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第56話 「朝が来るまで、あなたをもっと知りたい──気づいたら寝てた私」

夜9時半、彼の部屋。

ちょっとドキドキしていた。

映画を観ながら、距離が近づいていく。

「このあと、どうなるの?」と胸がざわつく。

彼がそっと手をつなぐ。

その瞬間、美里の心臓は跳ねた。

(わーわーどうしようどうしよう……!)

(なにこの手の温度……っていうか、あれ?ちょっと眠……)


それから5分後。

「……美里さん?」

返事なし。

「……あれ?」

美里、寝ていた。


彼、そっと笑って言う。

「あー、緊張してたんだろうな」

「……かわいいなあ」

そして、そっとブランケットをかける。


翌朝。

美里、ゆっくりと目を覚ます。

「ん……んん……?」

「え、ここ……え、ええええっ!?!?」

目の前に、彼。

しかも完全に日が昇っている。


「うそでしょ……私、なにかした? してないよね!? してないはず!!」

「え、記憶ない……マジで映画の途中で落ちた!?」

「あのあと、どうなった? なんにも覚えてない……!!」


そこに、彼が現れる。

「おはようございます」

「っ!? お、おはようございますっ」

「ぐっすりでしたね」

「え、えっと……あの、ほんとすみません……」

「大丈夫ですよ。何もしてません」

「えっ……な、なにも……?」

「はい(笑)。爆睡してたので、ブランケットかけて寝室まで運びました」

「あ、あああ、ありがとうございます……」


モノローグ(美里の心の声)

(なんだこれ。

恋人になった次の日の朝に

“記憶がない”って……一番やっちゃだめなやつじゃない?)

(……いや、でも、ちゃんと何もされてないってわかった)

(むしろ、すごい丁寧に扱ってくれてる)

(っていうか、爆睡する私って……)

「……安心しすぎてたのかな、私」


ノート(恋の“進展しなかった”夜)

✅ 美里:爆睡(まさかの熟睡記憶なし)

✅ 彼:そっと寝かせてくれた=信頼ポイントアップ

✅ 恋の学び:“何もなかった夜”こそ、関係の深まりになる

✅ 確信:この人、ちゃんと“好きになってよかった人”


第58話

「シャワーあがり、忘れものひとつ──ちょっと待って、わたし今、何も着てない!?」


休日の午後、彼の部屋でお泊まりデート。

美里は、いつもより気合いを入れて朝からメイク。

ヘアケアも念入りにして、

「今日はもうちょっと女らしく…♡」なんて思っていた。


けれど――事件は、シャワー後に起きた。


「美里さーん、飲み物いる?」

「あ、ちょっと待って! タオル、どこだっけ!? ……あ、そっち置いたまま……!」

急いでバスタオルを巻きつけ、

髪のしずくをぽたぽた落としながらリビングへダッシュ!

が──

彼「……っ……」

彼、フリーズ。

美里「はいこれ……タオ──」

(え……彼の目線、なんかおかしい)

美里「……え? あれ? え?」

その瞬間、美里の脳内に雷が落ちた。

(ええええええ!?!? 下着つけてない!!)

(わたし今、素でバスタオル1枚!!!)

(ちょっと待って、これ……痴女じゃん!!!)


モノローグ(心の叫び)

(え、なにこのシチュエーション? ドラマ? AV? 夢?)

(ていうか、夢なら目覚めて!)

(しかも彼、なんも言わないでガン見してるし……もう、死にたい……!)


美里、全速力でバスルームへ戻る。

ドアの向こうで、しばらく崩れ落ちる。

「わたし、終わった……」

「もうこの家から出られない……」

「“色気ある”とかじゃなくて、“油断の極み”だよこれ……!」


数分後。

ようやくパジャマを着てリビングへ。

美里「……あの、さっきのことは、忘れてください」

彼「……あれは、忘れられません」

美里「やめてえええええ!!」

彼「でも……ちゃんとバスタオルは、セーフゾーンでした」

美里「意味わかんない!!!」

ふたりで爆笑。


ノート(やらかしも思い出)

✅ 美里:下着つけ忘れ=恋人あるある(初級編)

✅ 彼:無言のまま固まる → 最後は笑いで着地

✅ 関係の深化:“恥ずかしい”を笑える関係

✅ テーマ:「素」でいても、ふたりなら大丈夫

モノローグ(夜、ベッドの中で)

(好きな人の前で“完璧じゃない自分”を見せてしまった日)

(でも、笑ってくれたから……ちょっと安心した)

(そして今夜は、ちゃんと下着つけて寝ます)

第59話

「慣れてきた頃がいちばん、気をつけないと」


交際2か月目。

一緒にいることが自然になって、

手をつなぐのも、寝る前に「おやすみ」を言うのも、

当たり前になってきた。


でも、美里はふと思う。

(最近、彼から「好き」って言われてないな……)

(最初のころは毎日のようにLINEしてくれたのに)

(最近は、既読がつくのに2時間以上かかることもある)

(……慣れてきたから? それとも、私だけ“熱”が残ってる?)


