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不必要な僕の偉大なる発明  作者: 三毛猫ジョーラ


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47話 Pink baby's-breath


「えー本日はお集り頂きましてありがとうございます」


 今日は日下部家のリビングにあの日のメンバーが集まった。僕、メアリー、瀬織ちゃん。そして孔雀さんと西田くんに真綸ちゃん。


「そういうのいいからコウヤっち」


 メアリーが少し呆れた顔でそう言うと、真綸ちゃんだけがクスクスと笑っていた。瀬織ちゃんがすっと立ち上がり説明を始めたので、僕はさっと座り姿勢を正した。


「では私の方からコードネーム『ピンクベイビーブレス作戦』の説明をしていきます」


「ピンクベイビーブレス?」


 僕が思わずそう言うとメアリーが間髪入れずに答えた。


「ピンクのかすみ草ね。セオリンなかなか良いネーミングじゃない」


 メアリーの言葉に瀬織ちゃんは軽く微笑むと話を続けた。


「ターゲットは新城拓真、花田友香の両名。彼らは昨年の十二月、死亡事故を起こし逃亡。現在も捕まってません。今のところ有力な情報もなく、このままだといずれは公訴時効を迎えてしまうでしょう。私はそれが許せません。彼らにはその罪の重さを十分理解して貰おうと思っています」


 普段は冷静な瀬織ちゃんが珍しく感情を表に出していた。この前、被害者の方の話を聞いた僕とメアリーも同じ意見だ。他の三人にもその話はすでに伝えていた。


「おうよ! 思いっきりとっちめてやろうじゃないか。具体的にはどんなことするんだ? お嬢ちゃん」


 手のひらと拳をパチンと鳴らし、孔雀さんが威勢よく瀬織ちゃんに尋ねた。それから瀬織ちゃんが作戦の細かい説明を始めた。要約すると孔雀さんのドライブレコーダーに映った心霊映像をドライブ中の新庄に見せてやろうというものだった。


「じゃあ新城の車のルームミラーに映像が流れるようにすればいいんだね?」


 僕がそう言うと瀬織ちゃんが頷きながら答えた。


「はい。出来そうですか?」


「うんたぶんいけるよ。ミラー型のモニターにちょっと手を加えれば。じゃあそれは僕と西田くんでやるよ」


 僕の横にいた西田くんが無言で首を縦に振った。今日はいつになく真剣な眼差しだ。今回、作戦に参加してもらうため西田くんと真綸ちゃんにはナクトのことを全て話した。その時、西田くんはまるで僕を神の如く崇め、一方の真綸ちゃんは「へぇ~すご~い」とあまり驚いたような感じではなかった。



「それより新城の車に仕掛けるのが大変そうだけど……」


 僕の疑問に答えたのは孔雀さんだった。メアリーが調べたところによると新城の車は近々車検に出すようで、その車検を出す先が孔雀さんの知り合いらしい。すでに根回しはしているとのことだった。

 


「でもそいつらって幽霊見ただけで改心しますかね……?」


 西田くんが小さい声でぽつりと言った。確かにその不安は僕にもあった。おばけ嫌いの自分のことはとりあえず置いといて、はたして口封じのためにおそらく人殺しまでしているであろう人間に効果があるのだろうか?その時、やはりというかミステリー好きのメアリーが口を開いた。


「被害者が夢に出てきたりして犯人が自首するケースは実際にあるのよ。ギャングの帝王と呼ばれていたアル・カポネなんかも幽霊に取り憑かれ、霊媒師に除霊を頼んだこともあるそうよ」


 メアリーの言葉に受けるように瀬織ちゃんが話を続けた。


「今回の狙いはそこです。彼らを精神的に追い詰めて自らの罪を告白するまで徹底的にやります。そして作戦の直前にナクトで撮った事故映像を匿名で警察に送ります。そうすればたとえ彼らが自首しても出頭扱いになるので。決して減刑なんてさせませんから」



 瀬織ちゃんの力強い言葉で作戦会議は終了となった。並々ならぬ決意が彼女の表情からも見て取れる。あまり気負い過ぎてアクシデントが起きなければいいんだけど、と一抹の不安が僕の頭を少しよぎった。 




 それから二週間後。ついに作戦決行日を迎えた。


 僕とメアリー、そして瀬織ちゃんと孔雀さんは車で移動。そして真綸ちゃんを乗せた西田くんのバイクは現在、新城たちを尾行中だ。


 

 今日はさすがに孔雀タクシーの車ではなかった。僕ら四人が乗るのは黒の軽自動車。


「これってもしかして――」


 僕が言おうとする言葉を読んでいたかのように孔雀さんが答えた。


「ああ。こいつはあの木下ってやつが乗ってた車と同じ車種だ。もしあいつらが変な勘違いしたらおもしれえだろう?」


 そう言ってニヤリと笑う孔雀さんの顔は白塗りのメイクが施されている。おそらくこれも瀬織ちゃんの細かい作戦の一部なのだろう。しかも瀬織ちゃん自身も、顔が隠れるように髪を垂らし白い服を着ていた。まさにあの心霊映像の女性にかなり寄せてきている。


 助手席からちらりとルームミラー越しに見ると瀬織ちゃんと目が合った。


「ひぃ!」


「ちょっとコウヤっち。なんで今さらビビるのよ!?」


「いやだって、これは本物かと思うくらいの再現度だよ」


 僕は後部座席を振り返りながらメアリーにそう返した。横に座っている瀬織ちゃんがくすくすと笑っている。ちょうどその時、別班の西田くんから連絡が入った。


「ターゲットが動きだしました。現在神奈川方面に向かってます。到着予想はおそらうC地点。繰り返す。C地点に向かってください」


 車内の空気がピンと張り詰めたものに変わった。


「了解。ではピンクベイビーブレス作戦、開始します」


 瀬織ちゃんが作戦開始を告げると同時に車は静かに動き始めた。







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