第410話
…うーん。
首を傾げていると、彼が言った。
「お前は俺に見せてくれたんやで?でっかい夢を」
…じゃ、どうして
私がわからないのは、亮平がもう一度告白しなかったことだ。
何度も言うけど、「理屈」はわかる。
なんで二度と告白しなかったのか。
亮平はわかってた。
自分が告白した相手が、もう存在していないということが。
…だけど、キーちゃんがキーちゃんであることに変わりはない。
確かに、あの「夏」にはもう戻れない。
同じ時間の下で、同じ白球を追える瞬間は、もう永遠に来ないのかもしれない。
でも、きっとまだ繋がってるはずなんだ。
時間とか距離とか、そんなのはぶっちゃけ、わからない。
わからないけど、どこかで繋がってるはず。
キーちゃんはずっと追いかけてた。
記憶が薄らいでも、亮平のことは忘れなかった。
いつも同じ感情の中に生きていた。
それは彼のことが好きだったからだ。
亮平もそれは同じなんじゃないの?
好きで、告白したんでしょ?
だったらなんで、もう一度「好きだ」と言わなかったの?
聞くだけ野暮かもしれないけどさ。
「夢の果てに、なにがあるわけ?」
彼は押し黙った。
口を噤む。
そういう気配さえ感じ取れた。
本音を言えば、私は探そうとしていた。
キーちゃんが、もう一度「彼」に会う。
届けたい言葉を言える距離に立つ。
それが、どうやったら手に入るかを、探そうとしていた。
そしてその答えは、この「時間」にいる彼にしかないと思った。
だって私が返事したってしょうがないし。
これは2人の問題であって、本来私が立ち入っちゃいけない問題な気もする。
ねえ、教えてよ。
キーちゃんの球を打ちたいって、そう言うけど、じゃ、その向こうにはなにがあるわけ?
明日?
未来?
それとも——




