80話 ハンターギルドで情報収集、終わらぬ戦争、次の行先決定
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10月28日金曜日、今日は迷宮のお休みの日です。奴隷たちにもお小遣いをあげて遊びに行かせました。何をしているのかまでは知りません。纏まってるかもバラバラなのかも分かりません。気にはなるけど、プライバシーは守りますよ。
で、俺はというとハンターギルドに情報収集ですね。主に戦争が終わっているかの確認です。まだやってるとか嘘だと言って欲しい。
あれだけ士気をガン削りしたんですよ? 終わってもいいでしょうに。殲滅が足りなかったか? 20万は殺ったと思うんだがな。それ以上にも散らしたし。
あれだけやってまだ壊走しない兵士がいるんですね。士気は最低クラスだと思うんですが、もうひと暴れ足りなかったか?
全体の3割ほどは殺したり逃げたりしたはずなんですが、普通全滅判定になりませんかね? もしかして、戦術が無いおかげでそれでもまだ戦えるのか?
でもそうなると数こそがパワーになるんだと思うんですが、どうなんだろう。数で負けてしまっている分どうにも成らないと思うんですが。
そんな訳で、ハンターギルドにやってきました。……知らない顔ですね。別に誰でもいいんですが、知っている顔もそんなに多くないですし。まあ当然なんですが。利用しないからな。
「こんにちは。戦争はどうなっていますか?」
「戦争? まだまだ終わらんだろうな。報酬を貰いたいのは解ってるが、もう少し時間がかかる」
「……マジですか。あんだけ殺ってまだまだかかるんですか」
「なんだ? あの殲滅ラズレイか? ……特徴は一致するな。ああ、まだまだ終わらんだろうな。食料が尽きるまでは居座るだろう」
「……いつの間にそんな2つ名が? 初めて聞いたんですが」
「うちの偵察部隊が唖然としてたぞ。変な魔法で前線を壊滅させた奴がいたってな。徴兵兵も殆ど逃げたみたいだしよ。後は正規兵だけだ。だから猶更時間がかかるぞ」
「あの、何で殲滅して猶更時間がかかる様になるんですか? 普通引きません?」
「まあ、言いたいことは解るがな。要するに、荷物持ちも減ったが、食料を食う奴も減ったわけだ。それならまだ居座れるだろう? 荷物持ちもどんだけ殺したのか知らんが、兵を1か月は食わせるだけの食料があると言われてたんだ」
「それは何ですか? 食料が尽きるまでが戦争なんですか?」
「そうだが? ……言いたいことは解る。だが、これが戦争だ。貴族様のお遊びみたいなもんだよ。だからハンターも1日しか戦わないんだ。義理で戦ってるだけだよ」
「はー。馬鹿しかいないんですかね? もう勝ち目は無いでしょうに」
「向こうにもメンツってもんがあるんだろうよ。負けて帰ったんじゃない。食料が尽きるまで粘られたんだってな。どうでもいいのによ」
「メンツなんてもう潰れているようなものでしょうに。で、今はどんな規模で戦争してるんですか?」
「流石に徴兵してきた兵共は帰らせたぞ? だから100万対60万って所だろうな。こっちが100万だ。神官にも給金が出てるからよ。神官は頑張ってるぜ」
「まだ60万もいるんですか。大分殺ったと思ってたんですけど、まだまだいますね」
「十分仕事は果たしただろ。今回のはこっちの貴族様が悪い。まあ干されることは確定してるからな。少しでも挽回しておきたいんじゃないか? 激を飛ばしているらしいぞ?」
「ああ、こっちのも馬鹿貴族でしたね。あの馬鹿も悪あがきにしか成らんでしょうに。結論は変わらんでしょ」
「だろうな。すでに名前が市井に広まっちまったからな。ハンター界隈にはそれは盛大に広まっちまったぞ? 絶対に次は落ちるだろうな。因みにアラン=バードリィー男爵だな」
「でしょうね。下手をしなくても派閥を追い出されるくらいはされそうですね。別の誰かを送り込んで来るんでしょうか?」
「じゃないか? 流石に悪名が売れすぎてる。家名も違う奴を引っ張ってくるだろうな」
「そうするでしょうね。……それで、俺の2つ名は何処まで広まってるんです?」
