第21話「ベッドに一緒に入って、何もしない男性って──いるの?」
金曜の夜。いつものカフェ。
美里が珍しく、自分から話を切り出した。
「ねえ、亜紀。……ちょっと聞いていい?」
「ん? なに?」
「……ベッド、一緒に入って……何もしない男性って、いるのかな?」
亜紀、ラテを吹きかけそうになってストップ。
「ちょっと待って? どのくらい“何もしない”?
手を繋ぐとか、ちょっと抱き寄せるとかもナシ?」
「……うん、たぶん“完全に無の夜”って意味」
「美里、それ……正直言って、かなりレアケース」
亜紀のリアルな持論
「ぶっちゃけ、ゼロじゃない。
ちゃんと“相手の心を大事にしたい”って人もいる。
でも……“しない”じゃなくて、“しない努力をする”って感じだと思う」
「……努力?」
「そう。だってさ、普通にさ、好きな人と一緒に寝るって、
そりゃ人間だから“触れたい”ってなるよ。でもそのとき、
“自分より相手の安心を優先できる人”じゃないと無理」
美里、カップを両手で包みながら
「そういう人……この世にどのくらいいるんだろう」
「たぶん、10人に1人。
いや、100人に1人かも。
でもね、その1人を見つけたら、美里は絶対幸せになれると思う」
モノローグ(美里の胸の内)
(“何もしない人”って、たぶん“何かできる人”なんだと思う)
(そのうえで、私の不安を“何もさせない”ことで受け止めようとする人)
(……それって、簡単にできることじゃない)
ノート(今日の書き出しはちょっと震えた)
✅ 疑問:「何もしない男性って、いるの?」
✅ 答え:いる。でも、それは“覚悟のある優しさ”
✅ 自分の願い:
→“したくない”じゃなくて、“しないことを選んでくれる人”に出会いたい
第24話「“100人に1人”を探すには、どうすればいいんだろう?」
土曜の午後、洗濯機の音を聞きながら、美里は考えていた。
「添い寝してくれるだけの人」
「それができる男なんて100人に1人」
「じゃあ、その1人を探すにはどうすればいい?」
(マッチングアプリ? でもあんなの“添い寝OK”ってプロフィールに書いてある男、絶対信用できない)
(合コン? 今さら“趣味は映画です”って自己紹介してる35歳に、添い寝の価値観なんて伝わるの?)
(友達の紹介? 「美里ちゃん恋人探してるらしいよ」って先にバラされてる時点で無理ゲー)
亜紀とのやりとり(LINE)
美里:
「100人に1人を探す方法、真剣に考えてる。
まじで、どこに落ちてる?」
亜紀:
「その辺に落ちてねーよ笑。
でも“落ちてない”からこそ、
“じっくり観察して見つけるしかない”ってことかもね」
モノローグ:美里の気づき
(たぶん──“探す”っていうより、
“育てていく”に近いのかもしれない)
(100人に1人の人って、
最初から添い寝できる安心感持ってるわけじゃなくて、
こっちが“信じてみようかな”って思える時間を一緒に過ごせる人なんだ)
ノート(今日のテーマは「信頼は“出会い”じゃなく“育ち”」)
✅ 100人に1人の探し方:
→一瞬でわかる人じゃない。
→“この人、違うかも”って思ったときこそ、ちゃんと話してみる
✅ 出会い方より、“一緒に過ごした時間の質”を大事に
✅ 結論:「この人なら安心できる」って思えるまで、ゆっくり育てていくしかない
第26話「このままじゃ、ずっと“触れられない”ままかもしれない」
洗面所の鏡を見ながら、美里はぽつりとつぶやいた。
「……いや、ほんとにそれでいいの?」
(なにもしない人が欲しいって言ってたけど……
それって、“恋の入口でずっと足踏みしてるだけ”じゃない?)
(キスも、抱きしめるのも、
その先だって……知らないまま、
“安心”だけ守ってたら、私──何も始まらないんじゃない?)
夜、ノートを開く。
「安心」と「愛されたい」の境界が見えなくなってきた。
✅ 私は「安心」が欲しい
✅ でも「恋愛」って、きっとどこかで「一歩踏み込むこと」なんだ
✅ 問題:じゃあ、**“安心しながら触れられる関係”**って、存在するの?
