第621話
「タイムパトロールズ」の活動は順調で、少しずつ認知されるようになってきた。
学校中にばら撒いた新聞と、体育館のステージの上で、大学の人たちと合同で大演説会を開いた甲斐もあり。
「演説もなかなかいいでしょ」って得心顔の綺音にはいはいと相槌を打ち、6月も中旬を過ぎようとしていた。
先週の日曜日、私たちチームはある場所に行った。
目的地は2つだった。
1つは、明石市にある兵庫県立明石南高等学校。
そしてもう1つは、神戸市西区押部谷町。
2つともある事件を追ってのことだ。
最初にあった事件のように、この2つは、他の世界線上でも何度か起きていた。
「話聞いてくれると思う?」
「まあ、行ってみんことには」
明石南高等学校。
須磨駅から明石駅まで行って、そこから歩いた。
その高校のある女子生徒に、会いに行ったんだ。
事件を防ぐために、ひとまず訪問するって感じで。
そして今日は、もう一つの場所を目指して自転車を漕いでた。
阪神高速線の高架下をくぐって、ひたすら北に。
バスで行っても良かったんだが、どうせ行くならみんなで旅をしようってことで、激辛で有名な「緑ヶ丘レッド11辛」というお店に向かった。
全力でペダルを漕ぎ、汗という汗を出しながら、やっとの思いでたどり着いたのはいいが、完全にお店のチョイスを間違ってる気がする。
他にも色々候補はあったんだよ?
でも、ルーレットで決めたせいでここになってしまった。
すでにお店の外観が、怪しい雰囲気で満たされていた。
超濃厚魚介スープで有名らしいんだが、
「お店の1番人気を選ぶ」
みたいなオーソドックスな考え方は、今日はやめよう。
メニューを見て、指を差す。
8割型、激辛メニューが占めている。
そんなお店に需要あんの!?
戸惑いながら、チャーハンかラーメンかで迷い、激辛ラーメンを注文した。
メニューには、
『ギネス級の激辛唐辛子4種類使用
5辛以降を20分以内に食べると無料
救急搬送レベルに死ぬほど辛い』
の文言が…
救急搬送って…
苦労してここまできたのに、なんでこんなものを…
「レビューがやばいことになっとる」
「おーい、アキラ、大丈夫か!?」
「…私はデザートだけでいいかな」
「私はチャーハン!」
「リリーは?」
「私らは麻婆豆腐にしよ」
「麻婆豆腐はやめた方がいいと思う…」
「なんで!?」
「名前にデビルって入ってるやん…。ブートジョロキアの実が12個トッピングされているとか書いてあるんやけど」
「チャーハンこそ、ギネス登録の唐辛子の他、3種類の唐辛子使用って書いてあるけど?」
「…うう、帰っていい?」
テーブルにやって来た煮えたぎるスープに、唐辛子パウダーを混ぜて製麺した手作りの太麺。
…一体誰がこんなもん食うんだよ。
最初にメニューを見た時から辛そうだったが、いざ目の前で見ると、その凄まじい赤々さが鮮明に伝わってくる。
スープだけでは飽き足らず、麺まで赤いとは…。
初めて来たこの店で、初っ端それを頼む客も客だが、麺まで赤くする必要あった?
普通にスープだけで辛いラーメン作れるよ?
そもそも、辛いものがあんま好きじゃないのに、こんなインパクト大のラーメンを注文するべきじゃなかったのだが、他に良いものもなかったしな…




