衝突
「……こないね、ソレル」
フィールドに立つルクスが、不安混じりに視線を上げる。
「ええ、これは……まさか、ミラ達も同じ“待ち”に出たってわけね。
あのイリスをどう抑え込んでるのかは謎だけれど……」
「どうしよっか? ソレル、ここで仕掛ける?」
ソレルは静かに扇子をなぞりながら答えた。
「ええ、ルクス。アストラル=レイで光線を展開して。
ミラ達の反応次第で、“読んでいること”ぐらいは把握できるはずよ」
「了解! いっくよー!――《ライトニング・フル⇒ストライク》!」
アストラル=レイを十字に振り抜いた瞬間、フィールドに幾筋もの光の矢が駆ける。
雷撃を纏った閃光が、一直線にイリスとミラを目掛けて飛来する――!
「来たぞ! ミラ!!」
イリスが拳を構え、目の前の光を見据える。
「……わかってる。
でも……これは、**ルクス達自身じゃない。**遠距離からの様子見……ここで手の内を晒すのは、避けたい……」
「へ? ちょっ……えっ!? うちが受け持つの!?」
「イリス……お願い。なんとかして……」
「おいおい! うちの扱い、雑すぎんか!?」
炎のナックルを展開しながら、イリスが笑う。
「しゃーねぇな! 今度こそ決めてやる!――《バースト・スマッシュ》!!」
炎が爆ぜ、拳が咆哮を上げる。
次々と飛来する光線を、炎の重撃で迎撃していくイリス。
だが――
「っち! 相殺してるとはいえ……エネルギー、消耗してんじゃねぇか!?」
攻防の中で、イリスが呻く。光線の数は多く、質も重い。
「ミラ!! 火力が足りねぇ!! 押されるっ!!」
「……はぁ、仕方ない……――《エレメント・ブレッシング》」
ミラが静かに唱えると、彼女の周囲に魔導式の光輪が展開される。
「エネルギー循環、強化完了……お願い、イリス……」
「へへっ、サンキュー! うおおおおおっ!!」
強化されたイリスの拳が、再び煌めく光を粉砕する。
完璧な防御――だった。
だが、それはあくまで“攻撃に姿がない”から成立した結果だった。
「――甘いね、ミラ。イリス。
やっちゃって、ソレル!」
ルクスの瞳が鋭く光を返す。
「ええ……ここまで温存してた分、しっかり魅せさせてもらうわ」
ソレルが静かに詠唱を始めようとした――その瞬間。
(しまった……光線に気を取られて……
ルクスはあくまで“囮”…… 本命は――ソレルの技詠唱……)
ミラの顔に初めて焦りが浮かぶ。
干渉術は現在、イリスに使用中。急な対象変更は不可能。
(だったら……せめてルクスだけでも――)
「ミラぁぁぁ!! させるか!!
――《バーストライク・インパクト》!!」
イリスが紅の拳を突き上げる。地を割る爆熱が、ルクスへと襲いかかる!
「くっ……! だったらこっちも……!
――《ライトニング・イリュージョン》!!」
ルクスのアストラル=レイが煌き、周囲を眩い光の乱舞が包む。
光と炎が衝突する、その刹那――不意に素敵な詩を描いた音色が始まる
めちゃくちゃ暑くてヴァルカニック=コロナで殴られている気分な今日この頃です…