「今の所ハンター界隈と探索者界隈くらいじゃないか? 冒険者までは解らん。兼任してるのが大体は探索者だから探索者には広まってるんじゃないか?」
「……昨日までは何も言われなかったんですが、どうなんだろう」
「声は掛けんだろう。掛けの対象になるくらいで。掛けに負けた奴が今後声を掛けてくるかもしれない程度だろ。2つ名を獲得することなんて滅多に無いことだぞ。喜んでおけよ」
「あんまり喜べないんですけど……。戦争は何時頃終わりそうですか?」
「そうだな。後2週間持つか持たないかだとは思うけどな。一応、偵察兵には聞き耳を立てて貰ってる。そのくらいはしても問題無いからな」
「……そこまでするんなら夜襲や焼き討ちくらいはしてもいいんじゃないですか?」
「おいおい、なんだそのえげつない作戦は。夜襲をするだあ? どうしたらそんな発想になる? それに焼き討ちって人を燃やせってか?」
「ええ、それくらいはやってもいいんじゃないかって思うんですが?」
「お前は悪魔か何かか? ……悪魔は知ってるよな?」
「悪辣な魔物でしょ? 手段を選ばないと聞いています。そのくらいは知ってますが、そこまで言いますか?」
「ああ、俺は悪魔だと思ったね。何で夜襲なんて思い付いた?」
「夜に寝ればHPが回復してしまうじゃないですか。それを防ぐためには夜に戦闘をすればいいんですよ。寝る間も無ければHPが回復しないでしょ?」
「いや、まあ、その通りだが。……じゃあ焼き討ちってのは何でだ?」
「HPが回復しきる前に攻撃をしたいじゃないですか。じゃあ火を着ければHPを減らせるし、貫通して焼死しますよね。それに煙を吸うと人種は倒れて動けなくなりますしね」
「……お前さんの2つ名を付けた奴は間違えたとそう思うよ」
「いや、このくらいは思い付きませんか? 盗賊相手にも夜襲くらいはするでしょ?」
「いや、知らねえな。基本的に昼間に戦ってるんじゃ無いか? 夜に戦うのは暗殺者くらいだぞ」
「……戦術そのものが飛んでしまっているのか? そんな訳無いよな?」
「ん? どうした?」
「盗賊相手に夜襲をしないのは何でですか? 焼き討ちも効果有りそうなのに」
「そこまでせんでも勝てるからだな。奇襲はするが、それで勝てる。負ける奴らも負けたらそこで仕舞いな場合が多いからな。そんな事を考える奴がいるとは思わなかったな」
「もう少し楽に勝てる様にしましょうよ。盗賊しかり戦争しかり」
「っつってもなあ。戦争は無理だろ? 何か手はあるのか?」
「毎晩夜襲と焼き討ちをすれば問題ないとは思いますが、そうですね。聞き耳を立てて貰っている偵察兵さんに食料を出している人を特定してもらって、毎晩1人か2人ずつでも暗殺すれば早く終わりますよ」
「……やっぱりお前は悪魔か何かだよ。普通はそんな事思い付かねえよ」
「まあ、普通に全部殲滅する方が早いとは思いますけどね。あんなことをやれとは他の人には言えませんし」
「普通は殲滅なんてできんのだがな。HPが残っている内に引くんだからな。……神官をやったのもお前なんだろ?」
「ええ、殺りましたね。回復する人を一番初めに潰す、当然の事だと思ってましたよ」
「そう考えるなら、今後は攻め側は神官を連れてこれねえな。教会が絶対に出さねえ」
「でしょうね。外壁の上から狙い放題でしたから」
「射程外に置いても意味がないからなあ。今回みたいに外壁の上からの攻撃を許すとな」
「普通はそれも考えるでしょ。ベテランハンター程そう思っていたみたいですけど」
「まあなあ。1人でやると効果は薄いし、ポーションも回ってこねえから意味無いけどよ。今回みたいに大勢で補給有りだと完全に機能しちまったからな。次からはそうするんじゃねえか?」
「貴族が雇用契約を変えなければですけどね。外壁の上で攻撃しろと書かれてたんですから外壁の上から攻撃したまでです。野戦でも適応範囲でしょう?」
「まあ、砲撃戦しか想定していなかった貴族側が悪いわな。魔法使いのメインはそっちだからな」
「あの魔法使いの雇用はなんでなんですか? あんまり意味無い様な感じじゃないですか」
「外壁の修理にそれ以上の金がかかるからだよ。魔法使いが少しでも打ち落とせば、余裕でお釣りがくるからな。死んでくれればさらにお得だろ?」
