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第27話 転売大作戦!

「ありがとう。でもよミーシャ、なんかド派手ですげえ作戦があんのか?」


 目標は決まった。

 ミーシャも何か考えがあるらしい。

 だからといって状況は何も進展しちゃいない、これから始まるんだ。


 頭をぐるぐるさせながら、遠くをぼーっと見る。

 

「うーん、一応いろいろ考えてるけど、それだけじゃ足りないなぁ。シンプルに戦力不足だ」

「……そうかぁ。ヴィーナスは何かこう、手下の騎士とか持ってねえの?」

「私は今、厳密に言えば騎士ではない」

「あー、おっけ」


 ほぼコスプレじゃん。


 ヴィーナスの立場的に、それなりのパワーがあると思ったんだけど頼れないか。

 

「戦力……戦力ぅ、ね」


 正直言って戦力で言えば、この街にはたくさん転がってる。

 どうにかして動かせたらいいだけど……何か手立てはねえだろうか。


 まず、式場まで動かす方法……は、


「ん〜?」


 目を凝らす。

 ここのところずっと目についてる。

 

 あれは……あの、弱者を制する悪どいやり方は──


「て……転売だ!!」


 馬鹿な頭に天啓が降りてくる。

 にかーっと歯を剥いた俺を見て、ミーシャはにししと破顔したのだった。


「面白いじゃん」



♧♧♧♧♧♧♧



「おいおい、何だってんだエルさんや。俺たちにゃ此処はマブイぜ」

「ククルの姐さんがいないんじゃ……話があるなら聞くだけ聞いてやりますよ」


 そこかしこから愚痴が聞こえてくる。

 ()()()()()()を利用して、敗北者の縄張り(ルーザー・ポイント)の連中──すなわち、この街で一番地位が低くククルの招待状にありつけていないであろう層に声をかけた。


 いつぞやのグランツみたいに広場の壇上に立ったりは──しない。

 普通にギルドの酒場だ。


「ぁ、あ〜、うん。こほん」


 くっそ、慣れねえことするもんじゃねえな。


「……集まってくれてありがとうございます。本当に、ありがとう。心強いです」


 まずは感謝を。

 五十人くらい集まってくれた。

 ありがたい限りだ。

 彼らにとって、()()()()()()っていうのは、それだけでも話を聞くに値するのだろう。


 俺はこれを──利用する。

 この街でククルが築いたもの全てを、余すことなく。


「心強いって……そんな事無いよ。S Sランクのアンタらから見ればカスみたいなもんでしょ」


 妙齢な女性が、萎びれた声でそんな悲しいことを言った。

 確かに俺との比較は成り立たないくらいの実力差はあるだろうけど、それでも彼女含め敗北者の縄張り(ルーザー・ポイント)の面々は皆、世界的に見れば強者だ。


 平均値が高すぎるこの街においては劣っているという──それだけの話。


「確かに……ですが、俺から見れば現役でやってる探窟家も大差ない。けど……所詮は個人の力だ。例えば、俺一人で戦争を仕掛けることなんて出来やしない」


「何が言いたいんだい? 戦争でもする気かい?」

「その通りです」

「……っ、本気かい」


 どよめきが走る。

 喧騒が大きくなる前に、場の音を制御して俺の声だけがよく響くように作り替えた。


「みんなは()()を持っていますか?」


 異変を察知した彼らが、俺の掲げる結婚式招待状(チケット)に目を向けたので音魔法を解除する。

 彼らはすぐにこれが何なのかを理解して、悔しそうに目を背けた。

 

 予想通りの反応だ。

 なので、


「これ、あげます」

「「!?」」

「もちろん、条件付きで」

「「……」」


 面白いように乱高下するテンション。

 ククルと彼らの関係性がよく伝わってくる。

 

 何も無ければ無料(ただ)であげたいところだけど、これはボランティア活動じゃない。


 俺だって転売ヤーから大量に買い上げてるんだからな──!

 元値の100倍とかザラだったし、はらわたが煮え繰り返る思いだったぜ。


「……ククルねーさんの晴れ姿見たかったなぁ。相手はグランツだけどっ」「中指立てる準備は出来てるのに……!」


 ────

 ──


 などなど、落胆の声と彼らの密かな願望が聞こえてくる。

 これはイケそうだ──と、気を引き締め直すためにミーシャとヴィーナスを視界に入れて心の安定化を試みる。

 大丈夫、俺はやれる。できる。

 完全有利なプレゼンくらい、気合で乗り切れ。


「──落胆するには早いです」


 酒場の外に音が漏れないよう魔法を展開。

 おかしな仮面を被ってる奴がいないか、これも再確認。

 一応、背景が怪しい奴は省いてるつもりだけど、慎重にいこう。


 軽く息を吐いて言葉をつなぐ。


「まず、ククルの結婚式について賛成の人はどれだけいますか?」


「「……」」


 快い返事はない。


「ですよね、そもそもグランツっていきなり何すかって感じです。まぁ……彼女が幸せなら、とは思うんすけど──実際、どうなんでしょうね。ククルには追ってこないでくれと言われましたけど……」


 思いのままに語る。

 半分愚痴みたいなもんだけど、みんな親身に聞いてくれる。

 中でも、さっきの女性は特別真剣だ。


「ははっ、アンタ。分かってないね。ククルちゃんはそういう時、本音は建前に隠すんだよ」

「……そんな、拒絶の言葉じゃなかったって事ですか?」

「青い、青すぎるわ。相棒のくせに分かって無さすぎよ」

「なんかすんません……」


 説教されてしまった。

 気の強い、かの女性を筆頭に次々に声が上がる。

 

 そも、俺よりも長く過ごしてきた彼らもグランツとククルが良い関係にあるなんて全く思ってないみたいで、それどころか何とかして中止に出来ないものかと思っているらしい。


「あ、こほんっ、う、うんっ。そんで、続きいいっすか?」

「はいよ」


 あれ、なんか形勢逆転してね?

 気を取り直して──


「条件なんすけど。結婚式破壊すんの手伝って欲しいっす」


 ──どう、だ? もっと訴えかけるように……。


 俺に詐欺師みたいな言い回しなんて出来るわけないんだ。


「っ、多分、協力をお願いできるのは皆さんだけです。だから、だから──」


「なぁに言ってんのさ」

「あ」


 遮られ、掲げていたチケットをさっきの女性にひったくられる。

 彼女は悪戯っぽく、ほうれい線の走った顔をくしゃっとさせて笑う。


「アタシ、ブラウン。協力させてくれ。これでもククルちゃんの姐気分やってたんだよ」

「いいんすか……? こんな、馬鹿げた話に乗って」

「馬鹿げてる? それこそ何言ってのさ。この街にまともな奴は一人としていないよ。それに、こんな面白い祭りごと──枯れて死んだように生きるアタシらにとっちゃ願ってもない!」


 年輪を重ねた手でチケットを握りしめ、「全員分出しな」と顎をしゃくり上げる。

 俺はへらっ──と口角を上げてチケットを差し出すと、よろよろとその場にしゃがみ込んだ。


「あいつ、すげえ探窟家だったんだな……」


 とんでもねえ事しでかそうってのに、こんな簡単に受け入れてくれるなんて……。


 この街に初めて来たときに感じたククルという存在の大きさ、それはそれは想像以上のものだったらしい。


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