表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雨上がりに僕らは駆けていく Part1  作者: 平木明日香
502/698

死線 第501話




 「…ちょっと待って…」


 「ん…、…ああ」



 生ぬるいコーラ。


 話が長すぎて、氷が溶けてしまった。


 隣の席で家族連れが談笑している。


 駅前のバーガーショップでフライドポテトとナゲットを頼み、かれこれ1時間は経った。


 いつもならチーズバーガー一択なんだけど、気分じゃない。


 ペラペラとノートをめくる音。


 机の上にたくさんの文字。


 敷き詰められた記号や図形は、めまいがするほどにややこしかった。


 話を止めたのは、難しい単語や文字に、嫌気が差したからじゃない。



 「…何その話」



 亮平の言っていることは、「キーちゃんの記憶」にもなかったことだ。


 …いや、知ってる部分も確かにある。


 けど、キーちゃんの病気のことはもちろん、そうなった理由も、原因も、ましてや後半の話なんてとくに、なんのことかわかんなかった。



 「…理解はした?」


 「できるわけないやろ」



 彼が書いたノートを見返した。


 最初に会った時に見せてくれたノートとは、また違うノートだ。


 急いで書いたのか、ひどく殴り書きされていて、解読できない箇所が多い。


 「世界の楔」ってなんだよ…


 わけわかんないだろ…



 「キーちゃんに直接聞いたわけ…?」


 「せやから、千冬は未来ではもう意識が無い。コンピュータの中にそのデータが入ってる。記憶とか知識とか、人格とか」


 「この「話」をどうやって…?」


 「俺は千冬のデータ、——つまりコンピュータ上にインストールされた「千冬の仮想意識」と、会話しただけや。「会話」って言っても、言葉を交わしたりするわけやない。質問に対して、答えられる範囲の答えが返ってくる。そこで、今の話を知った」



 簡単に言うけど、それで「はい」って言えると思う?


 冷めたナゲットを口に咥える。


 カリッとした食感はもう、ほとんど無い。


 バーベキューソースの酸味と甘味とが交互に交じり合い、弾力のある食感の奥でジューシーな肉汁を連れてくる。


 中はまだ無事だ。


 できたての味じゃないけど、まだ、美味しい。


 だけどそんな余韻に浸ってる暇もない。


 マスタードソースに変えてもダメだ。


 全然、落ち着けない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