第691話
午後3時30分。
目をこすりながら時計を見ると、チャイムが鳴って、今日の最後の授業が終わった。
6限目は数学だった。
今日の一日のスケジュールが折りたたまれた傘のように、スムーズに終わる。
首を持ち上げるように身体を起こして、思いっきり背筋を伸ばした。
キーンコーンカーンコーン…
はあ、終わった終わった。
休憩時間を挟んでホームルームが始まり、日直が黒板を消す。
廊下ではガヤガヤと騒がしい声が聞こえた。
階段を駆け降りる音や、席に着くクラスメイト。
プリントが配られ、世間話に花を咲かせる担任の先生。
ナベ先生の話は長くて困る。
早いクラスは、5分もしたらさっさと掃除の時間に移ってるっていうのに。
今日は夜に花火大会があるから、部活も早く切り上げて家に帰ることにしていた。
元々そんな気はなかったんだけど、先輩も早く祭りに行きたかったみたいで、前々から顧問にお願いしてたみたいだった。
市内で一番大きい祭りだし、そんなに人数も多くないゆるーい部だったから、すんなりオッケーをもらったみたいだった。
「ほなまた明日なー!」
恭子と葵、あと美央の3人と、元町駅で合流する予定だ。
他のクラスメイトとも別れ、下駄箱から靴を取り出した。
放課後のチャイムと、午後5時の夕暮れ。
校庭のフェンス前でB組の岩崎くんと話をしてた。
彼とは中学でも一緒だった。
けっこう面白くて、よく話したりするんだよね。
テニス部に入らないか?って、最近うるさくてさ。
時間が経つのはあっという間だ。
カレンダーはもう9月で、秋がもう目の前に。
つい最近入学式を終えたばかりの気がするけど、もう2学期なんて信じられない。
入学した頃の、そわそわしてた自分が懐かしい。
あの頃はどうなるかと思ってた。
周りは知らない人たちばかりで、ちゃんと友達もできるかな?って不安だった。
おかげさまでいいクラスに巡り会え、今じゃ、学校に来るのが楽しいけど。




