09. Don't Tell Me You Love Me - 私が想っているほど、愛されてはいない -
目を覚ますと、病院のベッドの上でした。大部屋の中で、うーうー唸っている兵士が沢山寝ています。
「おお!魔法少女は死してなお、復活して戦う。聞いた通りじゃ!」
はあ? 何言ってんすかー? この、おっさん。さっき、塹壕の中で、きゃんきゃん吠えてた陸軍大将じゃないですか。運用している兵器の仕様も確認していないなんて。敵に鹵獲された方がマシだったのかも。
魔法で空を飛んだぜ! やった! と思ったのも束の間、マッハで飛んでいく僚機の衝撃波に煽られたんですかね? あっさり墜落死です。ボロボロのグチャグチャになったので、復活するまでに時間がかかったのでしょう。その間に、他の異世界に転生していた気がするのですがー。
起きたら、またドンパッチやってる剣と魔法の世界で、猫耳少女でした。
つまり。あれかー。出戻ったかあ。
行った事のある世界にで戻った事は、今までにもありました。
IT奴隷時代も、横須賀プリズンには2回出戻りましたよ。2回目は1回目より給料が良くて3倍もありました。3回目は、2回目の1.2倍。私、どんだけ抜かれてたの?
いえ、実は知っています。お給料増やしたくて、自分で自分の担当営業やったので。自分で、自分の注文書と注文請書を書きました。
月120万円が、4社も間に挟んだ事で、14万円まで減ってました。最初の120万円は喫煙室で課長さんがバラしてくれました。最後の自社が最悪で、65万円も貰ってました。
私は中抜きする側に回ろうとしました。奴隷になるよりも奴隷商人になるのです。
IT奴隷商人は簡単なお仕事です。業界界隈のアヤシイ飲み会で名刺交換すれば、左から求人案件が流れてきて、右から求職スタッフが流れて来ます。それを組み合わせるだけ。在庫を持つ必要もないし、オフィスだって不要ですね。
でも、起業の準備をしている最中に、リーマンショックが起きて私は死にました。
私は1度死んだので、2階級特進だそうです。やったー! ククッ、チョロい。死ぬだけで出世。将校になる日も近い。
あーでも、ここに来てから1度もお給料もらってませんねえ。だって売られた奴隷ですからね。
まあ、いいや。憧れの魔法世界じゃないですか。
「では早速、出陣してくれたまえ」
うっはー。まじブラック。IT奴隷と同じですよ。なんだ、馴れたもんじゃないですか。
「突撃!にゃああ!!」「ふんにゃああ」「ほぎゃああ」「ブヒッ」
2階級特進のせいなのか、いきなり隊長です。それも最前線の突撃部隊。有象無象の隊員を12頭も連れて突撃を決行します。未経験なのに、いきなりリーダー。IT業界あるあるです。いつもの事です。部隊全員が、猫魔獣のはずなのに、なんかブタ鼻少女混ざってませんか?
猫魔獣は猫耳、猫頭、猫尻尾とバリエーションはありますけど。魔獣というだけあって、全員が魔法少女です。魔法幼女かも知れない。
リーサル・ウェポンだけを12頭も集めた部隊。これは最終決戦のつもりなんでしょうか? まだ国境での小競り合いだと言うのに。まあ、現場の兵器は戦術は気にしても、戦略までは気にしても無駄ですからね。戦地で死に逝くのみですよ。
問題は、突撃手順書がゴミクズってことでしょうね。手順書は、せめて図解入りにして欲しかったわー。こんな文字だけぎっしり詰め込んだ手順書なんか作ってたら戦争負けますよ?
なんですかー? 「問題が無ければ次の工程に進む」って、問題の基準が分からぬわー。何が問題なのか具体例が1ビット記載されていない。主観的には出撃前から問題しかありませんけど?
我々の航空戦力は魔法幼女隊ですが。敵の航空戦力は、レシプロエンジン搭載の戦闘機みたいですね。ふむん? 戦闘機は護衛で、本命は爆撃機ですか。このまま、進むと何処なのか知らんけど。もしかしたら、最初に居た川崎市沿岸みたいな工業地帯なのかも。
これは阻止せねば。いや、阻止すれば階級が上がりませんかね。勲章だって貰えるかも。授与されるメダルはチョコがいいですね。
魔法少女隊が、ホウキに跨がり大空を翔ける。
デルタ陣形っていうんですかね? 私がセンターで、両翼に4頭づつが、少しずつ後方にオフセットしながら並んでいます。渡り鳥みたいな感じ? 3頭は遊撃と斥候で自由にさせています。
はてー? ここからどうするのん? おいどんはシステムエンジニアなんで、航空戦の戦術なんて知らんちんよ?
板野サーカスなら、ここでズボボボっと大量のミサイルを発射することろですね?
真面目ミサイル、天才ミサイル、おバカミサイルの混合が秘訣なのだ。僕は知っているんだ。うっすいヲタクなので。
指示を出しましょう。部下に死んでこいと言うのが隊長のお仕事ですよ。名前は覚える暇が無かったので、並んでる順に番号です。ちなみに、派遣社員のメールアドレスが番号な企業は結構多い。
「6番から9番!」
「にゃあ!」
「ひたすら護衛の戦闘機に魔法攻撃!」
「にゃっ!」
「4番と5番!」
「にゃあ!」
「爆撃機の軌道を予測して魔法攻撃!」
「にゃっ!」
「2番と3番!」
「隊長の盾になりつ、他の支援!」
「え? 命令なら仕方にゃい」
「最後にホッケとアジと、あとなんかブタっぽいの!」
「ほいにゃあ」「ブヒッ」
「爆撃機にバカ丸出しで突撃!」
「にゃっ!?」「ぶぅぶぅ」
おお、なんとかなります。日本のアニメは世界だけでなく、異世界まで制すのです。
このポンコツ小説をアニメ化する狂気の集団が現れた際には、ここのシーンにだけカロリーを割いて下さい。他は、線画でもいいので。
「よっしゃあ! いっけー!」
「「「「にゃあ!」」」」