表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雨上がりに僕らは駆けていく Part1  作者: 平木明日香
589/698

第588話


 綺ママ直伝の激辛麻婆丼が出来上がり、顔面蒼白となっているアキラをよそに、タブレットをテーブルの上に置き、4人でこれからどうするかを話し合った。


 ちなみにアキラは、綺音と同じくナポリタンを作ってもらうことにした。


 真っ赤なハバネロの匂いだけでも失神しそうだって言うから。



 「さぁて、どいつからやっつけようかねぇ」



 別にそこに犯罪者が載ってるわけじゃないぞ綺音。


 っていうか、そんなにやっつけたいならあんたが先陣切ればいいじゃん。


 私に武器なんか持たせずに。



 「嫌や!このキュゥゥゥトな顔に傷がついたらどないしてくれるん??」


 「…あのな、私が傷つくのは構わんって言うんか?ん??」


 「楓は歩く防弾チョッキのようなもんやから」


 「ケンカ売っとんか?!」


 「まあまあ、本題に入りましょうよ」



 とんでもないこと言ってんぞアイツ。


 アキラも笑ってる場合じゃない。


 絶対戦わないからな。


 いざとなったら、いちばんに逃げてやる。



 「とりあえずこれがリスト?」



 タブレットの中には、日付と、場所と、発生日時。


 事件や事故だけじゃなく、病気で亡くなった人や「人の死」に関する事項とその詳細が、ワード形式でズラッと並んでいた。



 「えっと、2012年の欄は…」



 補足ということで、2人にはちゃんと伝えていた。


 そこに載ってることが、必ず起こるわけじゃないと。


 納得はしてくれたみたいで、話は進行していった。




 「ひとまず載ってることは一個ずつ潰していこう!」


 「…いやいや、学校とかあるやん」


 「学校は学校。事件は事件」


 「部活は!?」


 「部活と人の命、どっちが大事!?」


 「神様にでもなるつもりかよ」


 「そんなんちゃうて!少しでも助けられたらと思って」


 「それで、そのリストの人全員救うんか?」



 さすがに無理じゃない?


 時間的にも体力的にも。


 慈善活動家になりたいのか?


 私は反対。



 「そこで、思ったんやが…」



 キーちゃんは指を指して、ある文字に注目するように言った。



 「例えばこの人、池崎諒子さん(88)。死因は老衰って書いてあるでしょ?考えたんだけど、寿命で亡くなってる人は、私たちの力やとどうすることもできない。だけど、そうじゃない人、例えばこの千賀梨香子さん(43)とか、不慮の事故って書いてある。そういうのを助けるのはどう?」



 シンプルに言うとこうだ。


 寿命や自然死だと思われる人たちに関しては、関与したところで助けられないので、不自然な死、——つまり事故や犯罪に巻き込まれたような人たちの命を、助けられたら。



 …いや、言いたいことはわかるが、それ込みで反対って言ってんの。


 平日が多いし、出動できるタイミングがあんまなくない?


 それに、よく見たらめちゃくちゃ多いんだけど。


 1個1個潰していくなんて無茶だ。



 「神戸市内に限れば、死亡事故件数や、犯罪に巻き込まれて亡くなる人は、2012年は352件に登る。ただこの「352」という数字は、普通の世界線だと有り得ない。いやあり得なくはないんだけど、あくまで『複数の世界線』で拾ってきた情報だから、その合算した数字が、一つの世界線の中には当てはめられないっていうこと。本来だったら、1年間に起こる数は、50行くか行かないかくらいじゃないかな?」


 「…それで?」


 「楓が言うように、1つ1つ潰していくっていうのは難しいから、過去の世界線で、発生確率が大きかった事件や事故に絞るって言うのはどうかな?」



 発生確率が大きい…?


 ようするに、今まで渡ってきた世界で、同じことが起こった事件と事故に限定する。


 改めてデータを見直すと、過去に複数回起こった「事件/事故」は、30個くらいに減った。


 この中で目星をつけるとすれば…

 

 

 「あ!あった、この人、早川玲於奈さん(24)。死因は…、刺殺!?」


 「殺人、やな」



 日付は、5月5日とあった。


 しかし実際に亡くなった日は、未明と書いてあった。


 理由は死体の発見が5月5日で、いつ殺されたかまでは分からなかったからだ。



 「もっと詳しい情報ないの?」


 「うーん。私が入手した情報は、あくまでその当時の世の中に出回ってるニュースの情報や記録だけ。もちろん、詳しい記録が残っていた場合は、もっと掘り下げることができるけど…」



 なんだ、使えないなぁ。


 でも1つだけわかったのは、遺体が見つかった時、死後1週間は経っていなかったということだ。


 えーっと、今日が28日だから…、って、やば、ギリギリ1週間じゃん!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