翌日の亜紀との会話
「……ねえ亜紀、添い寝だけじゃ、恋って始まらないかな?」
「うーん、それは……相手がどういう“なにもしない”かによる」
「え?」
「“なにもしない”って、
“今はしないけど、あなたが望んだら進みたい”ってことかもじゃん。
“触れない勇気”と“触れたい気持ち”のバランスを取れる人、
それが本当の“いい男”だと思うよ。」
モノローグ(心のなかの、矛盾と希望)
(そうだよね……私、
“ずっと触れられたくない”わけじゃない)
(ただ、“私の気持ちを置き去りにして触れられるのが嫌”だっただけ)
(キスだって、ほんとは興味ある)
(その先も、……正直、想像してる)
(じゃあ、“怖くない人に触れてもらう”未来を、信じてみたい)
ノート(今日のテーマは「触れられること=愛されること、ではない」)
✅ 自分の心:ただ触れられるのは怖い。でも、何も知らずにいたいわけじゃない
✅ 求める相手:
→「今は手を繋ごうか?」って聞いてくれる人
→「それでも無理なら、待つよ」って笑える人
✅ ゴール:「心から安心して、心からときめくキス」──それをいつか
第27話「やっぱりキスも、そのあともしたい──それが“私”の本音」
カフェ。窓際。
アイスラテの氷がカラカラと音を立てるなか、
美里はノートを閉じて、亜紀に真正面から言った。
「……ねえ、わたしさ」
「うん」
「やっぱり、キスもしたい」
「うん」
「そのあとも……したい」
「……おお」
亜紀、一瞬真顔。すぐ笑顔。
「よし、それはよく言った」
「えっ、引かないの?」
「引くわけないでしょ。恋愛したいって言ってる人が“キスしたい”って何が悪いのよ。」
「だって、ほら、ずっと“添い寝で満たされたい”とか言ってたから……」
「いや、それはそれで素敵よ。でも、それって“心の入口”なだけで、
美里が目指してるのは、ちゃんと抱きしめられて“ひとりじゃない”って実感する恋なんでしょ?」
「……うん、たぶんそう」
モノローグ(心の奥にあった“本当の欲”)
(触れられるのが怖いわけじゃない。
“どうでもいい感じで”触れられるのが怖かっただけ。)
(本当は……
キスしてほしいし、
名前を呼ばれながら、抱きしめられてみたい)
(好きって言われながら、
あったかい布団の中で、
“美里”って呼ばれるのを聞いてみたい)
ノート(今日ははっきり書いた)
✅ 私の本音:「キスもしたい」「その先も、好きな人とならしてみたい」
✅ 求めるのは:安心じゃなくて、“ちゃんと大事にされること”
✅ 次のステップ:
→ 触れてくる人じゃなくて、**“触れたくなる気持ちを育ててくれる人”**を選ぶ
第28話「図書館で、二、三度挨拶した人なんだけど──って相談、ありですか?」
いつものカフェ、窓際の席。
亜紀がメニューを閉じた瞬間に、美里がそっと言った。
「……あのさ」
「うん?」
「“その人”なんだけど……図書館で、二、三度挨拶しただけの人なんだけど……」
「……は?」
「いや、わかってる。まだ何も始まってない。
でもなんか、気づくとその人のこと考えてるの。
たぶん、私……その人とキスしたいとか、思ってる……かも」
亜紀、目を丸くして
「ちょっと待って? 二、三度しか話してないんでしょ?」
「うん。ていうか、話してもない。“こんにちは”と、“おつかれさまです”くらい……」
「美里、恋はじまってます(即答)」
会話:美里の不安と、亜紀の断言
「……でもさ、相手にとって私は“ただの図書館の女”だよ?」
「それで十分じゃん。逆にまだノーダメージの状態で好印象って、ポテンシャル爆発だよ」
「いやいやいや、現実的じゃないよ……」
「美里、好きっていうのは、“現実”じゃなくて“可能性”を見ることなんだよ」
モノローグ:美里の頭の中
(たしかに“何も始まってない”。
でも、図書館で目が合うたび、
“この人、話しかけてくれたらいいのに”って、ずっと思ってた)
(逆に言えば、その人に“触れてほしい”って思えるくらい、
私はもう心を許し始めてるのかもしれない)
ノート(今日の見出しは太文字)
図書館の彼、好きかもしれない。
✅ 接点:挨拶だけ。でも毎回、記憶に残る
✅ 感情:触れてみたい・近づきたい
✅ 今後:会う回数を増やす → 声をかけてみる → “共通の話題”探す(本・静かな時間)
亜紀のアドバイス(まっすぐに)
「じゃあさ、図書館で、一冊おすすめの本を差し出してみなよ。
“よかったらどうぞ”って。
それだけで、彼の中の“美里”が、“気になる女性”に変わるよ