表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/25

03. The Birthday Eve - ふたたび私は生まれかわる -

 少し、時を戻して、猫耳少女に転生したところから、お送りしますね。起承転結の承転の部分もちゃんと頑張って書きます。笑点風味を交えつつー。

 今回は、少しだけ長めです。まずは、ブックマークすることを強く推奨するよ!


「はー、くまったくまったー」


 クマに生きたまま食べられちゃうとはー。くまったねー。

 カメに食われた事もあったっけ?あの時は何故か即死じゃなかったけど。

 ほいでー?ここはどこじゃろかいなー?クマに齧られて死んだので異世界に転生しましたよー。


「あ!教会発見!初めての異世界に着いたらまずは教会か冒険者ギルドじゃよー」

 

 んんー?なんか頭の上で耳がモフモフしてます?すんげー音がよく聞こえます。えーっと、聞きたくないものまで聞こえるんですけどー。んんんー、お?フィルタリング出来ますね。便利便利。

 あと気のせいなのか、今までもよりも遥かに頭の血の巡りが良いです。これは、初めての大当たり個体に転生しちゃったのではー?全裸の奴隷とか、すぐ餓死する幼女とか、これまでは散々過ぎましたよ。

 お腹が減らないうちに、教会に乗り込みましょうかー。


「まいどー!」

「懺悔室へどうぞ、可愛らしい猫耳魔獣さん」


 え?いや、この世界ではまだ懺悔するような罪は犯してないんですけど。自白する気も無いですし?このやりとりはデジャブですかね?


「迷える子豚をお救い下さいー、ぶひぃ。哀れだけど可愛らしいワタクシめに、せめて今日一日の宿と、パンをー、ぶひぃ」

「あなたは猫耳魔獣ですね。体が丈夫なので、どこかに売れるでしょう。安心なさい」

「ぶひっ!?」


 あれ?結局ここでも奴隷スタートなんですか?こんなに可愛いし賢いのに?


「猫耳魔獣なら魔法使えるんじゃないですか?」

「え?マジで!?いや、使えませんね」


 お?ついに、アレか?剣と魔法の世界で奴隷じゃなくて、魔法を行使出来る側の種族ですか?やったー!物質は自分の体も含めて、次の派遣先異世界には持っていけませんけど、身につけたスキルだけは持っていけますからね!なんなら、魔法無双してもう死ぬ事もなかったりー?


「使えないって事は素質が無いのでしょうね。あるかないか分からないスキルは売り物になりませんので。

あなたは妖怪猫耳女として売ります」

「あ!知能には自信がありますよー!」

「ではテストしましょう。通信者同士では簡単に解読出来るけど、第三者の傍受は困難にする暗号化方式を理論でいいので考えて下さい。制限時間は40秒です」

「み、みじかっ!あ、でも楽勝ですよー。因数分解を利用して、秘密鍵を公開鍵で暗号化して渡すのです!」


 えーっと、だいたい合ってるよね?TLS暗号化装置の設計やったのは、30年前だっけ?日本でシステムエンジニアやってた期間よりも、異世界で奴隷やってた期間のがもう長いなあ。よく覚えてないわー。


「んんー?何言ってるか分かりませんね。問題を変えます。この聖書を教会の尖塔のてっぺんかから落っことした時に、地上に到達した時の移動速度を求めなさい。高さは20メートル、空気抵抗は無いものとして計算して下さい」

「えっと、この惑星の重力加速度は毎秒9.8メートルで合ってますか?」

「合ってますよ。既に、ほぼ合格ですけど、答えは?」

「時速71.28キロメートルです!」

「なるほど。知能は高いようですね。高く売れます。ちょっ礼拝堂の椅子に座って待ってなさい。バナナあげますから、大人しく待っているのですよ?」

「ういっす」

「あ、あとアナタ猫耳魔獣なのだから、語尾はブヒィじゃなくてニャアにしなさい。商品価値が下がります」

「あ、はい。分かったぶひぃニャア」


 バナナうめーわ。

 この世界って、メートル法でもないし、数は10進数じゃなくて2進数か16進数だから、この日記に翻訳するのも面倒なんだけど、すいすいっと計算出来たんよ!猫耳魔獣マジ頭いいわー。これ、魔法もスグに覚えちゃうんじゃないのー?

