表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不必要な僕の偉大なる発明  作者: 三毛猫ジョーラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/51

49話 ナクトの奇跡


 白い服の女性が現れた瞬間、新城たちの悲鳴が受信機から響いた。しかしその叫び声の途中でザーッというノイズと共にそれは掻き消されてしまった。


 新城がハンドルを握ったまま後ろ振り返り口を大きく開けている。女の方は外に逃げ出そうとしているのか、焦りながらシートベルトを外そうとしているようだった。


 車が急カーブを曲がるかのように左に大きく進路を変えた。そしてそのまま歩道の柵をなぎ倒しながら街路樹へと突っ込んでいく。激しい衝突音、車が一度真上に跳ね上がるようにして止まった。


「もしもし! 今目の前で事故が起きました! 急いで救急車を! 場所は――」


 すぐさまメアリーが119へと連絡をした。路肩に車を停めると急いで新城の車に駆け寄る。不幸中の幸いなのか、柵に当たったことで衝撃が弱まり車は大破まではしていない。だが気を失っているのか二人はシートの上でぐったりとしていた。


「どうだ息はあるか!?」


 孔雀さんがエンジンを止めながら新城のシートベルトを外しながら叫んだ。助手席の女の様子を見ていた瀬織ちゃんが答えた。


「はい! シートベルト外さなくてよかったですね」


 おそらく聞こえてないだろうけど、瀬織ちゃんは少しほっとしたように微笑みながら女に喋りかけていた。瀬織ちゃんがシートベルトを外し、僕が女を車から運び出した。孔雀さんの方も無事救出できたようだ。



「二人はどんな様子!?」


 息を切らしながらメアリーが走ってきた。火災の危険を考え、車から離れた場所に二人を寝かせていた。


「たいした怪我はない。まったく悪運の強い奴らだな。ちょっくら車を動かしてくる」


 そう言って孔雀さんは軽自動車の方へと小走りで向かった。


「ルームミラーと盗聴器は回収した方がいいかしら?」


 メアリーが事故車の方を見ながらそう言うと瀬織ちゃんが答えた。


「今は危ないので止めておきましょう。事故を起こした車はどういう処理をされるんですか?」


 瀬織ちゃんの質問にメアリーが答えていた。実は最後のとどめとして瀬織ちゃんは女性の幽霊と同じ格好をしていた。恐怖に陥った奴らの目の前に現れて脅かすという作戦だったのだ。成功したかどうかはわからないけど。



 そんな事を考えながら瀬織ちゃん達を見ていた時だった、背後で気を失っていたはずの新庄がむくりと起き上がった。辺りをキョロキョロと見渡し瀬織ちゃんの姿を見た瞬間、目を見開きながらなにかぶつぶつと喋っている。そしておもむろにジャケットの内側に手を入れた。


 ゆらりと起き上がったと思うと彼は突然瀬織ちゃんに向かって走り始めた。手には折り畳みナイフ。僕は無意識の内に大声を出した。


「瀬織ちゃん!!!」


 

 自分の声の残響が消えていくと同時に、新城の動きがスローモーションのようにゆっくりとなった。僕は地面を思いっきり蹴って二人の方へと駆け出した。


 僕の声に反応した瀬織ちゃんとメアリーが僕の方に振り返る。ふわりと揺れる彼女たちの髪の毛。その後ろからはナイフを構えた新城が、目を血走らせながら二人に迫る。


 急げ、急げ! 僕は渾身の力を込めて足を動かす。つんのめりそうになる体を必死に起こしながら一歩、一歩と前に進む。ようやく新庄に気づいたメアリーが瀬織ちゃんを庇うかのように体を入れ替えようとしている。


 新城がナイフを両手で握りしめ、突き上げるようにして前に出した。その軌道の先にあるのはメアリーの背中。


「グサッ――」


 なんとか間に合った……。新城の体ごと受け止めるようにして、僕は奴の前に立ち塞がった。


「コウヤっち!!!!」

「椋木さんっ!!!」


 二人の声が同時に聞こえた。その瞬間、周りの景色がいつものように動き出す。


「てめぇ!! 何してやがる!!!」


 孔雀さんの声がしたかと思うと、彼はすでに宙を飛んでいた。ものすごい勢いでドロップキックを喰らわすと新城は後ろへと吹っ飛んでいった。


 ふらりと倒れる僕をメアリーと瀬織ちゃんが抱きかかえるようにして支えた。


「コウヤっち!! コウヤっち!!」


 今にも泣きだしそうな顔でメアリーが僕を見ていた。大丈夫。こんな時小説なんかでは『たまたまポケットに入れていたナクトが僕を守ってくれた』みたいなオチになるはずだ。


 

 そんな台詞を言おうとメアリーの手を握る。すると彼女はその手にナクトをしっかりと握りしめていた。


「おお……ナクト……」


 これが最期の言葉なんて嫌だな、とか思いながら僕の意識は闇の中へと落ちていった。










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