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第5話

 字が読めない。

 どんなに冒険者証を眺めてみても、ガキの記憶から文字に関する記憶が思い出される気配は一切ない。スラム育ちなのだから当然といえば当然だが。


 受けて取った冒険者証を黙って眺めている俺に疑問をもったのか、受付の男が話しかけてくる。


「おい坊主。もしかして書いてある文字が読めねえのか? 良い身なりしてる癖くせにスラムのガキみたいだな。」

 

 大正解だ。


「……そこにはお前の名前と冒険者としてのランク、登録した支部や登録番号などの基本的な情報が記載されている。ちょっと貸してみろ。」


 おっさんが丁寧に解説をしてくれる。

 ふーん、血を垂らしただけでそんなことが出来るのか。おそらく魔術なんだろうが、便利なものだな。

 おっさんはそのまま冒険者の規則について色んなことを教えてくれた。


 まず冒険者は1から10までのランクで格付けをされるらしく、ランクに合わせて冒険者証の色も変わるとのこと。昔はSからEという区分けだったが、魔物の種類の増加に伴い変更したらしい。


 依頼に関しては契約依頼と自由依頼に別れるそうだが、契約依頼ではギルドが仲介となり依頼者と冒険者が契約を結んでから行うもので、信用のない冒険者、つまりランクの低い冒険者には縁がないもののようだ。

 対照的に自由依頼はギルド内の掲示板に張り出されている依頼で、契約を交わさずに依頼達成後の事後報告により報酬が支払われる。


 よく分からんが駆け出しの俺には契約依頼は関係なさそうなので、掲示板から自由依頼を探してやればいいのだろう。

 興味のあるところだけ聞いて、細かな規則は適当に頷いてやり過ごす。


「これが最後の規則であり忠告だ。冒険者同士のいざこざに関してギルド側は介入をしない。 だが、あまりにも悪質な件は例外だ。

 たとえばこの原則を逆手に取って、意図的な冒険者を狙った殺人事件などは当然処罰の対象だ。

 坊主。よーく覚えておけ。」


 ……このおっさん、何か察してるな。脳みそまで筋肉みたいな顔をしているくせになかなかやる。

 おっと。無意識に剣に手が伸びていたようだ。さすがに受付を斬る訳にもいかないし、とりあえず笑って誤魔化しておく。






 話が一区切りつき掲示板から依頼を確認しようとすると、背筋が凍った。突如として背中に氷でもいれられたかのような寒気が走る。 前世で慣れ親しんだ殺意。殺気。明確な死の気配が背後から忍び寄ってきた。

 



 一閃


 咄嗟に腰元から剣を抜き放つ。周囲の状況など考慮しない全力の一撃を


 「ダルマの旦那ー。こんなとんでもねえガキ、どこで見つけてきたんだ? 」


 止められる。余波のみで周囲一帯を倒壊させる一撃も、上手く衝撃を緩和させる形で鍔迫り合いに持ち込まれる。


「ジンか…… 俺は知らん。こいつは飛び込みの新入りだ。」


 ジンと呼ばれた男は黒髪の短髪に血のような赤い目、その下に出来た大きな隈が特徴の男だった。全身を黒のスーツで着込み、身体の至る所に金色のアクセサリーを散りばめている。その一つ一つから違和感、おそらくは魔力の気配を感じるが、男から感じる違和感はそれらの比ではない。あまりの濃密な気配に周囲の空間が歪み、物理的な影響を伴っている。

 

「飛び込み、ねぇ…… まあ、この街は曰く付きの人間だらけだからな。

 それにしたってこんな歩く災害みたいなガキがいるとは信じられねえなぁ。旦那も気づいてるだろ? このガキ、いくらなんでも()()()()()()。」


 そのまま鍔迫り合いによる硬直状態が続くも、しばらくすると満足したのか魔力の圧力が消えた。殺気を収め、敵意のない瞳で剣を納めるよう伝えてくる。 

 呼吸を合わせて同じタイミングで力を緩めると、一歩下がって間合いをあける。この流れで互いに納刀する瞬間を見計らい、再び剣を振るう。


「ッ!? 今はもう終わりの雰囲気だっただろ!」


 またしても止められる。やはり、何かがおかしい。一度目は見逃した。けれど二度目はきちんと()()()()。その上で反応できないタイミング、追いつけない速度、軌道で剣を振るったのだが完全に封じ込められた。

 

 俺の見立てがズレているとは思えない。ただただ、想像を遥かに超える()()()対応された。

 ガキの身体とはいえ、全力だ。この男…… かなり強いな。前世を含めても頂点に近い実力を感じる。異世界で初めて出会う明確な強敵だ。

 これはぜひとも斬りたい。


 しかし、こちらの昂る感情とは裏腹に、男は警戒こそ解かないものの、剣を鞘に収め戦意を解いている。


「はぁ…… そう焦るな。おおかた強い奴とやり合いたいんだろ? どうせランク1の底辺ランクじゃ大した依頼も受けられない。

 お前の望みを叶えられるように俺が手配してやる。いいか? これはビジネスの話だ。」


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