金曜の夜、いつものカフェ。

仕事終わりで合流して、テーブルに向かい合うふたり。

美里「……今日、忙しかった?」

彼「うん、会議詰めで」

美里「LINE、途中で止まってたから……」

彼「ああ、ごめん。確認したんだけど、返すタイミングなくて」

美里「……そっか」

沈黙。

コーヒーの香りがやけに苦く感じる。


モノローグ(美里の心の声)

(忙しいのはわかってる)

(でも、私だったら、“返せなかった理由”をもっと伝えると思う)

(こういうの、不安の種になるんだよね……)


美里「なんかさ、最近……」

彼「うん?」

美里「……私ばっかり、“好き”って思ってる気がして」

彼「え?」

美里「なんでもない。気にしないで」

彼は何か言いかけたけれど、言葉を飲み込んだ。


帰り道。

手はつないでいるのに、気持ちがすこし離れてる気がする。

でもそれを言葉にする勇気も、今日は出ない。


ノート(慣れと油断)

✅ 交際2ヶ月目の“落ち着き”が、安心と不安を同時に運ぶ

✅ 美里の揺れ:「好き」の温度差/LINEの頻度/小さな沈黙

✅ 彼の態度:悪気はないけど説明が足りない=“すれ違い”の芽

✅ 恋の真理:「慣れ」は、関係の強さを試されるフェーズ


モノローグ(夜、布団の中)

(この関係、ちゃんと続いていくのかな)

(私たち、“つきあってる”ってだけで、ほんとに“通じてる”のかな)

(……明日、ちゃんと聞いてみようかな。彼の気持ち)

第60話

「何もしてないから、すれ違ってる? それとも、彼も──」


週末、静かな図書館の一角。

ふたりで隣に座っている。

ページをめくる音と、空調の音だけが響く。

でも、美里の頭の中は、読書どころじゃない。


モノローグ(心の中)

(交際して2ヶ月。

キスは何回かしたけど、その先には進んでない)

(夜、一緒に過ごすこともあったけど、彼はいつも優しいだけ)

(わたしが“待ってる”って、気づいてない? それとも……)

(彼も、経験ないの?)


美里は、ちらりと彼の横顔を見る。

穏やかで、優しい雰囲気。

でも、恋人としては――正直、進みがゆっくりすぎる。


その夜、亜紀にLINEする。

美里「ねえ、彼って、もしかして……チェリー?」

亜紀「ちょwww なに突然(笑)」

美里「いや、ちょっと真面目な相談で」

亜紀「ふむ。じゃあ冷静に答えると、

“美里が押せば、向こうも来る”って男なら、

とっくに来てると思う」

美里「たしかに……」

亜紀「でも来ないなら、“来方”を知らないだけって可能性、大」

美里「……それってつまり」

亜紀「うん、同志の可能性あり」


美里、スマホを握りしめて考える。

(私、彼が“慣れてない”ってわかったら、引く……?)

(……いや、ちがう。むしろ、ちょっとホッとするかも)

(同じなんだ。私だけじゃないんだって)


翌日、彼と公園のベンチで。

少し肌寒い春風が吹く午後。

勇気を出して、美里は聞いてみた。

「……ねえ、あのさ」

「ん?」

「この前、泊まったときも、何もなかったじゃん?」

「うん」

「……したこと、ないの?」

彼は、少し驚いたように目を見開いた。

けど、そのあと小さく笑って、うなずいた。

「……うん。ない」

「……そっか」

「美里さんとちゃんと向き合いたかったから、

“そういう雰囲気”にしたら、ちゃんとできるか不安だったんだ」

「……正直で、ありがとう」

「ごめん、待たせてたよね」

「ううん、でも……私もちょっと不安だった」

「じゃあ、これから一緒に考えていこう」

「うん。……最初は、手をつなぐとこから、もう一回」


ノート(進まない理由の正体)

✅ すれ違いの原因=「進まない恋」に不安

✅ でも理由は、彼も不慣れだっただけ

✅ 美里の気づき:「何もない」の裏にある優しさや不安

✅ 新たな関係性:一緒に進んでいく“同志”としての恋


モノローグ(夜、美里の寝る前のつぶやき)

(恋って、“慣れてる人同士”だけのものじゃない)

(不器用でも、ぎこちなくても……一緒に育てていくものなんだ)

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