表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雨上がりに僕らは駆けていく Part1  作者: 平木明日香
681/698

第680話


 亮平の自転車の後ろに乗ると、いつも、背筋がピンと伸びるような気がした。


 緊張するとか、そういうんじゃない。


 むしろ、その逆だ。


 思いっきり背中を伸ばした時のような気持ち良さが、明るい日差しの下に広がる。


 後部座席もちゃんと改造したんだ。


 既製品のシートじゃ硬すぎて座りにくいから、ホームセンターで色々吟味して改造した。


 時々亮平の方が寝坊で来ない時があるが、そういう時は私が出向いてる。


 さっさと起きろと2階の窓に声を掛ければ、無言で支度を始める彼がいる。


 ドタドタドタドタという忙しない音に、むくんだ顔。


 お互い寝坊してやばい時が1回あったけど、あの時は一緒にバス停までダッシュした。


 ドアが閉まって大変だったが、後ろから猛ダッシュで追いかけてたら止まってくれたんだ。


 優しい運転手さんだった。



 自転車で色んなところに行った。


 学校だけじゃない。


 海はもちろん、繁華街や郊外、ショッピングモールに水族館、元町の高架下や線路、大阪湾の見渡せる西宮の港。


 スイーツ巡りの旅や、ラーメンの食べ歩き。


 10月の全国大会には一緒に見に行った。


 全国警察剣道選手権大会に。


 日本武道館はめちゃくちゃ大きかった。


 初めて東京に行ったんだよね。


 学生レベルの剣道しか見てこなかった私にとっては、そりゃもうすごい迫力だった。


 大人同士の戦いってやつ?


 呆気に取られながら見ていると、その横で、目を輝かせてる亮平がいた。


 2階のスタンドから、息を呑むように。



 いつかこの武道館に立って、いちばん強いヤツと戦いたい。



 帰り際にそう話してたんだ。


 ガキ臭かったけど、それ以上に垢抜けた表情があった。


 なんていうんだろう。


 本当に強くなりたいって気持ち?


 単純で、それでいて言い訳のできないまっすぐな言葉に、曲がる気配もないままぶつかってるというか。



 亮平らしいっちゃ亮平らしい。


 融通の利かないバカ正直さは、相変わらずだ。


 逆にそれしかできないんじゃないかって、時々思う。


 たこ焼きと言えばソースで、ラーメンと言えば醤油。


 たまには別のもの頼んだら?って思うけど、一度これと決めたら、頑なに変えようとしなくてさ?

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