「なるほど、それでわざわざ外壁の上でなんですか。あわよくば砲撃戦の終盤で死んでくれるように。まあ抜け道は沢山ありますけどね」
「ほう、例えばどんな?」
「かなり端の方に行けばいいんですよ。狙うのは門の周辺じゃないですか。端っこならそうそう死にませんよ。ベテラン勢もやってることですよ」
「模範解答だな。それはそうなんだよな。端っこでやれば文句は言われねえ。で? 外壁の上の縛りが無かったらどうするつもりだ?」
「そうですね……林の中から攻撃しますかね。撃ち落とせれば儲けもので」
「まあ、それも有りだわな。今後はどうなっていくことかねえ」
「魔法使いは外壁の上で待機が一番だと思いますよ。普通の兵士にしたって魔法使いを前衛に出したって意味無いじゃないですか」
「そりゃそうだ。魔法使いは後衛だからな」
「そんなの常識ですよ、常識。まあ、上の位置をとるのは基本です。敵は上の位置を取れないんですから。外壁に登らせないための砲撃戦だと思ってたんですが、違うんですか?」
「違うな。向こうは門さえ壊れればいいんだからな。基本的にはな。ついでに魔法使いも何人かやれればいいな程度にしか考えてないだろ」
「門なんて後で壊しても一緒じゃないですか……何で先に壊す必要があるのか分かりませんね」
「一応、こっちの魔道砲を攻撃しておきたいのもあるんだろ。移動しながらは撃てないからな」
「あーそれもあるんですか。……ほぼ、無意味じゃないですか? 殆ど壊せてないどころか、門周辺のしか壊れてませんでしたよ?」
「門を狙ってるからなあ……そこは相手さんに聞いてみないと解らんが」
「門なんていつでも壊せる物よりもやることは他にあるでしょうよ。まずはこちらの兵器を叩くことが先決でしょうに」
「普通はそう思うよな? 何でか知らんが門を攻撃してくるからな。狙いが分かりやすい分防御もし易くなるからいいんだけどよ」
「最終的には物量に負けますがね。仕方ないとは思いますが。そう言えば報奨金の上乗せってどんな感じになってますか? 交渉は捗ってますか?」
「そこは安心しろ。要望通りの金額をちゃんと確保してやるからよ。お前は……8000兆サルンだったか。まあそんくらい吹っ掛けたって文句は言えねえだろ。何しろ殲滅ラズレイだからな。名声が大きくていいじゃねえか」
「あー、それには効果があるんですね。いい思いもしないと2つ名なんて要らんですからね」
「まあ、ふんだくることはふんだくるんだ。ギルドの運営費もあるんだから額面以上は吹っ掛けるさ。足りねえなんてことは無いだろ」
「うわー、これを機に稼ぐわけですか。中々に悪辣じゃないですか」
「当然の権利だな。交渉役がいつも以上に気合が入っていたからな。俺らもボーナスが出そうで嬉しいことだよ」
「そう言う利点もあるんですか。そう言えば他の町のハンターって仕事があるんですか? 余り無さそうなイメージなんですけど」
「他の町の奴らは盗賊狩りの方が忙しいぞ。つっても月に1回か2回しか仕事に成らねえがな」
「むしろそんなに有りますか? 盗賊の被害って」
「ああ、あるぞ。この辺は国境の迷宮都市だから大人しいが、他の所は忙しい。なんせ、ここへの援軍を減らさなきゃいけないんだからな。敵の兵士が親玉の盗賊団がたんまりあるのよ」
「盗賊はどんな人がなるんですか?」
「大体は冒険者崩れだな。冒険者も採取をちゃんと覚えれば食っていけるってのによ。覚えようともしねえからな。お前も勘違いしてねえか?」
「……してそうですね。冒険者って魔物狩りが主な収入じゃないんですか?」
「やっぱりなあ……食っていける冒険者の8割が採取をちゃんとやってる冒険者だ。戦闘だけで食っていけるのは2割いればいい方だ。全体の2割ほどが採取ができる冒険者だな。それ以外は採取を知らねえからな」
「知りませんでしたね。冒険者は戦闘でやっていくものだとばかり思ってました。それに薬草や素材となる植物の見分けがつきません」
「冒険者ギルドに書庫があるからそこで覚えるんだよ。結構金になるもんがそこらへんに転がっているもんだぜ? 知らないだけでな。まあ殲滅ラズレイは迷宮で食っていけるんだから知識も要らねえかも知れねえがな」
