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第660話
「部活のことちゃうわ」
「顧問に言われて来たんちゃうん?」
「…あんた、なんでここにおるんや?」
「…はあ?」
彼は首を傾げた。
いまいち理解できていないみたいだった。
まあ、仕方がないよね。
“未来を知っています”なんて言えないから、色々端折って伝えてしまう。
だけど、言いたいことがあった。
“なんでここにいるのか”
あんたは今ここにいるべきじゃない。
それをあんたが一番わかってる。
それを伝えたくて、言ったんだ。
庭先にいる彼を見て、思わず。
「電話あったやろ」
「電話…?」
「病院から」
間に合うかもしれない時間。
間に合わないかもしれない時間。
それがどこに続いているのかはわからない。
だけど、今すぐに動かなきゃいけない時がある。
今すぐに、声を出さなきゃいけないことがある。
…あんたはわかってるでしょ?
今、なにをしなきゃいけないか。




