合流
「なんだあの爆発!? ソレル、大丈夫か!!」
イリスが炎の尾を引きながら突撃しつつ、食い気味に叫ぶ。
「って、なにこのデカさ!? ……ぶつかるぅぅぅぅ!!」
巨大なダスターが目前に現れたその瞬間――
寸前で、彼女の身体が風の壁に押し返された。
「追憶を
歌えどこぞと
願えども
ならば受け入れ
歩みは進む」
――《ウィンド・ブレイク》
巻き起こる嵐のような風が、イリスとダスターの間を切り裂く。
衝突寸前だったイリスの勢いを、柔らかく、しかし確かに止めていた。
「中々に不用心ね? まぁ、それも貴女らしいけれど」
ソレルが扇子を片手に、余裕の微笑みで立っていた。
「ソレル……助かったぜ!! にしても……これ、一人でやってたのか!? さっすがだな!」
「えぇ、まぁ……でも、“倒せては”いないのだけれどね」
ソレルは微かに残念そうに目を伏せ、視線をダスターへ戻す。
「それに……“一体だけじゃダメ”なのよ」
「……? つまり、どういうことだ? とりあえずぶん殴ればいいってことだろ!? なら任せろ!!」
イリスのヴァルカニック=コロナが爆炎を帯びてうなる。
「ちょっ……それ、今はやめたほうが――」
「うぉぉぉぉ!!! ――《バースト・スマッシュ》!!!」
ソレルの制止も聞かず、イリスが爆炎の拳を繰り出す!
その直撃を受け、融合ダスターの身体が豪快に吹き飛び、爆煙が広がった――
「よっしゃ! いっちょあがり――!」
そう言いかけたその刹那。
爆煙の奥から、再構成されるように“肉片”が蠢き、再生する”ダスターの姿が見える。
「なっ……マジかよ……」
イリスが目を丸くする。
「言ったでしょう? “一体だけ倒しても意味がない”って」
ソレルの言葉に、イリスは一瞬硬直し、それから苦笑いを浮かべる。
「なるほどな……2体同時に潰さないとダメってやつか……こりゃ面倒だな」
肩をすくめたイリスの背後から、息を切らした声が届く。
「お待たせぇ……イリス、早い……ソレルも無事でよかった……」
ルクスが駆け寄ってくる。顔には疲労と緊張がにじんでいたが、それでも笑顔を忘れていなかった。
「やれやれ、やっと勢揃いねぇ……ここからが、本当の地獄よ?」
ソレルが、再生しきったダスターに視線を投げながら、微笑を浮かべる。
その巨大な怪物は、まるで意思を持つかのように歪んだ笑みを形作っていた――