出撃
「あれが、ダスター……」
レグルスのすぐ数km先。
原型すらも掴めない異形の物体が、不規則な揺らぎを宇宙に放っていた。
質量も温度も、生命反応すらも定まらない、見るだけで本能が拒絶を叫ぶ存在。
「出ましたね、教官……やっぱり、この時間帯だけはどうしても慣れません……」
ルクスが少し不安げに呟く。
いつも明るい彼女の声色に、微かに震えが混じる。
ステラたちは、今からこの母艦を離れ、あのダスターとの直接戦闘へと赴く。
どうやって呼吸できているのか、そもそも“生きていられる理由”すらよく分かっていない。
だが、今はそんな疑問に構っている余裕はない。
「きっと大丈夫だ。この戦いが終わったら、みんなでパーティーだな」
不安を打ち消すように、声を張って言い放つ。
「そろそろだよ……教官……出撃許可を……」
ミラが静かに、いつもと変わらぬ口調で告げる。
この言葉が意味するのは、“いよいよ本番”ということ。
それは、死地に赴くという現実でもある。
けれど、止まる理由はどこにもない。
だから俺は、真正面から彼女たちに告げる。
「ルクス・アストリア、ミラ・ノーチェ、イリス・ヴェガ、ソレル・アルティナ――
これより出撃を許可する。……必ず戻ってこいよ、みんな」
「まっかせな! うちが行くからには、全部まるごと燃やしてきてやるよ!」
イリスが元気よく胸を叩き、笑う。
「まぁ……なんとかなるんじゃないかしら。どんな敵でも、風は味方してくれるものよ」
ソレルが優雅に扇子を仰ぎながら答える。
「絶対に、大丈夫です。みんなで戻ってきましょう、教官も……準備、ありがとう」
ルクスが笑顔で敬礼を送ってくる。
「……問題ない。帰ってきたら……あのプリン食べる……」
ミラがぽつりと呟く。
「よし、行って来い――!」
「「「「出撃開始!」」」」
4人の声が宇宙に木霊し、眩い光と共にその姿を漆黒の空へと投じていく。
これからが――
《ステラ・ライト》という名の、戦いの始まりだ。
お待たせしました、ついに次こそ戦闘です