展開
ステラ・シップ《レグルス》――訓練施設
宇宙空間での戦闘が主な彼女らにとって、仮想エネミーや地形環境の調整が可能なこの空間は、まさに“万能の訓練場”だった。
「行きます、展開――アストラル=レイ!」
ルクスの手に集まる光粒子が、旋回しながら一つの形を成す。
それはまるでレイピアのような光の槍――光変質収束法《アストラル=レイ》。
それを握ったルクスは、軽やかなステップで前へと踏み出す。
「はぁぁっ!」
放たれた光の刃が、仮想エネミーを一閃。瞬間、そのボディが閃光と共に消し飛んだ。
「流石だな、ルクス。命中率も上々だ!」
「えへへ〜、教官に褒められると、もっと頑張れる気がします〜♪」
照れ笑いするルクス……だがなぜだ、アストラル=レイの光刃を俺に向けているのは?シンプルに怖いので、やめていただきたい。
「あびゃ!!」
「よそ見しちゃ、ダメだよ……ルクス……」
「も〜!攻撃が来てるなら教えてよ、ミラ!」
「……めんどくさい。それに、そっちが悪い……」
ミラは小さく溜息を吐くと、手をすっと前に出す。
「展開――グリモア=ノクス」
空間に滲むような闇が生まれ、彼女の手には魔導書のような武装が出現する。
ページが勝手に開き、黒い鎖と魔方陣が出現し――仮想エネミーの動きが静止した。
「干渉領域、対象……仮想エネミー……ストップ……と、」
そして一呼吸。静止したエネミーが爆発四散する。
「さ、流石だな……相手や空間、時には味方さえも干渉する《グリモア=ノクス》……」
「……でも、連発は疲れる。……シンプルに、しんどい……」
「なるほど、長期戦には向かないのか……覚えておこう」
そんな風に呟いていると――
「どけどけーっ!!展開――ヴァルカニーーック=コロナァァァァ!!」
エネルギーの塊が、爆炎を纏いながら両拳のナックル形状武装へと変化していく。
紅く眩しい《ヴァルカニック=コロナ》が完成すると、イリスが爆発的なスピードで駆ける。
「アタァァァァック!!」
巨大仮想エネミーが一撃で吹き飛ぶ。
その火力は凄まじいが、発動前後の隙が大きいのは明確な弱点だ。
「へっへー!どうよ、あたしの火力!これならどんなヤツもワンパンでしょ!」
「……火力だけじゃ……戦えないよ……?」
「うっ……ミラ達が何とかしてくれるでしょっ!」
「……後先が思いやられる……」
「まぁまぁ、二人とも落ち着いて」
仲裁に入るルクスの声に、空気が和らぐ。
そこへ、ひときわ冷ややかな声が響いた。
「戯れも必要だけれど……そろそろ私の番、かしら」
ソレルが軽やかに舞いながら、風を引き裂くように前へと踏み出す。
「展開――スターリング=ブリーズ」
宙に双扇状の風刃が展開され、ソレルの周囲に追い風が発生する。
「追憶を
歌え何処と
願えども
ならば受け入れ
歩みは進む」
詠うように舞い踊るソレル。その軌跡が風の斬撃と化し、小型の仮想エネミーを一掃していく。
「ふぅ……まぁ、こんなものかしらね」
「……なるほど。風の流れを操る斬撃……。小型に対しての範囲制圧か……」
それぞれのステラが持つ“個性”が、見事に発揮された。
――準備は整った。
「よし、みんな!いい感じにウォーミングアップできたな!」
俺は全員を見回し、告げる。
始めるとしよう実戦を意識した模擬試験を
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短歌の詠って素敵な響きですよね