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第11話

 あたり一面が焼け野原のように変わり、先ほどまでの美しかった風景の面影も今は跡形もない。


 「ちっ……。人間ぶぜいが無駄な力を使わせおって。大人しく今ので死んでいればいいものを」


 赤い稲妻がもたらした破壊の軌跡。その震源地にはこれまでと変わらぬ様子の吸血鬼が立っている。


「悪いが、まだまだ斬り足りないんでね。お前の方こそあれだけバラバラになったなら生物として死んどけよ。」


 さすがにさっきのはヤバかったな。咄嗟に天避ノ刃(てんぴのやいば)を挟んだが、衝撃を殺しきれずに身体がボロボロだ。長期戦には耐えられそうもないな……

 あいつが何かをするたびに鉄臭い匂いがするから血に関連した技だと推測はしていたが、本体が液化して自爆するとは……

 ただ、向こうも見かけほど余裕があるわけじゃないな。最初と比べて明確に魔力を消耗しているのが分かる。おそらく傷を治すのも体質ではなく魔力のはず。

 ……このまま押し切るか。


「おい白髪頭、今から十秒だ。十秒だけ本気を出してやる。それを耐えきればお前にこの命くれてやるよ。」


 このまま削り合いが続くと俺の方が不利だ。やつの魔力が減っているとはいえ万全。こちらはダメージが積み重なっていく。

 短期決戦でいくしかないのだが、そうすると十秒。俺の本気にそれ以上はこの身体が耐えられない。 ……改めて考えると、なんでスラムの貧弱なガキの身体でここまで動けるのか謎だが、今は置いておくとしよう。


 深く息を吸い、吐き、呼吸を深める。

 剣を鞘に戻し、改めて左手で鞘を、右手で柄を握る。


 俺の雰囲気の変化を感じ取ったのか、吸血鬼はこれまでとは違い警戒を露わにし、両手に赤い稲妻を集約させる。初めての構えを取る。


「だが、いいか? 瞬き一つするな。一瞬の隙も作るな。それでもお前は何一つできない。そして、何一つも分からないまま……この刃の錆となれ。」




_________________________________




 刹那、世界が二つに断たれた。



 解き放たれた一の太刀は、空を、大地を、世界を、全てを断ち、全てを分断する。


 まるで斬られた世界が悲鳴を上げるかのような甲高い音が鳴り響くと、この世の終わりを呼び起こす様な斬撃の嵐が吹き荒れる。


 吸血鬼の身体が嵐に巻き込まれ、刻まれ、その身は果てて塵に至る。

 思考は追い付かず、反射で肉体を戻すも、初撃で刻まれた袈裟懸けの傷だけは癒えない。当然、痛みも治まらない。

 

「ぐううううっ…… いったい、何が……」


 必死に上半身を持ち上げると、眼前に迫るのは慈悲なき二の太刀。


 斬るのではなく、押し、潰し、壊す。


 先ほどまで刃としての惨劇とは異なり、強烈な鈍器。天まで届く巨人が足踏みをしたかのような衝撃が大地に刻まれる。


 再生した肉体はまたしても大地の染みとなり、奇しくもセンカに一撃を与えた液状へと戻る。


「にっ、人間如きが、何故……こんな力を。 まるで、我らが王と同じ……」


 二度目の再生。絶望の表情の吸血鬼の元へ、三の太刀、四の太刀と続き、天からの全てを置き去りにした二撃が災厄を大地に降り注ぐ。

 

 瞬間、太陽の如き灼熱が雷鳴轟くいかずちと共に世界を焼き尽くす。

 

 十秒。 生み出された惨状と共に吸血鬼の肉体はこの世から完全に消え失せるのだった。


 宣言通りの時間でセンカは剣を鞘に納めると地面に腰掛ける。


「ここまでやらないと死なないとはな。それにしても王……ね。まだまだ楽しみには困らそうだ。」


 こうしてランク1のルーキー冒険者、東堂閃花の初めての戦いをこの地に刻むのだった。

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