表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雨上がりに僕らは駆けていく Part1  作者: 平木明日香
90/698

星の降る夜 第89話


 胸ぐらを掴み、男子トイレのドアの前で亮平を睨む。



 「おい」


 「イッタ!なんや」


 「なんややないやろ。今のはなんや!?」



 驚きのあまり声を上げそうになったが、セーフ。


 その前に亮平をここまで連行することができた。



 「そない怒るなや。それに話の途中なんやが」



 話の途中?


 ふざけんな!


 あんた私に余計なこと言うなって言ったじゃん!



 「…ああ、あれな」


 「「あれな」やないねん。なに考えとんあんた」



 さっぱりわからない。


 なにがって、そりゃ「なにもかも」だ。


 亮平が未来から来たということを禁句にしているわけじゃない。


 昨日のことを話さない理由もない。


 ただ、なんとなく、「話してはいけない」ことのように思えてた。


 どうせ言ったって信じてくれないだろうし、あんたもそう思ったんでしょ?



 「…まぁ、そうやけど。それより「話」があるんやって」


 「話ってなんや?」


 「せやからそれを今言おうとしてる」


 「今話せぇ」


 「長くなるんやって」


 「意味わからんのやけど…。黙ってろっていうから黙ってたんやが?なにが「未来から来た」や」


 「悪い悪い。色々説明不足やったわ」


 「説明不足て何やねん」



 大体皆になんて言うわけ?


 私が事故に遭って過去に戻ってきたとか?


 50年後の未来から「情報だけがアップロードされてる」とか?


 冷静に考えて、絶対に信じてくれないでしょ。


 それぐらいは私にだってわかる。



 「せやから“余計なこと”は省きたい。さっきお前に文章見せたんは、話をややこしくしてほしくなかったからや」



 はあ?


 そもそもこの「話」はするべきじゃなくない?


 余計ややこしくなるだけだし…



 そう聞くと、亮平はさらに予想外の発言をした。



 「アキラが、将来死ぬかもしれんのやで?」




 は?


 な、んだ…、なんて言った?


 死ぬ?



 アキラが?



 「まあ、詳しいことは後で言うが、アキラも綺音も、このままやと地獄を見る。あいつらの未来を変えてやりたい。お前も言うたやん。「今」を大切に生きろって。せやからまずは、自分にできることをしようと思う。千冬に説得するんはその後でもええやろ?時間はまだあるんやから」



 「ちょ、ちょっと待って…。なにそれ…、どゆこと?」



 思考停止してしまった。


 亮平が何か言ってるが、全然頭に入らない。



 「まあ、その話は今は…。とにかく、余計なことは言わんように。俺が全部言うから」



 …いや、待て待て。


 あんたほんとに65歳か??


 私よりバカなんじゃないの?!



 「言うって、何を言うん?信じてくれると思うか?」



 亮平は「任しとき」と言って、私の手を振り払い席に戻った。



 ちょっと待ってよ!!



 仕方なく私も後を追って戻るが、アキラが不思議そうに見てる。


 綺音はパンケーキに夢中で全く話を聞いていないようだったが…



 「どしたん、急に」



 アキラはそう言うが、私はなんて言ったらいいか分からない。


 おい亮平、どうするんだよ…



 「さっきの話の続きやが…」


 「話、って?」


 「未来から来たっていう…」



 うあああ、絶対アホだこいつ…。


 もっと他に言葉ないの??


 「未来」から来たとか、誰も信じるわけないじゃん。


 大体私だって信じなかったんだし、唐突にそんなSFチックなこと言われても、誰も対応できるわけない。



 「ハハッ、おもろいやん。急に」



 面白いでしょ?


 …ただのバカなんだよ、こいつ。


 あとでちゃんと説教しとくから。



 「ってことで、その証拠を見せる」



 すると亮平はメモ帳を取り出して、そこに文字を書き始めた。



 「今から起こることを予言したら、俺が「未来人」やってことを信じてくれるか?」


 「あぁ…、構わへんよ、別に」



 アキラは人が良いから、亮平の発言に対して柔軟に対応している。


 どんな面白い展開になるんだろうって、エンタメの番組を見るかのように。



 『17時58分 関東地方で地震 震度3』



 「スマホ画面開いて。その時間になったら地震速報のニュースで流れる。よぅ見とき」



 …そんなバカなと、アキラはスマホを開くが、半ば面白そうに笑ってる。



 17時58分まではあと10分。



 …時計をまじまじと見る。



 そうか、亮平が未来から来ているなら、過去の情報を知っているということか。


 その手があったかと感心するが、逆に不安になる部分もあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