疑問
「きょ、教官!?!?なんでここに…!?というか、どうやって……!」
砲撃の余韻がまだ宇宙に残る中、ルクスが驚きと安堵の混ざった声でステラ・シップ《レグルス》に響きかける。
「いやー、それがな?教官室をごそごそしてたら、偶然“近距離転移システム”なるモンを見つけてな」
《偶然》というにはあまりにも都合が良すぎるその説明。けれど――
「……主人公補正ってやつかな?」
笑いながらそう続けたその声に、ルクスは一瞬ぽかんとし、やがて吹き出す。
「あはは……もう、教官らしいや……!」
その明るさに少し救われながら、ふとルクスは口調を改めて問い直す。
「それより……ミラは、無事なの?」
「……ああ。安心してくれ。見つけたときはぶっ倒れてて一瞬焦ったが……ただの寝落ちだったよ。全力で支援を続けてた反動だろうな」
「そっか……よかった……」
ルクスの胸から、安堵の息が漏れる。
だが、そこに一つ、冷静な声が割って入った。
「――教官?」
ソレルがゆっくりと声をかける。
その声は静かで、けれど鋭い。
「指揮を執るはずの立場の人間が、最前線で首を狙われる行為をするなんて。正直、容認しがたいわ」
「ま、まぁそう言うなって。俺もな、ただ見てるだけってのは性に合わなくてな。君たちが大切だから、思わず飛び出してしまった」
「ふうん。……随分と、“他の教官”や、少し前までの貴方とは大違いね?」
ソレルが扇をゆっくり仰ぎながら、わずかに微笑む。
だがその眼差しは、その奥に潜む“何か”を探るようだった。
「まぁ、これからはちゃんと控えるさ。次からは、ちゃんと“後ろ”から支えるよ」
「――期待しているわ。教官」
ほんの一瞬だけ。
ソレルの瞳に映ったレグルスの光が、まるで何かを試すようにきらめいた。