第681話
自転車を漕ぐ音に釣られて、ふと空を見上げると、不思議と、雨上がりの青い景色が、どこまでも続いてる気がした。
こうして亮平と2人でいる時間が、もうずいぶんと昔から続いてるような気がして。
彼はそんなことないだろうけど、カレンダーをめくるたびに感じてる。
今日は今日で、昨日は昨日。
それなのにどこか、時間を全部ないまぜにしたかのような色合いが、日常の真隣に感じられて…
スイカ割りした夏の合宿。
川沿いのバーベキュー。
冬のライトアップに、桜の並木道を散歩した4月。
おはようもおやすみも、もう数えきれないくらいだ。
鍋パでやらかした時も、恋バナで盛り上がった時も、夜の林間学校で、死ぬほど怖い思いをした時も。
亮平のやつ、最近眉毛を整え始めてるんだよね。
プチモテ期が到来してるみたいで。
ちゃんと自分の顔鏡で見ろよって言ったら怒られた。
言っとくけど、あんたなんか翔君と比べたら月とすっぽんなんだから、少しくらいは部を弁えなさいよ?
モテてる要因はまあ剣道が強いっていうことと、背が伸びたことくらいかな?
他に理由なんて思いつかないし。
「楓、ちゃんと支度した?」
「してるよ」
焼きたての食パンをくわえながら、靴紐を結んでた。
朝の身支度を済ませ、肩にかけたショルダーバック。
今日は日曜日だが、大事な日でもある。
夏の全国大会に向けた県予選が始まるんだ。
最後の大会なわけじゃないけど、ここまで色々準備してきた。
アイツには言ってないけど、正直全国制覇とか、そんな大それたことを期待してるつもりはないんだ。
なんなら、1回戦敗退とかでも構わない。
そんなこと言ったら、きっと怒るだろうけど。




