第460話
亮平の言いたいことはわかった。
わかったというか、彼がどうして「初期世界に行けない」と言ったのかは、なんとなく理解できた。
きっと、この世界の彼は、この世界の過去であり、未来の彼でしかない。
『初期世界の彼』とはなんの関わりもなく、接点もない。
ややこしい言い方だけど、亮平はきっと、あの世界の亮平じゃない。
じゃあ、どの世界の亮平なんだよ…って、思うけど。
「…この目で見たんや」
「どんな世界やった?」
「…どんな、って…」
なんて言えばいいだろう。
考えてみたけど、情報量が多すぎてすぐにまとめられなかった。
そもそも、言葉で説明するのは得意な方じゃないし。
出来るだけはっきりと思い出そうとした。
最初の世界。
亮平とキーちゃんがいた、「時間」を。
でもそれは、私の記憶じゃない。
それに違いはなかった。
私が見たのは、あくまでキーちゃんの記憶。
だけど、もし、おじさんやキーちゃんが言うように、私が「セカンド・キッド」としての能力?を駆使し、時間を飛び越えたのだとしたら、実際にあの世界に“移動していた”ということになる。
確証はないよ?
ないけど、そんな気がするんだ。
どうしてキーちゃんの頭の中に入っていたのかは、わからないけど。
「どんな人生を送ってた?」
人生?
あんたの?
どう答えればいいんだろうか。
高3の時に事故に遭ったって、そしてそれは運命だったって、そのまま正直に言えばいいの?
いやいや、言ったって、しょうがない。
そうこう考えているうちに、彼は興味津々に聞いてきた。
さっき私が、「あんたが死ぬ」って言ったことに対して。
自分で言っておいて、いざ説明しようと思うと難しい。
そりゃ誰だって気になるとは思う。
逆の立場だったら、きっと同じように尋ねる。
でも、どうやって説明しよう…
大体、こんなことしてる場合じゃないんだが…




