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不必要な僕の偉大なる発明  作者: 三毛猫ジョーラ


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44話 メアリーとセオリー


 突然現れた瀬織ちゃんは最初に会った時のように制服姿で三つ編み眼鏡をしていた。メアリーと孔雀さんは一瞬「誰?」という表情をしたが、おれが瀬織ちゃんだと伝えると少し驚いた表情をしていた。


「だいぶ見た目が違うからわからなかったわ。久し振りねセオリン」


 やはりメアリーはセオリーと呼ぶと紛らわしいとのことでセオリンと呼ぶことにしたのだと言っていた。まあ僕らの周りでは誰もセオリーと呼ぶ人がいないのだけど。


「お久し振りです。孔雀さんもお元気そうで」


「ありがとよ。でもこうやって見るとあの時キムチの壺持って特攻していったお嬢ちゃんとは思えなえな」


 孔雀さんは腕組みしながら感心したような顔でそう言った。瀬織ちゃんは眼鏡を持ち上げながらにこやかに笑った。


「一応ピチピチのJKですので。ところでこんなとこで一体何を?」



 状況を説明したのはメアリーだった。要点を簡潔に伝えると瀬織ちゃんはあっという間に理解したようだ。


「うーん。確かにナクトの映像をどう説明するかでしょうか? ちょっと私にも映像を見せてもらっていいですか?」


 そう言われ僕が事故の映像を見せようとすると――


「あっまずは幽霊の方の映像からいいですか?」


 瀬織ちゃんの眼鏡がキラリと光った。彼女もおそらくメアリーと同じくこの手のものが好きに違いない。すでに見ているのも関わらずメアリーも瀬織ちゃんの横に並んでナクトを覗き込んでいる。


「おぉ、確かに消えてますね。顔が見えないのは光が屈折しているとかでしょうか?」


 瀬織ちゃんがそう言うとメアリーが間髪入れずに喋り始めた。


「それなんだけどね、私は宇宙空間みたいなもんだと思っていて――」


 なにやら二人で滾々《こんこん》と話を始めた。いつの間にか取り残されてしまった僕と孔雀さんは思わず目が合った。孔雀さんはうっすらと苦笑いを浮かべている。



「あのお二人さん?」


 僕が声を掛けると彼女たちは同時にこちらを見た。一瞬怒られるかと思いついつい声が小さくなってしまう。


「そろそろ事件の方をだね……」


「あーそうよね。ごめんねコウヤっち」


「すみません。メアリーさんの話が興味深くて……では事故の映像を見せてもらっていいですか?」



 再び事故映像がナクトの画面に流れた。やはり映像を見た瀬織ちゃんも眉根を寄せ険しい顔をしていた。そして犯人たちが逃走した所で録画した映像は切れた。


「ひどいですね……この続きはまだ見てないんですか?」


 瀬織ちゃんがそう言うとメアリーがそれに答えた。


「そういえばまだだったわね。たぶんこの後通報した人が映ってるはず」


 瀬織ちゃんがそうだとばかりに頷いた。僕は先程と同じ場所でナクトを使った。時間を少し戻し犯人が逃走するところから映像が始まった。


 犯人逃走から約二分後、一台のタクシーが停まる。中から慌てた様子で出てきた運転手が倒れている女性に駆け寄っている。そしてすぐさま電話をかけ始めた。おそらく救急車か警察に連絡しているのだろう。


「これはみかどタクシーだな」


 孔雀さんの言う通り、タクシーの行灯には帝の文字が書いてあった。そのタクシーは倒れた女性の後ろにハザードランプを点滅させながら停まっている。事故かと思ったのか、他の車も何台かが近くに停車した。しばらくして救急車や警察車両が到着し現場はやや騒然となっていた。僕は一旦ナクトのカメラをオフにした。


「ちょっとひとつ気なることが……」


 瀬織ちゃんが眼鏡を上げながらそう言うとメアリーがちらりと彼女を見た。


「もしかして黒い軽自動車?」


「ええ、タクシーが停まったすぐ後に通り過ぎて行った車ですね」


「私もちょっと気になった」


「僕はまったく気づきませんでした……」


「同じく」と孔雀さんが右手を挙げた。セオリー同様、どうやらメアリーも捨て目が利くようだ。ここはお二人の邪魔にならないようにと僕はナクトを彼女たちに渡した。



 まず二人は犯人たちを至近距離から見るようだ。犯人の車のナンバー、そして男女二人の顔がばっちりとナクトに映し出される。


「だれ、も、見て、ないわ。逃げ、ましょう、タクマ。ですかね」


 女の方がなにやら叫んでいる映像に合わせ瀬織ちゃんがそう言った。メアリーはぱっと驚いた表情で振り返った。


「もしかしてセオリン読唇術ができるの!?」


「それほど精度は高くないですが。これくらいなら合ってると思います」


「コウヤっち……この子は一体?」


 メアリーが目を大きく開けながら僕を見た。「あはは……」と僕は笑い返すしかなかった。その時だった、画面を指差しながら瀬織ちゃんがわずかに声を上げた。


「後ろ! ちょっと離れてるけど車が停まってませんか?」


 彼女の言う通り、目を凝らして見ると事故現場のだいぶ後方に黒い軽自動車が停まっている。僕らはその車が停まっている場所へと急いだ。


 メアリーが車内が見える角度にナクトを合わせると、中にはひとりの若い男が乗っていた。車のライトは消しているが、暖房のためかどうやらエンジンはつけているようだ。そして事故が起きた時刻、スマホをいじっていた男は驚いたように体を起こし前方を見遣っていた。


「この人、事故を目撃してたんだわ……」


 メアリーがナクトの画面をじっと見ながらそう呟いた。






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