あなたのはどんな形?
おにぎりは関東では三角、東北では丸形、西日本は俵型が多いようです。
いなりずしは関東では俵型、関西では三角型が一般的です。
おモチを単体で食べる場合、関東では角餅、関西では丸餅が多いです。
このように同じ食べ物でも、地域によって形が異なる場合があるようです。
森の中で満開の桜が咲いている。
小さなタヌキくんと、頭に王冠のようなものを乗せた白いおサルさんがいる。
ふたりの前のお皿には二種類の桜餅が置かれていた。
ひとつは丸い形で、もうひとつは円筒形であった。
「んとね。白猿さん。ぼく、桜餅って丸いと思ってたの。円筒形のもあったんだね」
「子狸くん。円筒形のは関東風だな。うすい板状の生地でアンをくるんで、桜の葉で巻いたものだ。生地は小麦粉が主に使われてて、クレープみたいな感じだな」
「そうなんだ。関東風はもち米じゃないんだね」
「商品によっては小麦粉と合わせてもち米も入っている場合もあるぜ。もともとは江戸時代に今の東京都の長命寺というお寺の門番が考案したらしい。関東風は長命寺の桜餅と呼ばれることもあるぜ。それに対して、丸い関西風は、道明寺の桜餅と呼ばれることもあるんだ」
「道明寺? ぼく、知らなかったの。そういう名前だったんだね」
「丸い桜餅を道明寺と呼ぶのは関東地区が多いかもな。長命寺と区別しているんだ。関東以外の全国区では、桜餅というと丸い場合が多いから道明寺の名は知られていないこともある」
「丸い方も、お寺の門番さんが創ったの?」
「いや。道明寺で作られたのは、桜餅の原料の方だ。もち米で作った『道明寺粉』という保存食があるんだ。一般に売られている丸い桜餅では、原材料に道明寺粉と表示されている場合もあるぜ」
「同じ名前の食べ物でも、地域によって形が違うんだね」
「そうだな。地域によっては、色付けされていない白い桜餅や、円形の薄皮でアンは挟んだ半円形の桜餅もあるようだぜ」