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雨上がりに僕らは駆けていく Part1  作者: 平木明日香
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第537話


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 私たちがこの家に来てから、一週間が経とうとしていた。



 「…なあ、初詣行かん?」


 「…はあ?」



 年も明けて、2014年が幕を明けた。


 正月の番組が各チャンネルで流れ、全国各地でお祭り騒ぎだ。


 福袋にお年玉。


 年賀状に初日の出。


 でも正月と言えば、やっぱり餅だね。


 さとう醤油の配合は、2年前に完璧に習得した。


 餅に付けるものと言えば断然コレ。


 きなこでも、餡子でもない。


 うちの家族は、みんな下手くそで困ってるんだ。


 「餅」というものをまるでわかってない。


 さとう醤油を梨紗なんかに作らせたら、とんでもないことが起きる。


 醤油はほんとにちょっとでいいんだよ、って何回言っても、いつもヒタヒタになって話にならない。


 砂糖は多すぎるくらいがちょうどいいんだ。


 あと、餅は絶対に焦がしちゃダメ。


 焦げ目がついた方が美味しいと言うが、あれは完全に味音痴が言う戯言(たわごと)だから。



 …しっかし、なにが「初詣」だ。


 行くわけないだろ。


 母さんから連絡がたくさんきてる。


 アキラや綺音からもだ。


 そりゃそうだ。


 部活サボってるんだもん。


 インターハイが近いってのに、亮平と大阪に来てるとか口が裂けても言えない。


 かといっていい嘘も思い浮かばないから、返答に困ってる。


 ひとまず体調不良ということにはしているが…



 「年に一回のイベントやで?屋台もたくさん出とるし」



 「たくさん出てる」じゃないんだよ、このバカ。


 この一週間色々揉めた。


 だって、北海道に行こうとか言い出すんだ。


 ふざけるのも大概にしろよと思った。


 なんでも、ここにずっと居座るのは危険みたいで、拠点を移動しながら、逃亡生活を続けるらしい。


 私はそれに反論した。


 っていうか、反論しないわけがなかった。


 思わず絶句して、言葉が出なかったくらいだ。


 逃げ続けたって、ろくなことにはならない。


 いっそこっちから出向くのはどう?


 と提案したが、


 「危険すぎる」の一点張り。


 会話にならなかった。


 ここが「過去」の世界だとは言え、私にも生活がある。


 あんたと一生逃亡生活を続けろって?


 冗談じゃない。

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