表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/25

14. 蝋人形の館 - 誰にでも辿り着けるヴァルハラはきっとある -

 フロアのど真ん中に、サービスカウンター。

 そこから放射状に5本の通路が延びておりまして、通路の両脇には素敵なお部屋がずらっと並んでおります。鈍く光る鉄格子がラブリー。


 サービスカウンターに常駐しているのは、素敵なコンシェルジュではありません。銃を持ったおっさんです。うーん、監獄。ここは横須賀プリズンの様な概念としての監獄ではありません。マジ監獄です。無期限入居パスを頂きました。


 猫頭の部下2頭と仲良く一緒にシェアハウス暮らしの始まりです。


 この監獄は、3食昼寝、おやつ付き、だそうです。この国の囚人は優遇され過ぎです。私達、戦場においては鹵獲された最終兵器でしたので、人権というものがありませんでしたが。ここでは、ちゃんと人権があります。国籍も貰いました。聖なる国だけありますよ。


 ええ、国外に逃亡したつもりが、我々が上陸したのは聖国の首都でした。


 第7艦隊を全滅させた上に、同盟国の旗艦を轟沈した罪で、おロープを頂きました。あの弩級戦艦は、敵国のものではなく、同盟国のモノだったのですよ。私達、魔法少女隊はやるだけやりました。そこに悔いなどありません。ドラゴンスレイヤーですし。


 懲役1万2千年です。やっほう!


 タイーホに来た陸軍を一個師団殲滅しましたからね。むしろ罰が軽い方なのでは? 死刑にしても、魔法少女は蘇ってしまうので懲役刑です。おかわりの一個師団に、3人とも殺されてしまい蘇生中におロープぐるぐるされました。

 ああ、ドラゴン退治前の朝ご飯をおかわりしておけば! 空腹でMPゼロとなった猫魔獣は魔法少女ではなく、ただの可愛い猫ですからね。


 私達、この世界の歴史を変えてやりましたよ。帝国だけでなく、聖国の最大戦力を無力化しちゃいましたからね。その結果、長く続いた戦争が終わりました。私は、異世界から来た平和の使者ってわけですよ。ご褒美が、プリズンという名の別荘での優雅な暮らし。


 私達、とても可愛らしい猫耳娘なので、乙女の貞操がピンチですね。プリズンといえば、肉体をいじくりまさぐり合う部活が盛んです。映画で見たので知っています。


 そろそろ食事の時間です。さっき入所したばかりなので、食堂で初めて他の囚人と遭遇するわけです。頭からお味噌汁かけられたり、足をひっかけられて床にご飯をぶちまけたり。そういうイベントがあのでしょうね。これも、映画で見たので知っています。


 ふひっ。ちゃんとイベントが発生しましたよ。


 私達の椅子になった囚人達が、グスングスン泣いてうるさいです。でも、アヒル鳥人は椅子としてはなかなかですね。元プリズンクイーンの縦ロール女をモップにして、床にぶちまけたお味噌汁を拭き取っているのは、さっきまでモップの取り巻きだったコウモリ獣人です。コウモリだから鳥人? どっちでもいいか。元プリズンボスのヒツジ魔獣で床を空拭きしているのは、ネズミ女ですね。

 コウモリ鳥人とヒツジ魔獣は、見た目だけは、まるで悪魔なんですけどね。ドラゴンスレイヤーの私達猫魔獣にとっては、雑魚乙でした。こいつらも、この五つ星プリズンの囚人なのだから、128人以上のニンゲンを殺した大犯罪者のハズなんですけどね。ま、ニンゲンは底辺の雑魚ですからね。あいつらは、魔獣や獣人を契約で縛るシステムを構築しているので、でかい顔をしています。暴力よりも知恵の方が上って事なんでしょうね。


「ペンペンはケンケンよりも強しにゃ」


 いつもの事ですが、猫頭達の言ってる事が分かるようで分かりませんね。猫魔獣は暴力だけでなく、知能でも他の種族を圧倒していますからね。ペンでも剣でも、お刺さりますよ。


「おい! お前ら、何やってんだ!」


 看守のおっさんが、ものすごい剣幕でやって来ましたよ。食事中は静かにして下さい。


「うるさい、お前も蝋人形にしてやろうか」


 看守は何も言わなくなりました。だって、蝋人形なので。

 看守だけでなく、監獄の職員全員が無抵抗になりました。生きたまま蝋人形にされるのは嫌なんでしょうね。いつか作った蝋人形を何個か燃やしてやりましたね。アロマキャンドルにしたので、いい香りでしたよ。

 猫頭達の魔法はスゴイです。他にもニンゲンをぬいぐるみにしたり、いろいろ出来るようです。このプリズンで暮らしている間に、いろいろ教わりましょう。いい機会です。


 やらかして、騙され欺かれ、損なわれ続けた私の人生ですが。ここがゴールなのかも知れません。ここが、私のヴァルハラ。1万2千年もあるのです。猫魔獣の長い生涯も、丸っと収納出来るでしょう。


「猫魔獣は何年生きるの?」

「無限にゃ」


 ふむ。さすがの猫頭も無限を表す慣用句は持たないようですね。江口寿史の新作を待つ時間だって無限ではありません。たまにはイラストくらいは出てきます。火浦功作品が完結しない事は、既に宇宙の真理なので、もはや誰も待ってませんし。


「ノヴィータさんの栗まんじゅうにゃ」


 なるほど。それがありましたか。しかし、アレもいつかは誰かが始末せねばなりません。宇宙だって無限ではないのだから。私が宇宙海賊となって、エネルギー充填120パーセントで消し飛ばしましょうか。


 罰としてのプリズン収監のはずなのに、起こるイベントは愉快痛快キテレツな事ばかりなのです。楽しくてしょうがないです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