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25. I Wana Be Somebody - 何者かになりたい -

 惑星の反対側に来て驚いたのは、言語が日本語だって事。異世界なのに何故?


「隊長が作った世界なんじゃ無いのかにゃ?」

「時空魔法は禁断なのにゃ。自分で自分を産むことは出来ないにゃ」

「隊長ならやりそうにゃ」

「そうだにゃー」


 この世界の過去へ行って、私がこの世界を造ったって事?

 荒唐無稽にも程があります。


 それよりも、もっと驚いたのが。


「なんで悪魔が此処に居るの?」


 幼稚園に居た悪魔幼女が居ました。かなり成長してますけど。


「お前ら、大昔にあった猫魔獣か」

「大昔? あんたの中ではそうなの?」

「客観的には、ここが大昔だよ。公園で会った1万2千年前だから」

「にゃんと!?」

「隊長やってしまったにゃ」


 異世界に転移するだけでも、大きな犠牲が必要なのです。

 時空を越えてしまったら、どんな犠牲があることやら。今回は、うっかり越えちゃったようですけど。


「うっかりにも程があるにゃー」

「カップ焼きそばの湯切りにゃー」


 ちょっと日本に居ただけで、随分と日本の文化に詳しくなったね。


「ゆぎり? あれかシンクにどさーってやるやつ?」


 この子も、日本に転生した事があるようですね。

 地球の人類は無事なのかしら?


「折角だから、ちょっと手伝えよ。陰陽師作るから」

「魚の取り方は教えられても、魚は与えられないにゃ」


 悪魔が夏休みの工作で生物を作るとか言い出しました。

 それに対して、猫頭が教育の極意みたいな事言ってますけど、生命を作り出す事は無理なんだぞ、って事でしょうかね。

 作れないなら、他の生物を改造してみるとか?


「素のニンゲンを魔改造すればいいんじゃないの?」

「隊長も悪魔だったにゃ」


 オモシロそうなので、早速やってみましょう。

 まず成人のニンゲンを何体か攫ってきました。


「子供の方が耐性が高いかな?」

「うーん。体力がある成人の方がいいんじゃないの?」

「こいつら倫理感ゼロにゃ」

「魔法は倫理が大切なのににゃー」


 そんな今更な事を。もう手遅れです。


「まあ、ニンゲンだからいいかにゃー」

「小豆以下の価値だからにゃ」


 猫頭の倫理感も理解できませんね。

 

 まず、実験体の大脳をフォーマットします。

 これで人格と過去を消し去りました。ここに何を植えたら陰陽師になるの?


「そもそも陰陽師って何?」

「魔法使いとは別の制限をかけた魔法を使えて、魔法使いを倒せるやつ」


 悪魔に仕様を聞いたところ、なかなか難しそうな答えが返ってきました。


「倒すのは無理じゃないかにゃー」

「自分達を越える存在も作れないにゃ」

「そうなの?」

「想像力次第にゃんだけど」

「だったらイケるわね。ニャア姉ちゃんをイメージしよう」


 それは私なんだけど、私ではない存在。悪魔が面倒な事言い出したなあ。


「魔法少女を倒すのは無理だけど。結界に封じるくらいは出来るね」

「まあ、これで十分か」


 AIのディープラーニングの要領で、実験体に魔法と制限事項を書き込みました。

 ついでに、私の記憶の一部を入れておきました。倫理感を教えるのが面倒だったからです。私の日本人時代の倫理感で行動しますよ。ろくな事にはならないでしょうけどね。


「これは陰陽師じゃなくて巫女って事にしようかな」


 死んでも復活する機能も付けました。

 復活する場所として神社の境内を指定したので、たしかに陰陽師というよりは巫女ですね。魔改造は14歳が一番適性が高かったので、14歳の巫女を20体作りましたよ。

 適当に作った神社に、全裸で復帰する仕様です。しかも死体はきっちり残ります。これは趣味ではなくて、私達の魔法技術的にこれが限界だったのです。

 抜け殻になった14歳女児がイタズラされないように、屈強な女騎士もセットで作りましたよ。こっちは輪廻転生式の復活にしました。死んだら赤ちゃんからやり直します。こっちは死体が残らない仕様にできたよ。2回目だからね。


「あんた達、随分とおっかないもの作ったわね?」


 この国の暫定統治者である暁の魔女です。

 やべえ、こいつもう一人のニャアの里親ですよ。


「これを好きに使っていいよ」


 悪魔は折角作ったものを暁の魔女に譲る様です。

 何が目的なのかしら? 


「もらっていいの? じゃあ王女に付けましょうか。王女にこの子達を絶対に解雇できない呪いとかかけられる?」

「おいおい、この国を傀儡にする気か?」


 暁の魔女に突っ込んでいるのは魔王ですね。もう一人のニャアの里親。

 暁の魔女と夫婦揃って、この時代のこの場所で何してんだか?

 いや、夫婦ではなくて父娘でしたっけ?


「そんな面倒な事しないわよ。ここも飽きてきたらから、惑星の反対側にでも引っ越そうかと思って」

「それで、この国を王女に譲るわけか。向こうで何するんだ?」

「お前と勝負つけるんだよ!」

「あ、そう」

「そういうことなんで、私をヴァンパイアに改造してよ。こいつら作った要領で出来るでしょ?」


 なんでしょうか。いろいろと因果関係が時空を越えてしまいそうですけど。

 暁の魔女をヴァンパイアに改造してやりました。ちょっと脳をいじるのに失敗して、9万年以前の記憶が飛びました。コイツ一体何歳なんだ?


「乙女の血を吸ったら体力が3倍になるだけだよ? こんなのでいいの?」

「強くなり過ぎてもつまんないのよ。ある程度制限があった方がいい」

「じゃあ、不老不死なのに病気の治癒能力は人並みにしてやろうか?」

「いいわねソレ」


 ヴァンパイアらしく血を吸った対象が不老不死になる機能も付けました。ただし、制限事項として、齧った相手が魔法少女でも無い限りは即死するようにしました。血を猛毒にしてやったのです。これで外科手術を受ける事も叶いません。おしりのあなを患ったら地獄でしょうねきっと。ってか患うのでした。ソレ治したの私ですし。1万2千年先の話ですけどね。


 暁の魔女と魔王は、徒歩で惑星の反対側へ向かいました。すげえな。


「私は、巫女用の神社に由来の宗教を作って来るわ。異世界から輸入した神話を使って」


 悪魔がまた妙な事を言い出しましたよ。


「あんまり時空越えを多用していると、いつか死ぬよ?」

「そうなの?」

「時間を弄くった分、寿命が減るにゃ」

「私は、不老不死だから平気なだけって事?」

「何の加護で不老不死になったのか知らんけど、加護だって永遠じゃないらしいよ」

「なるほど。どこまでイケるかチキンレースってワケか。私のバックアップも作っておくかな。確か、ニンゲンニには子作りの機能もあったハズ」

 

 子供はバックアップじゃないけどね?

 悪魔の中ではそういう認識の様です。


「作り方知ってんのかにゃ?」

「知らない。教えろよ」

「意中の相手と酒盛りでもすれば、勢いできっと出来るにゃ」

「そうか。ありがと。じゃあな、もう会わない気がするけど」

「私の方は、また会う気がするけどね」


 いろいろとやらかした気がします。

 このツケを払うのは、すべてもう一人の私になる予感もします。


「地球に逃亡しようか」

「そうだにゃ。隊長には情緒と倫理感を取り戻してもらった方がいいにゃ」


  私は地球に帰って、猫頭達と派遣のITエンジニアを始めたのでした。

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