 しっかし、2進数が日常使いってイカれてんなあ。不便でしょ?71.28キロなんて2進数だと10001011011110000だよ!?よく噛まずに言えたわ。


 なんでこの世界の事情を知っているかと言えば、多分この世界2度目なんですよ。ゴシック様式の教会の中に巫女服着たシスターが居たから、そうじゃないかなーって。


 時刻は地球と同じで12進数なんですけど。分も秒も12進数です。つまり、12時5分は、ここでは12時1分です。午前と午後も無いので、相当に粒度が粗い。ただ、アナログ時計見てる分には、直感的に把握しやすいです。時刻はだいたいどこの世界でも12進数ですね。日時計で始まったのでしょうから、どうしても円を等分割しやすい数字になるのでしょう。


 などと、異世界設定ウンチクをその辺の幼女に語っていたら、知らんお姉さんがやって来ました。


「こんにちわー。ちょっとお姉さんと一緒にお出かけしようかー」

「ういっす!」


 知らん人について行くなと、そんな常識守ってても異世界じゃ腹は膨れないんですよ。今回は知能だけじゃなくて、体力もありそうだし、突然魔法に覚醒するかも知れんし、ほいほいとついていきますよー。いざとなれば暴力で解決ですよ。ダメなら死んで次の派遣先異世界へ行くだけ!


「あー、風が気持いいですねー。海がキレイですわー」

「でしょ?このまま海岸沿いを進むわよ」

「ういっす!」


 いやあ目がチカチカするわー。本当は、風は気持ちよくもねーし、海もキレイじゃねーですよ。ただの挨拶代わりの世間話ですわー。


 ここは工業地帯ですねー。沿岸に立ち並ぶピカピカの工場群から煙がもくもくとー。きょうきゃぎゃきゅスモッギュ、ってヤツですか。うーん、どんだけ知能が高くても噛むのは仕方ないです。この体多分まだ幼いですよ?6歳児くらいじゃないですかねー?このトシで馬車に揺らて何処かへ売られていく私。


 こういう移動中の風景もよく見ておいた方がいいんですよ。情報収集は生存確率を大きく左右するので。横に居るお姉さんも、かなーり胡散臭い輩ですけど、いろいろ会話しておいた方がいいんです。だから心にもない世間話だってするんです。こいつ奴隷商人なんでウソばっか言うかもですけど、貴重な情報源なので。

 

 でも、異世界越えの時差ボケで眠いわー。クマに齧られたの夜中でしたよ。今は朝10時くらいですけど。なので眠い。うぉー。


 ああ、この世界では5時半くらいですかね。分かりにくいので、この日記は日本語準拠です。どうせ、日記付けても次の派遣先には持ち出せませんけどね。記録をつけておけば、この世界に居る間は役に立ちます。生き死にだって分けちゃいます。今は、紙もペンも無いので脳に刻み込んでますけど。


「あー、あの工場とかが派遣先なんですかー?工場は嫌ですけど、この辺都会なんでー、まあ妥協してもいいかなー」

「今まで、田舎に居たんですかね?」

「そうですねー。人よりも魔獣の方が多い田舎とかー。誰とも会話出来ないと、独り言増えますよねー」

「そうよね。分かります。私も上京してすぐ、誰も居ない部屋でコップを数える仕事やってたので」

「うわー、それもきっついですねー」


 あ、ダメ。もう寝る。馬車は多分西へ向かって海岸沿いの道を進んでいるのだけど、しばらく変化も無さそうだし、寝ちゃおう。ぐごー。


「猫耳魔獣って魔法使えるんでしょう?初めて会いましたよー」

「え?ああ。まあね。今ここでやると危険だから見せられないけど」


 もう着いたの?って思って起きたら、さっきと違うお姉さんが居て別の馬車に乗せられました。今度は山道を進んでますよ。むう、これは何重派遣なんですかねー?


 なるほど?5重派遣ですか。

 夕暮れ近くになって、やっと目的地らしき小屋ですよ。


「おい、そこの部屋で寝とけ。明日朝一で出撃だからな」


 えー、なんかすっげえ怖そうなおっさんなんですけどー。この人が職場の上長さん?人コロしてそー。


「あの、お風呂とかご飯は?」

「え?食べるの?猫耳魔法少女は死なないんだろ?しょうがねえなあ、後で持って来てやるから、部屋入ってろ」


 がっちゃん。


 部屋に入ったら、外から鍵を締められました。おーう、まじかー?


「晩ご飯なんて無いにゃ。新入りさん。ここは干からびた鍋の底にゃ」

「そうにゃ、割れた米しか残ってないにゃ」

「あ、そう。やっぱそうなんぶひぃ」


 猫頭少女2頭と相部屋ですよ。

 過去の異世界の奴隷部屋よりマシなんじゃないですか? 毛布もあるし、天然のモフモフも居る。むしろ天国ですよ。


「寝るかー。明日どこ行って何するんか知らんブヒがー。おい、お前らちょっと寄れ。ここ寒いな?」

「え。わたしの乙女がー、ホッケの開き状態にゃー」

「ホッケにゃー」


 何言ってるのか分かるけど、分からん。言葉が通じるのに、慣用句やことわざが通じないとか、まるで逆の意味ってはよくあることです。

 こんなのは、日本で派遣やってた時から変わりません。ある会社で通じた言葉が、他の会社だと「オマエふざけてんのか!」って激怒されたりね。ふざけてんのはてめーだよ。この会社の方言が派遣に通じると思うな。


 ぐぼー、すやあ。


 この体は優秀ですね。寝たい時にスグ寝れます。これは兵士としては非常に有用な能力なのだと、昔マンガで読みました。つまり、ノヴィータさんの天職は傭兵さんです。銀河一のガンマンにして、即寝れちゃうので。


「おーい、起きろー」

「一応聞くが、朝風呂と朝酒と朝ご飯は?」

「はあ?そんなもんあるか。さっさと表出て整列しろー」


 まじか。朝もメシ抜きー?

