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21. Immigrant Song - そうだ! 異世界へ行こう! -

 冷静になって考えてみれば。この世界を捨てて他へ行くのですから? 放置で良かったですね。しかし、覆水盆に返らず。間違ってリモート操作中に消しちゃったVPNゲートウェイは現地へ行かないと復旧せず、です。


 この惑星の人類を全員どんぐりにする必要はありませんでしたね。


 まあ、いいでしょう。惑星レベルで捉えればですよ。ニンゲンにカラダに置き換えて例えるならば、生ニンニク食べ過ぎて腸内細菌が死滅した程度ですよ。いや? それは結構な大惨事ナノでは?

 表面にこびり付いたニンゲン共や、その他生命が失われてたとて、惑星は気にも止めません。おめぇらの惑星ねえから!


 さて、猫頭達を迎えに行きましょうか。ただし、他の世界からこちらの世界へ引き戻すには召喚魔法を使わねばなりません。召喚魔法は、転移魔法よりも更に危険なのです。タワシなどの無機物の召喚は比較的簡単なのですが、複雑な構成情報を持った有機生命体、特に猫魔獣は難易度が高い。

 構成情報が転送中のパケットドロップによって欠損するかも知れないし、上位レイヤーの文字コードを間違ったら化けてしまいます。猫魔獣は魂も頑丈なので、失われたり死んだりすることはないでしょうけど。猫魔獣が犬魔人になっちゃうと、ガッカリですよ。生きた猫のぬいぐるみになってもコワイ。


 なのでー。

 

 2頭を送り込んだ先に居る、もう一人の私とリンクパスを張って、魔法能力と一部の記憶を同期しましょう。どすけべいさんな妄想までは如何に同位体とはいえども同期出来ませんけど。ヤツの頭がパーになってしまうので。魔法を得た過程も同期しておかないと、急に習得した魔法の威力の前に、やっぱり頭がパーになってしまいます。入念に設定したフィルタリングを通して同期しますよ。


 今頃、ヤツはたった今聖国を滅ぼした事も、プリズンで人体実験をして治癒魔法を習得した事も、すべて自分の体験だと思っているはずです。異世界転生能力で、あちらとこちらを行き来したとでも解釈する事でしょう。それはそれで事実なので。


 リンクパスを通してヤツのカラダを使って、リモートで転移魔法を実行します。


 さあ、戻って来い! 私のラブリー魔獣! 抱き枕達よ!


「さすが隊長にゃ。開いたホッケにゃ」


 帰って来ました。この世界はもうダメなので、他の異世界へ魔法で旅立ちましょうかね。異世界漫遊記です。


 ああ、でも。不安ですね。もう一人の私に、異世界転移魔法だけでなく召喚魔法まで同期してしまいました。アイツ、きっとろくでもない事しますよ。だって、私なのだから。


「さあ、何処へ行こうか?」


 異世界転移魔法は、ほぼ完成です。行って帰って来た猫頭達は、ちょっと青ダヌキっぽくなってますけど。右脳も左脳も無事なようです。目的の異世界へ転移してから、元に戻しましょう。青ダヌキは神話の生物ですけど、猫であって猫じゃないので。


「そうだにゃあ。おはぎがつぶあんなら何処でもいいにゃ」

「そうだにゃ。お汁粉じゃなくてぜんざいの方だにゃ」


 拘るところは、やはりそこなんですね?

 しかし? 異世界の歩き方とか、そんなんありませんし? あ、そうか。私が過去に行った世界の中から選べばいいのです。

 ついでなので、ムカついた順に巡って行って、スケサンカクサンと一緒に世直しの異世界漫遊をしましょう。


「スケサンじゃないにゃ、ホッケにゃ」

「カクサンでもないにゃ、アジにゃ」

「あ、うん。そうだね」


 猫頭達は、自分の名前に誇りを持っているので、例えごっこ遊びでも、別の名で呼ぶ事を許してくれません。

 

 さて、一番ムカついたのはどこかと言えば、やはり日本ですかね? すっとんころりと行ってみましょう。ふむん? すんなり転移出来ましたよ。


「げふー、なんにゃこの空気の汚さ!」

「ゲロ酸っぱいにゃ。この世界のニンゲンは腐りきってるにゃ」


 大気汚染の度合いで言えば、さっきまで居た世界の方がヒドイんですけどね。そういう事を言っているのでは無さそうです。住んでいるニンゲンの魂の汚染度合いなんですかね。


「さっさと、割るにゃ。パカっと」

「え? 割るって惑星を?」


 んー、さすがにそこまでの恨みは祖国、祖世界? にはありませんね。満員電車に詰められていると、たまに「隕石落ちてこねーかな」とは思いましたけどね? 実際に、落ちて来てもね?


「あー、特にあのニョロっとした鋼鉄のヘビが、禍々しいにゃ」

「まったくにゃ、特典が何種類もある新譜みたいにゃ」


 猫頭達のオリジナル慣用句が、タダのディスリにしか聞こえませんね。とぅいったーですかね? 気持ちはよく分かるのだけど。


 ここは危険ですね。もうひとりの私が、ここに居るはず。未来か過去の私が。壮大な自殺を決めるところでした。


 じゃあ、どうしよっかー? なんかもう、どうでもいいですかね。世直しとか何様ですかって話ですよ。ジャスティスだって人の数だけあるんです。あれれー? おっかしいぞー? ってワケにはいかんのですよ。フィクションなら好き勝手にペロってればいいですけど。現実世界で、一方的な価値観を相手を断罪するなんて。まるっきりニンゲンの所業じゃないですか!?


 ではー、そうですねー。転移魔法スクリプトにガチャ機能を追加して。偶然に身を任せましょう!


 開けー! あずきー!

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