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17. Burn - 汚物を消毒する悪魔の炎 -

 空が真っ赤に染まり、辺りは閃光に照らされ、今が夜なのか昼間なのかも分からない。魔女が火を放ったからだ。


 地球には、そんな詩があります。私の大好きな詩です。


 せめて、湖上の煙くらいに留めておけばね? これは温泉の湯気なのですと、優良誤認させることも出来たのにね。バーン! 無礼バーン! しちゃいました。


 時に聖国歴199X年。人類は半数が死に至り、人々は魔女の行為に恐怖した。


 きっかけは些細な事だったんです。


「ここに重い槍と軽い槍があります。どっちが、お刺さると思いますか?」


 あれ? なんかセリフを間違えている気がしますね? 仕方ないデスよね。私達は腐ったミカンなので、プリズンを自主退学、いえ脱走しました。せっかく、幼稚園からやり直したのに、中学卒業目前にドロップアウトです。


 惑星の反対側まで逃げて、もう大丈夫だぜ? とMP補充のために入ったおソバ屋さんでの事です。


「げははは! ウケるー!」

「2進数も数えられないんだろうなあ、上限は100とか50とかそんなのばっかり」

「なんだその区切り方。ワイルドカードマスク書きづれえー!」

「オフジサンはバカしか居ねえ」


 お蕎麦屋さんなので、日本酒をきゅいっとやるのも乙なものですよ。でもね、おソバ屋さんは宴会場ではありませんし、例えそうだったとしても、周囲への重い槍、じゃない思いやりが必要だとは思いませんか? 下請けの連中がどうの、上の商流の奴らがどうのと。隣の席に居るのが、その渦中の会社の人達かも知れないと思い至りませんかね?


 平成日本のIT現場と同じです。


「こんなクソ作業はオフジサンの雑魚共にやらせときゃいいだけだろ? 仕様変更したって、アイツらバカだから気付かねぇって!」


 はい、そうですね。そのオフジサンに派遣されているのが私ですけど? さっきから私の席周辺をウロウロしながら、ずーっと電話しててウルサイです。どういう種族なんですかね? 一日電話してりゃ仕事してる事になると思ってる奴ら。毎日、ずーっと同じ会話してますけど? 何してんの? もしかして時空が歪んでますかね。


「オフジサンって、クズだよなあ。顧客の寝言をそのままこっちに落としてきやがる。何回仕様変更してんだ?」


 エレベータの中でもギャアギャア騒いでるのが居ましたけど。同じビルの中に、そのオフジサンも居るでしょ? お前の後ろでイライラしてるのが、そこの派遣社員なんですけど?

 オフジサンという社名はもちろんフェイクです。もし万が一偶然にも一致しちゃう企業があったら諦めて下さい。お前らも悪い。あ、いえ実在しない事は確認済みです。無いよね?


 うん。すぐ話が逸れるね。


 ともかく。思いやりが足りないキミ達には、重い槍がお刺さりまーす、って事で、おソバ屋さんのサル魔人共を串刺しにした後で「おばちゃんソバ湯」って頼んだら、出て来たのはポリスメンでした。そりゃそうか。


 せっかく惑星の反対側まで逃げて来たのに、早々に捕まるわけにはいきませんよ。そういえば、私達は小銭の一枚はおろか、明日のパンツさえ持っていなかったので、どうせポリスメンとは対決する宿命でした。所詮は、血塗られた道だったのです。


 そんなワケで。重い槍は戦術核級の、巨大な炎の槍となり、街を襲ったのです。


 私は悪くない、お刺さっただけです。


「人のシリアナは見えても、自分のシリアナは見えないにゃ」


 なるほど? 他人の悪事を責めておいて、お前自身はそれ以上の悪事を働いたじゃないかって意味ですか? そうかも知れません。そういう捉え方もあるかも知れない。真実は観測者の数だけあるのだから。シュレディンガーの魔女デス。魔女の入った箱は、開けても開けなくても、人類は滅びますけどね。


 ところで。自分のシリアナは、魔法を行使しても見る事は出来ません。如何に魔法といえど、どんなインチキでも可能になるワケじゃないんですよ。治癒魔法の行使には代償が必要で、周囲の何らかの生命の命を吸い取ります。等価交換もしくは質量保存の法則ですね?

 魔法は宇宙の真理には逆らえないのです。つまり、自分のシリアナを見たりペロッたり出来るお猫様は神だという事です。ネコを信じよ。私達猫魔獣は所詮はまがいものです。可愛さだけは、神に匹敵してますけどね。ふむ? 神に匹敵する邪悪な存在、私達は悪魔なんですかね。隊長の私は魔王。


 私は推定質量600万トンの重い槍を、魔法でひょいっと投擲しただけです。同じく推定質量600万トンの禍々しい施設を的にして。あの施設は一体何だったのでしょうかね? 派手な閃光を発して空を真っ赤に染めた後、大陸全体を火の海に包んだ挙げ句、核の冬が訪れてしまいました。


 結果、どういう事か、私達は聖国の五つ星プリズンに再度収監されてしまいました。


 なんですか? あちこちで戦争しておいて、国際連盟に国際裁判所ですと? ニンゲンは本当に愚かな生き物ですよ。むしろ、SDGsに貢献した私達を表彰して下さい。人類の半数を削除して整理したので、カーボンニュートラルじゃないですか。んー? あの大きな真っ赤な炎、いや真っ青な光で相殺してマイナスですかねー?


 もはや、懲役が何年なのか2進数で提示されても桁数が多過ぎて、さっぱり分かりません。読む気にもならん。


 そろそろ、人類丸ごと、惑星レベルの観点で、クリーンアップしましょうかね。宇宙の意思で人類をガベージコレクションです。ニンゲンなんて、地上に蠢く常在細菌の様なモノですからね。

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