 わー、すっげーいい天気。寝てた部屋は窓も無かったから分からんかったけど、じっとしてると汗ばむくらい陽射しが強い。太陽が眩しすぎて、眼の前のおっさんをコロしてしまいそう。早く魔法が覚醒しないものかー。


 魔法の訓練でもしてくれりゃ、他のやつの見て真似して覚えるんだけどなあ。派遣はOJTが基本!てか、それしかない。「教育体制もバッチリ!」とか求人広告に書いてても「毎月、帰社日はみんなでBBQ!」と同じでウソですからね。

 「半年事に資格を2つとれや、受験費用は合格したら出してやるからよ」が、研修だと言い張りますよ。  

 世の中に、そんなに資格ねーし、受験費用だけで給料の半分消えるわ。教本も高いしね。しかも、半年2個のノルマ達成しないと減給するくせに、達成しても昇給は無い。受験費用だって、アレコレと複雑な申請書類やら、あるはずもない資料の添付を要求して来て、結局自腹になる。あれ? 日本の方が地獄だったかしら?


「このシャベルは食えるのか?」

「そんなワケないにゃ」

「ないにゃ」


 相部屋の2頭と一緒に、シャベルを持たされてフルオープンな馬車に乗せられて、炎天下を蜃気楼に向かって進んでいます。

 この2頭とはセットなのかしら?名前を聞いておきましょうか?その前に私の名前を付けないとー?どうしようか、なんでもいいや。ニャアです。私は今日からニャアよ!猫耳だからね。


「私はニャア。あんたらは?」

「私は、ホッケです」

「私は、アジです」

「え?本名なのー?それ」

「はい、これでも猫魔獣族の天使の栄誉ある名前にゃ」

「同じく、堕天使の栄誉ある名前にゃ」


 なるほど。異世界のネーミングセンスには今さら驚かないよ? ホッケが天使の名かー。昨夜言ってたのは、どんな意味になるんだろうなあ?

 それよりも、こいつら双子か?ってくらい区別つかない。私は猫耳少女だけど、こいつらは猫頭少女だ。いや、服で隠れてるから確証はないけど、昨夜寝ながらまさぐった感じだと、全身モフモフだわ。同じ茶トラ柄で全く区別つかねえわー。


「ちょっと、なんか目印付けて良い?」

「え?どんにゃ?」

「こっちの額をシャベルで割る」

「だめにゃ」

「猫魔獣は不老不死なんでしょ?傷なんてすぐ塞がるって」

「あんた女神なのかにゃ?」

「え? 女神がやべえ事する世界なの?」

「女神は7日目に人類を滅ぼしたにゃ」

「1日目で世界を作って、5日間遊んだら飽きたんにゃ」

「その神話読んだ事あるわー。3行しか無かった」


 ご飯も食べてない、水さえ飲んでない。それで、炎天下にフルオープンで、帽子もヘルメットもなし。

 やっべえなあ、不老不死なだけに、どんだけつらくても死なない。


「あ、不老不死は間違ってるにゃ」

「そうにゃ、死んでも蘇るだけにゃ」

「あんまり間違ってないけど」

「蘇るまでの間が無防備にゃ、ホッケの開きにゃ」

「開きにゃ」


 さっぱり分からんが、いい意味では無さそう。ホッケは天使なんだっけ?天使も良いものの象徴では無いのかな?でも、栄誉ある名前だって言ってたよね。

 よーく見ると、アジの方はタレ目だね。柄に惑わされがちだけど、猫の顔にも個性があるのだ。親子とか兄妹は柄が違っても、暗いとこで見るとソックリなのがよく分かる。特に目が違う。


「おい着いたぞー。降りろ子猫ちゃんどもー」


 どこだよ此処。砂漠のど真ん中で何もねーじゃねーか。まさか、このシャベルで自分達の墓掘るんじゃねーだろうなあ?


「墓穴にしたくなかったら日が暮れるまでにしっかりと掘れよー。塹壕が浅いと寒さで死ぬぞー。穴がお前らの墓穴になっちゃうぞー」


 塹壕?なんだっけそれ?オシシイヤツではないな、うん。


「おい、もしかしてここ戦場か?」

「知らないで来たのか?猫耳魔獣は兵器なんだから、戦場に持って来るに決まってんだろ」

「あ、そう」


 おお、いっそ死にたい。けど、死なないんでしょ?これは詰みが近いのかなー?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