「ですね。俺の場合は収入源が迷宮ですから」
「他のハンターも似たようなもんだよ。採取をやってるハンターも少ないもんだ。冒険者以上に少ない。主な収入源は今回みたいな戦争だからな。迷宮でも稼いでいるがな」
「この辺じゃあ野盗狩りも少ないんですよね?」
「他に比べてな。野盗が集まらねえんだよな。迷宮があるからよ。だからハンターも少なくていいんだが、戦争はそれ以上に旨味があるからな。どうしてもハンターの数が増える」
「……他の町に行くときは野盗、盗賊に気を付けないといけない訳ですか。なるほど」
「なんだ? 移動すんのか?」
「ええ、どれくらいになるかは分かりませんが、移動はします。もっとランクの高い迷宮に行こうと思ってます」
「成る程な。根は探索者な訳だ。つうと次はBランクかAランクかって所か」
「Aランクを考えてますね。いい所は有りますか?」
「そうだな。迷宮都市クアンサなんかどうだ? あそこも迷宮が2つある都市なんだがな。DランクとAランクがあったはずだな。丁度ロデストリア王国の反対側の国境だ。メルトルデ王国との国境線だな」
「……何故に国境を? 他にもあるでしょう?」
「戦力を遊ばせとくのはもったいねえだろ? あそこも戦争地帯だから中々にいい都市だぞ。外壁もここと一緒位の規模があるし、Aランクの迷宮だからな。戦力も中々に揃ってはいるが、その分狙われやすい。ここよりも戦争が多いはずだ。儲けるにはいい都市だ。それに近くにはオリハルコンの鉱山がある。って言ってもオリハルコンを体内に持つゴーレムが産まれやすい土地ってだけだけどな。そこで武器を揃えればSランク迷宮も夢じゃ無いだろ」
「なるほど、それは良いことを聞きました。次の目的地は迷宮都市クアンサにしましょうか」
「おう、メルトルデ王国との戦争の戦果も期待してるぜ」
「……ここの都市出身の探索者も多くいるんですか?」
「まあな。ハンターとしてやっていくにも向こうの方がいいからよ。ここで物足りない奴らが次に行く場所って言ったらクアンサだからな」
「なるほど、順当な順路に乗っているという訳ですか。Bランクと言っても候補はあったんですか?」
「Bもあるが、あっちはなあ……人気が無いんだよ。海岸沿いにあるんだが、海のフィールドなんだ。マーマンならおすすめなんだがな。エルフにはそんなに向いてねえな」
「国境ですよね? 国境以外には無いんですか?」
「いや、割とあるぞ。ただ、ハンターが生きやすいのは国境沿いの迷宮都市だろ。内地の迷宮都市は探索者ギルドで聞いてくれ。それなりに人気の所とかを教えてくれるぞ」
「まあ、クアンサに行ってみますけど。何かと良いことが有りそうですし」
「向こうの方が都市の規模もデカいからいい感じだぞ。ロデストリア王国一番の戦争どころだ」
「まあDランクとAランクと2つも迷宮があるんですからね。メルトルデ王国も欲しい所でしょうしね。別に戦争をしに行く訳じゃ無いんですけど」
「戦争には巻き込まれるさ。なんせ小さいものなら年に2、3回やってるからな」
「小さい戦争は無意味でしょうに……。何処も戦争ですね」
「まあな。王国が5つに割れたのも最近の話だしな。そこはしょうがねえよ。人口も余ってるんだろうからよ」
「もうちょっと平和になりませんかねえ。迷宮に専念したいんですけどね」
「無理だろ。争いごとの無かった帝国時代がおかしかっただけだ。大分平和を満喫したんだから、今度は戦争の時代だよ。多分な」
「ですか。はー、また来ます。そのころには報奨金が決まっていると嬉しいですが」
「どうだろうなあ。交渉も纏まるか解らんしな。期待しないで来てくれよ。間違いなくぶんどって見せるが、時間がかかる可能性はある」
「そうですか。また明日から迷宮暮らしですよ。商業ギルドにでも行ってみるかな」
そんな訳で、情報収集終わり。まあ次の目的地も決まりでいいでしょう。戦争も有れば有ったで巻き込まれるんでしょうし、内地でも何かしら巻き込まれるんですからこれでいいんです。
どのくらいでこの都市を出ましょうか。……年明けくらいにしときますかね。そのくらいにしましょうか。さて、明日はアリの巣です。今度もがっつりと稼ぎましょう。




