24. Shout at the Devil - 悪魔に目をつけられました -
「おねえちゃん達、何してるの?」
さあ、何してんだろうねえ。お前こそ何してんだ? 猫耳魔獣に気軽に声かけんなよ。この村には、この手の生物は居なかった気がするのだけど。
目の前に居る幼女は、妙な迫力とオーラがあります。猫頭達がこっちの世界に一次避難した大人のバスクリンゲート事件「ホットウォーターゲート事件」の時に、幼稚園の園児達の中で、こいつだけ様子が奇妙でした。
あの時、ニンゲンニャアは猫頭に注目していて気付いていませんでしたが。日本アルプス級の山脈がゴッソリ消え失せるような大厄災が発生していました。乾いた風がゴウゴウと吹き荒れ、青い稲妻がピカピーカと大空から大地へと突き抜ける。まるで、この世に現出した地獄。猫頭達が、こっそりと修復しましたけどね。
園児達は、当然ガクガクブルっちょです。その中で、こいつだけ不遜な笑みを浮かべてニンゲンニャアを見つめていました。一体、何を勘違いしたのでしょうかねえ?
「うっせー、バーカ。ガキに用はねぇニャ。うんこして昼寝してろニャ」
情緒は多少回復しましたけど、品性は下劣ですね? この下劣さもニンゲンニャアにお裾分けしておきましょう。ちんちんを連呼するアホな幼女になる事でしょう。
このガキに関わるのは危険。この世界の私は猫頭魔獣なので、魔獣のマヌケセンスが危険を告げています。この公園に来たのが間違い。この世界のゲートはここが開きやすいだけのことで、好んでココに来たワケではありません。
「この惑星の裏側へでも飛んでいくかニャ。ニンゲンの私に会うと酷使されるしニャ」
「それがいいにゃ。おいしいおはぎの匂いがするにゃ」
慣用句なのか本気なのかよく分かりませんが。おいしいおはぎがあるなら良いところなのでしょう。
悪魔幼女から逃げようと、飛び立とうとしたところ。
ごっすン
「いってー!」
悪魔幼女スコップの尖った部分を眉間にグッサリとヤラれました。因果応報です。こいつスコップなんて何処に隠し持ってやがった。もしかして魔法幼女か!? いや、マジモンの悪魔か?
右脳を貫かれていたら死ぬところでしたが、猫頭の頭は頑丈なのです。
ずっコ
「うぎゃー!」
オリハルコンより頑丈なハズの頭骨を貫いて、スコップが私の脳をラブリー右脳とデストロイ左脳の2つにパカッと割りました。コイツ、やっぱり悪魔だ!
「やめなさい! 私が猫頭魔獣で治癒魔法の使い手じゃなかったら即死だったニャ!」
「あ? 魔獣風情が生意気に脳なんか所有してんじゃねぇ。滅しろこの野郎」
ぐりー
「うげろおぉ!」
脳には痛覚が無いらしいですけどね。脳みそコネコネを物理でやられて平気なワケないでしょ。
転移魔法で悪魔と距離を置き、治癒魔法で脳と頭骨を修復します。魔法の演算には脳が必須なので、コレ以上は危険ですよ。この場で死んじゃうと、復活前に悪魔に何されるか分かったもんじゃない。
「隊長、コイツ悪魔にゃ。ヤラれると猫魔獣でも666年間復活出来ないにゃ」
「まさか、ほんとに屏風の中から悪魔が出てくるなんてにゃー。 端っこ歩かずに逃げるべきだったにゃ」
なんですか、そのトンチエピソードみたいな慣用句は。いえ、一休みしている場合じゃありません。今スグ逃げるべき? いや、地獄の果まで追って来そうですよ。
「待ちなさい! 私は、あの女神の家族なのですよ!」
「女神? あの貧相なニャアとかいうヤツのことか?」
「そうです。あなた女神の家族、いえ女神の反物質に手をあげるきですか!?」
「何言ってるか分からねぇが、アレは女神なんだな?」
「そうですん」
私が知るこの世界の女神の権能とは「ニンゲン皆殺し」です。その能力は私がアイツに授ければ、いやもう授けてますね。だから、誰かが「やっべえコイツ女神じゃん」って気付けばニンゲンニャアは、この世界の女神になります。なんなら、自作自演で適当に演出を仕込んでおきましょう。
「分かった。アイツの事もっと教えろ」
私は、悪魔幼女にあることないこと吹き込みました。アイツは女のしりのあなが好きな大変な変態さんであるとか。猫が大好きなので、猫をいじめるとアイツに即射殺されるぞ、とか。だから私をいじめるんじゃない。幼女に攻撃されても、反撃しづらくて困る。取り戻した情緒がロリロリ法を遵守せよ、と告げています。
んー、そういえばあることしか吹き込んでませんね? であれば、私は無罪です。逃げましょう。
「いいね? 私に会った事は、みんなにはナイショだよ」
「分かった」
所詮幼女ですよ。ナイショだよとか言うと喜ぶし、手を振ってやれば振り返して来ます。
「じゃーニャー、人の眉間をスコップでお刺さるニャよー」
私達は悪魔幼女に手を振りながら、大空へと飛び立ちました。
さあ、この惑星の未知の領域である裏側へと行ってみましょう。




