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第3話「恋は後回し。私、まずは自分を整える。」

第3話「恋は後回し。私、まずは自分を整える。」


月曜の朝。

久々に早起きして、髪を巻いてみた。

「あれ……わりと、悪くないかも」

昨日まで“ボサッとひとつ結び”だった髪が、ちょっとだけ気分を変えてくれる。


美里の「女磨き・ステップ1」:外見より、まず“自分時間”を整える

朝ごはん、コンビニじゃなくて“白ごはんとみそ汁”にしてみた

スマホを握る時間より、“本”に手を伸ばしてみた

「話しかけてくれる誰か」を待つ代わりに、“自分と話す時間”を持ってみた

「自分って、こんなに機嫌に左右されるんだ……」

「でもそれを“誰か”に埋めてもらうんじゃなくて、自分で整えてみたい」


美里の“女磨きリスト”がノートに増えていく

✅ 週1で図書館に通う

✅ スキンケアを“楽しみ”に変える

✅ 会社帰りに鏡を見て、「今日の私は、がんばった」って言う

✅ 無理に恋愛しない。でも、チャンスがきたら逃げない


亜紀とのランチ

「なにそれ。美里、めっちゃイケてんじゃん最近。

急に肌の調子良くなってない?」

「え? わかる?」

「うん。“恋してる人”の顔じゃないけど、“自分に集中してる人”の顔してる」

「それ、いい意味?」

「……最高の意味」


夜の独白(婚活ノートじゃなく、ただの自分日記に変わり始めた)

“恋に焦ってた自分”を、今は少しだけ抱きしめてあげたい。

たぶんあの頃の私は、「誰かに選ばれたい」じゃなくて、

「自分で自分を選べなかった」んだ。

でも今は、

ちゃんと私を“いいじゃん”って言える瞬間が、少しずつ増えてる。

第5話「またまた勘違い──だから言ったでしょ、トレーナーには気をつけて」


ジム通い2日目、脚ガクガク。

なのに……笑顔で手を振って近づいてくる吉野トレーナー。

「美里さん、今日も来てくれて嬉しいです!」

(……“嬉しいです”とか、軽率に言わないでほしい。

私、そういうの、真に受けるから)


美里、内心ツッコミまくりながらも鍛える

「フォーム、昨日より安定してます! 覚え早いですね」

(また褒められた……いや、これ営業トークだよね? でも嬉しい)

「筋トレって、人生と似てるんですよ。

苦しいときって、成長してるときなんです」

(なにその名言。ずるい。あと今、たぶん惚れそう)


ロッカー室・亜紀からのLINE

? てかさ、言っとくけど

トレーナーって“勘違い誘発職業”第1位だからね。

プロだから、誰にでも優しいし笑顔。

ちょっとでもドキッとしたら、それは恋じゃなくて“筋肉反応”。

(うっ……痛い……それ、正論すぎる)


美里、ジム後のカフェで自問する

「……なんで私、また“好きかも”って思ってるんだろう」

「いや、これ違う。冷静になれ。

“人としてかっこいいな”って思っただけ。

それをすぐ“恋愛対象”にするのは……やっぱ、私の悪いクセだ」


婚活ノート(再び名前戻してきた)

【今日の気づき】

✅ トレーナーさんの笑顔は“お仕事”

✅ 「惚れそう」って感情は、“憧れ”や“認められた嬉しさ”とよく似てる

→“優しくされた=好き”の変換、いい加減卒業したい

【書き添え】

亜紀、ありがとう。あんたのツッコミが、たぶん私のバランスボール。


第6話「見ないようにしてるのに、気づけば目で追ってる」


平日夜、ジム。

いつもより少し遅い時間。

照明は落ち着いていて、鏡に映る人もまばら。

美里はストレッチマットの上で深呼吸。

隣には、相変わらず爽やかすぎる吉野トレーナーが。

「今日、すごく姿勢きれいですよ」

「え……あ、ありがとうございます」

(もう慣れてきた。これは“営業スマイル”だって。

わかってる。わかってるのに──)

……“つい、目で追ってる”。


マシンエリアに移動中

吉野が他の女性にフォーム指導している姿を見る。

笑顔で、優しく、そして近い距離感。

(そっか、私にもああやって教えてたんだ)

(でも、なんか悔しい。なんでだろ。

彼が優しいのは“仕事”なのに──私、また勘違いしようとしてる?)

それでも、美里の視線は知らず知らず吉野の方へ向いてしまう。


ふと、目が合う。

「……あ、美里さん!」

「え?」

「無意識に、見られてるなーって思ってたんです。

さっきから何度か目が合ってて。集中力すごいなって」

「そ、それは、えっと……!」

慌てて視線を逸らす。

なのに、顔がほんのり熱くなる。

(なんで……なんでこうなるの)


夜・帰宅後、美里の自問自答

化粧水をつけながら鏡を見る。

「私……まだ“自分の変化”に浮かれてるだけなのかな」

「“褒められる”ことに飢えてたせいで、

ちょっと優しくされただけで“好き”って錯覚してるだけ……?」

でも、胸のどこかが言う。

“でもあの目、たしかに私を見てたよね?”


アップデート日誌(元・婚活ノート)

✅ ジム継続:3週間

✅ 食事記録:プロテインバーは好きじゃない

✅ ときめき記録:吉野トレーナーの視線にドキッとする

→まだ“好き”とは言えない。でも、彼の声が頭に残ってる。

第7話「目が合うって、それって私がただ見てるだけじゃない?」


翌朝・通勤中の地下鉄

美里は吊り革につかまりながら、ぼんやり昨夜のジムのことを思い出していた。

「目が合った」

「っていうか、何度も目が合った」

(でも、よく考えて?

目が合ったって、相手も私を“見てた”とは限らないよね?)

(“見てる人と目が合う”なんて、当たり前じゃん……)


職場の休憩室・ふと目が合った営業部の西村くん

「あ、美里さん」

「……あ、西村くん、お疲れさまです」

(うん、これこれ。

目が合うだけなら、別にそれで恋が生まれるわけじゃない)

(たぶん昨日の私は、“見てる自分”に酔ってただけ)

(そして“見返された”瞬間に、

勝手に“これは運命だ”って思いたかっただけ)


帰宅後・ノートに書くひとこと

【今日の気づき】

目が合ったからって、それが恋の証拠にはならない。

むしろ、“見てるのは私だけ”だったのかもしれない。

【冷静な私へ】

昨日と今日で、考えがまるで違う。

でもそれでいい。

少しずつ、“ときめき”と“思い込み”を見分けられるようになりたい。


モノローグ(寝る前)

「でもさ……」

「もし、“私が見てること”に気づいて、それを“うれしい”と思ってくれる人がいたら……」

「そんな人に、いつか出会えるのかな」

第9話「再会? あれは私が“会いに行った”だけじゃん。」


図書館の帰り道。

桜の花びらが少しずつ舞い落ちている。

でも美里の心の中は、それどころじゃない。


モノローグ(帰り道・スニーカーの音だけが響く)

(再会……って、言い方よくない?)

(偶然とか運命とか、そういうのにしたい気持ちはわかるけど──)

「私、自分で“会いに行った”んじゃん。」

(あの席に、誰もいないのを見てホッとして、でもがっかりして、

結局……“彼を探してた”の、私じゃん。)


帰宅後・ソファに倒れ込む美里

(ほんと私、扱いきれないくせに、年下ばっか気にしてる)

(ジムのトレーナーもそう。

図書館の男の子も。

どっちも“恋になりそう”ってだけで、自分の感情が先走ってる)

(私にそんな余裕ある? ないよね?)


自問自答の夜

「たぶん私、“恋が始まるかもしれない”っていう

“ときめきごっこ”をしてるだけなんだよ」

「でも、その先の責任とか、本気の覚悟とか……持てるのかな、私」


ノート(もはや婚活でもアップデートでもない。もはや、日記)

【今日の反省】

会いに行っただけのくせに、“偶然の再会”って浮かれてた自分が恥ずかしい。

彼は何もしてない。ただそこにいただけ。

それを勝手に特別にしてるのは、私自身。

【これから】

年下とか年上とかじゃなくて、

私が“向き合える人かどうか”で考えたい。

「年下だからドキドキ」

「偶然だから嬉しい」

そういう思い込みから、そろそろ卒業。

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