの中にあるママのイヤリングも、指でなでるとやっぱりスベスベだった。


どっちもおんなじくらい、きらきらひかる。


「さとるくんおにいちゃん!もっと!」

「うん」


あずさがよろこぶから、しかたがないから、ぼくは大きい大きいシャボン玉を作る。


(帰ってきたらイヤリングをママに返そう。

それからコップがわれて悲しかったこと、あずさとシャボン玉をしたこと、みんなママに話すんだ)


しんちょうにしんちょうに息を吹きながら、ぼくはそんなことを考えた。

お読みいただきありがとうございました。

少しでも兄から妹への眼差しに成長を感じてもらえたらうれしいです。

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